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終演後の高揚感

灯りを消した暗闇の自室で一人

TV画面から燦々と溢れ出るライブ映像の光を

体育座りをした私は無言で浴び続ける


大好きな先輩は

もうすぐ飲み会が終わる頃だろう


酔った帰り道

誰かに電話をしたがる癖のある先輩は

時折私を選んだ


今日は、どうだろう


その時

足元にあるもうひとつの小さな画面が

私の願いの成就を

何の前触れもなく告げたんだ


「は、はい、もしもし」

「あ、起きてた?」


届いてましたか?私の催促


『先輩は今日は飲みですかー。私はgood speedのDVD届いたんですよー!今夜観ようと思って』

という、それとない事前の催促


「今飲み会終わったんだ。真菜はDVD観てたの?」

「はい!めっちゃやばいです!やっぱ最高です!」


そう言いながら指先で

最高のライブの音量を最小にしてゆく


「はは、好きだなー」

「すごく」


先輩のことが


「ねえ、良かったら家帰るまでの話し相手になってよ」

「あ、いいですよー」


今夜、ほぼ音のないライブが

限定された時間の中

一室の暗闇を照らし続けるのだ


ボーカルはあんなに

心を込めて歌っているのに


私はこんなに

先輩のことを想っているのに


終演後の高揚感はやがて

『伝わらなかった』という虚しさに変わる罠

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