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メイドの日常
まだ誰も眠りから覚め遣らぬ夜明け
腕で身体を支え起こしながら
毎朝最初に私がすることは
彼の喪失を受け入れることであった
メイドである本来の私は
するに越したことのない雑事の山積みの日々
衣類やタオルを洗濯板上で泡立て
細かく刻んだ野菜に溶いた卵を投入し
ビー玉を拾いながら床をほうきで掃いていく
恋の唄を口ずさみながらする仕事は
どこか無心になれる
しかしふと
繰り返される雑事と要望の合間
吐息と共にしゃがみ込んでしまう時
喪失が胸を突く
「寂しい」
それでも私ははっきりと分かったのだ
大切な人がいなくなってしまった状態でも
人間は生きていくんだということが




