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感覚重視の猪
どんな困難も乗り越えて
あの人の周りは
綺麗に整えられてゆくんだよ
私が感覚重視の夢見心地で
過ごしている間にも
あの人は手順を踏んで
世界を創り上げていくんだろう
私がおそらく大人として
興味を持つべきジャンルに目もくれず
色彩重視の絵を一心不乱に
描き続けている間にも
あの人は賢明に計算して
自らシルバーのキッチンを
磨いていくんだろう
こうした方が得だし
そんなことしちゃ最低だし
歳だから仕方ないし
そういうまともな現実に抗ってしまう私に
あの人は何を思う
きっと夢は叶わないし
叶わない方がいい夢もあるし
私は猪みたいだし
目標物に向かって性分的に
走らざるを得ない状況の中で
私はいつの間にか美しい脚を手に入れてるの




