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筆が止まるは、いつ
拝啓
なかなか会えなくなってしまった彼氏さま
私だけがいまだに
あなたのことを想い続けております
ひとつ年上の社会人の彼氏さまは
お仕事がお忙しくなられたのか
私なんかより魅力的な女性を見つけられたのか
それは定かではありません
私はただただ時間潰しのような
学生最後の年の講義に
身を委ねているのみであります
「ねぇ、やってみない?」
それは予期していなかった
季節外れの花火大会が
突然始まったような衝撃でありました
私が中学生の頃に描いていた漫画の台詞を
当時やけに評価してくれた同級生が
自身がボーカルを務めるバンドの
歌詞を書いてみないかと言うのです
日々やっていることがあるとすれば
彼氏さまのことをぼんやりと想うのみ
そんな私は何の気なしに頷いておりました
メロディラインにのせるは
様々な角度から広げられた
行き場のない想いです
筆を止めると
もはや何のために生きているか
分からないほどに
流れ出る詞の数々
来る日も来る日も綴る想いに
同級生は舌を巻いて大喜びをします
「ねぇ、専属の作詞家になってくれない?」
ぴたりと筆の動きが止まり
私は薄い紙から顔を上げます
「分からないの」
恋の自然消滅は
一体どの瞬間に決定的になるのでしょう
「いつ書けなくなるか、全く分からないの」




