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殻ができてしまった
絶望と苦悩を重ねる度に
殻が分厚くなっていった私は
もう何を言われても
心に響かないような状態が
出来上がっていた
つもりだった
まさかあなたにまで諭されるとは
普段だったら
あなたは落ち着いた物腰で
私の冗談めいた愚痴に
軽い合いの手を入れてくれていた
それが救いだった
でもきっと
語り合う機会が多ければ多いほど
近づいてしまう
零してしまう
否定してしまう
全てを知っているわけではないのに
過程があって
事件があって
結果がある
過程を見ていないということは
現場を知らないということだ
あなたの言葉に対する耐性がなくて
ダイレクトに心に
槍が突き刺さったような感覚だった
何か得体の知れない感情に耐えながら
私は冷静なふりをして震え
目を見開き片手で槍を抜きにかかる
冷静な言葉選び
指摘への感謝
まとめに入るような流れ
傷ついた
私が現場を何年やってると思ってるんだ
正論なんてとっくに通り過ぎてんだよ
今日もまたたわいも無い
あなたとの会話
傷ついたからといって
簡単にフェードアウトすることが
できなかった
自分でひくほど泣いたけど
できなかった
でも殻ができてしまった
あなたとの間に
殻ができてしまった




