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こうゆうの
「こうゆうのは
依存せずに楽しむことが大事だからね」
うん、ほんと
「そうだよね」
そのように
君が二人の関係を表現した
「こうゆうの」という言葉を
私は日々の中で不意に思い出す
玄関の鍵を慌ただしくかけ
今日の始まりへ身体の向きを変える時
ドライヤーの温風で無心に
長めの紺色髪をなびかせている時
あなたからの返信なしを
目の当たりにしている早朝覚醒時
『こうゆうの』
踏み出したはずの足を止め
無意識にスイッチを押して風を止め
パタンと折りたたみ式スマホケースを閉じた
『こうゆうの』
私はね
手放しでは楽しめないんだよ
いつまで経っても
夢のような沼の中にいるから
君が手を伸ばして
引き上げてくれない時は
虚しさに埋もれて
息が上手く出来ないんだ




