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コーラルピンクのリップ
これは最終的に
喪失と再生の物語だと言ったら
読み手は何を思うのだろうか
数ヶ月かけて書かれた
暗号のような文章を
解読していった先に
見えるものは何だろう
私がただ空想の中で
遊んでいるだけだと言ったら
それまでの話だろう
あるいは私には
異空間を行き来できる力が
備わっているのかもしれない
「ロスだ」
熱中できる代用物を無心で手探りしようとする
逆手に取って自身の向上を図ろうとする
とろとろの甘い飲み物を喉に流し込みながら
親指ひとつで創作に没頭しようとする
しかし結局
ロスは時間との戦いだ
私は無駄な時間を過ごすことが
大嫌いでたまらない
だから
ロスから明けた時に
目に映る世界が輝いていたらいいと思う
綺麗に整えられた部屋の鏡の前で
春物の洒落たワンピースを着た私が
コーラルピンクのリップを
他の人のために塗っているんだ




