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閉ざされた宇宙船
宇宙船の中にいるんだ
外は酸素がなくて息苦しいから
神経質なのかもしれない
でも今までもその自分と付き合ってきたわけだし
悲観的な輪からは抜け出したんだよ
制限され続ける世界には慣れてきたはずだから
互いの周期が合わさる時
私たちは奇跡のように手を繋いできたんだ
ただ今は
それぞれの扉がしっかりと閉ざされた宇宙船の中にいる
だから
どんなに周期が訪れようとも
君の声が聞こえないよ
熱気で曇った厚い丸窓の一部分から覗くのは
君の骨ばったスラリとした長い指
手話でも何でもいいから伝えるよ
「私はここに居ます
いろんなことに気を揉みながらも
楽しんで生きる術を見つけようとしています
おかしいでしょ?
姿も見えない声も聞こえない君のことが
まだ好きなんておかしいでしょ?
宇宙のチリになるまで想い続けるのかな?
でも大丈夫だよ
自然消滅後の予行練習は
もう済んでいるから」




