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水から生まれる無心さえ
つま先が底につくほどの水の中
胸元で絶え間なく押し寄せる小波を受け
私は輪っかの中に浮かぶテディベアと手を繋いでいた
小波に耐え続け
水中で揺れる身体
その誘発される動作に集中していると
そこに心はいらないのではないか
とさえ思えてくる
ゆらゆら
きらきら
水から生まれる無心
「あ……」
無心の中でさえ
脳裏に浮かぶ人影
意味もない
何の意味もない
水面から顔を上げると
薄青く広がる空の下
無心にさえ入り込んでくる
私がどうしようもなく好きな人