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宇宙の悪戯
あなたは違う惑星にいる人
なかなか会うことができない人
分かっていた
平気だった
交信してはにやついて
途絶えては沈みがちになって
また交信しては微笑んだ
生きていくことは維持すること
生きていくことは投げ出さないこと
生きていくことは正直なだけではいられないこと
それは宇宙の悪戯だった
惑星の軌道が一時的に変動するという日が
発表されたのだ
情報番組の映像の前
脳からの信号が次々と消え去り
私はフライ返しを床に落とした
会える
会えるのではないか
居ても立っても居られずに
様々な可能性を調べ尽くす
練り上げられていくのは
見事に不自然な計画の数々
誰か誰か
「あの、僕ならその日は会えないよって、言ってくれませんか?」
気がつけば当の本人に
確実におかしなことを頼んでいた
あなたは言ったわ
「僕なら状況次第ではいけるけど」
今日は以前発表された
惑星の軌道が一時的に変動する日
いつも通り
お気に入りのカウンター席で
オーガニックのブレンドコーヒーを飲んでいる
ねぇ、私はあなたがいなくても大丈夫だよ
あなたのあの
私に対する前向きな言葉が聞けただけで
もう充分だから




