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筆を執らないということは、その日々は執らずに済んでいるからなんだ
「楽しいですっ」と
素直に語尾を弾ませる
「どんな人生だよ!」と
冷静になった瞬間ツッコミたくなる
「ばかみたいに」という言葉を
溢れ出る感情の前につけたくなる
「いつでも撤退します」と
白旗を持つ手を相手に託そうとする
あなたに勧めてもらったチョコを
まるで蘇生するための薬かのように
一欠片口にした
「癒されました」は
ふわりと零すことができるのに
「傷つきました」だけが
どうしても言えないらしい
実際には一度しか発されていない言葉が
私の心の中ではふとした瞬間に
何度でも弾を放つ
「あなたの言葉に傷つきました」
惚れきっているあなたに訴えて戦えるほど
私は強くないんだ




