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君の仮想体
遥か彼方の異国の地から
毎日届く君の生存報告をきっかけに
私は君の仮想体をつくるようになった
私が両膝を抱えて
読書をしている時は
くっつくような距離感で
内容に驚き合って
私が一人
カフェでケーキをつつく時は
対面の席で
低い声を響かせて話し始めて
私がベッドで
仰向けに涙を一雫流した時は
同じ天井を見上げながら
手を握ってくれた
全ては君の仮想体
弱っている私が作り上げた幻
やがて時間という風は
私自身を穏やかな場所へと連れて来た
弱っていた心が薄っすら回復した時に
君の仮想体が一瞬波打ったんだ
まるで電波の悪い映像かのように
「好き」という概念は何だろう
「好き」だと思っていた君の仮想体は
私が心を回復させていくたびに
その映像を荒いものにして
やがて跡形もなく
私の世界から
いなくなってゆくんだ




