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言葉を解き放つ
東や西を転々と
故郷を離れ
住処を移す人生
西側に生まれてはいるものの
少し緑の濃い山の中
喋り方に癖があるのは
そこの住人の特徴であった
故郷を出た後
東の人、西の人
それぞれに出会い続けてゆくうちに
私はいつの間にか
相手によって言葉を変えていた
そして
それが顕著に表れるのが文であった
決して本来の喋り言葉では綴らずに
相手の喋り言葉に合わせた
語尾の数々
私の本来の言葉は
綺麗に折り畳んで
引き出しの奥深くへ
そう、あなたが現れるまでは
「私と同じ喋り方をしている人がいる」
あなたの文は何も隠さない
恋人にまで笑われ続けた私の本来の言葉は
まるで封印を解かれたかのように
自然にその白い紙の上で踊り始めた




