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君の姿は誰にも見えない
制限された世界がより一層狭められていく中
君は変わらず不可思議な言動を繰り返し
透ける楕円の羽をはばたかせながら
小さすぎる身体で僕の肩をぴょんぴょんと交互に渡っていく
僕の耳元で囁くだけの存在
笑ったり落ち込んだり忙しい
そんな君の姿は誰にも見えない
君が僕につきまとう理由が分からない
小心者の君が
君にとっての異世界に
わざわざ舞い降りる
リスクを最小限に冒して
舞い降りる
僕がいない時でも
迷子のような顔をして
舞い降りる
後日
「日課になってしまったみたい」
と寂しそうに微笑んだ
君は僕のことを誰にも言わないと決めたらしい
親友に僕に関することの嘘をつく際
相手の目を見ることができなかった自分に
秘かに驚愕した
と君は言った
そして
「男にならどれだけでも嘘をつけるのに」
と自嘲気味に舌を出した
君は誰にも見えない僕の妖精




