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終幕 そして僕らは明日を迎える




 簡単じゃない、そう思う。


 何が、とははっきり言えないけど、何事も完璧に上手くはいかない。ノウトは暗い森の中を歩きながら、そう思った。

 あれから、ノウト達は宿に泊まって、色々なことを話し合った。魔皇ヴェロアのこと、フェイのこと、ナナセのこと、今までのこと。たくさんのことを語りあった。そして、最終的には皆がノウトのことは理解してくれた。ノウトは少しだけ誤解をしていた。真摯に伝えれば、思いは伝わる。

 でもノウト一人じゃ信じてもらえなかったと思う。リアが、アイナが、そしてナナセがいてくれたから、ノウトの言葉はダーシュ達の心を掴むことが出来たのだろう。


「……ありがとな、リア」


「突然だね。ふふん、感謝したまえよ、ノウトくん」


 リアはしたり顔で胸を張った。それにノウトは小さく笑って応えてみせた。

 リアは表情を隠すのが非常に上手い。でも、今夜ばかりは全てを隠しきることは出来なかった。それは当然の話だ。

 人の死を簡単に受け入れられる人間は、そういない。彼らの死が今もノウトの心を蝕んでいく。

 もうナナセにも、会えないんだよな。一緒にいた時間は短かったけれど、いい友達になれる。そう思った。今も生きているならば、隣を歩いて馬鹿みたいな会話をしながら、アイナと一緒に笑いあっていただろう。

 ナナセが迎えたかった明日は既に今日となっていた。ナナセ、ミカエル、レン、カンナ、パトリツィア、テオ、マシロ、フェイ。居なくなった彼らのことを思うだけで胸が酷く痛む。

 簡単じゃない、改めてそう思う。


 そして、ニコ曰く、フリュードで起きたパトリツィア、レン、マシロを襲ったあの事件はニコとは無関係とのことだった。これ以上嘘をつく必要のないニコのいうことだ。真実と信じるしかない。それならば、パトリツィアたちは誰によって殺されたのか。いや、ノウトは大きな勘違いをしているのかもしれない。彼らは本当に()()()()()()

 当時のことを思い出す。竜を殺して、その翌々日に事件は起きた。奇妙なのは悲鳴が聞こえなかったということだ。悲鳴が消えなかったということは、つまり──

 でも、これについては確信は得られない。今考えてもしかない、生産性のない考察だ。


 ナナセとミカエルの亡骸はカミルが作った棺桶に入れられて、それをカミルが慎重に運んでいた。

 希望を捨ててはいけない。

 もしかしたら、なんとかなる可能性だってある。メフィは不死王という存在について教えてくれた。ナナセやミカエルが生き返ってくれる可能性もゼロじゃない。そう、不死身のリアがいるんだ。無駄なことなんて、ない。そう言い聞かせないと皆の心には(ひび)が入ったままだ。

 希望はないより、あった方がいいに決まってる。


「……っ、ニコ、大丈夫か?」


 ニコが木の根に足を引っ掛けてしまい、転んだ。ノウトはニコに手を伸ばす。


「……だいじょうぶ」


 ニコはノウトの手を取らずに立ち上がった。ニコの《異扉(オスティア)》は依然閉ざされたままだ。

 《神殺し(ディサイド)》という神技(スキル)の原理はよく分からない。ただ出来るから使った。それだけだ。ニコは少なくとも勇者を全員殺そうとした。今は安全だとしてもいつ気が変わって襲ってくるか分からない。だが、束縛や拘束はしない。それを提案したのはカミルやジル、それにダーシュだ。誰も彼らには反論しなかった。

 ニコは絶対に許されないことをしたけど、誰もがニコと同じ立場になる可能性はあった。たまたまニコは〈熱〉の勇者になってしまったから、女神アドにけしかけられてしまっただけなのだろう。

 それに、命令されて人を殺したという点で、ニコとノウトには共通点がある。ノウトは目覚めたあの部屋で一人、名も知らぬ勇者を殺してしまった。そしてリアも手に掛けてしまった。そして、フェイは自発的に、殺したいと思ったから殺した。ノウトがニコにとやかく言うことは出来ない。

 だからと言って、ナナセとミカエルを殺したニコを完全に許すことは出来ないけれど、……でも、ノウトはニコに何かを言える立場ではないと、そう思っている。


「───ニコ、おぶってやろうか」


 ダーシュが急に優しい言葉を口に出したものだから、ノウト達は全員自分の耳を疑ってしまった。


「……いい」と小さくニコは断った。


「歩けるから」


 ニコはそれだけを言って、ずんずんと進んでいく。


「………ダーシュ。変わりましたね。なんか感動しました」


「黙れ」


 カミルが微笑み、それをダーシュが一蹴する。カミルの言う通り、ダーシュは変わった。今は前を向いて、歩いている。


 それに、変わったのはダーシュだけじゃない。ここにいる者は全員、この世界に目覚めたあの時から随分と変わったと思う。初めに比べて、お互いを信頼して割と腹のうちを明かして話せるようになったし、意思も固くなってきた。


 でも、変わったと言ってもいいことばかりではない。エヴァは生きる気力を失ったように一言も喋らなくなったし、アイナも同様に瞳に虚無を宿している。

 アイナはすっかり憔悴しきって、今はカミルの肩から伸びた樹の上で寝ている。だから、というのも違うが、今はアイナの〈神技(スキル)〉を使わずにこうして歩いて魔人領へと向かっている。起こすのも忍びないので五時間近く前から寝かせっぱなしだ。


 アイナ。彼女はナナセを失った。アイナにとってナナセはどんなに大切な存在だったか、見ているだけでそれは分かった。

 ふと、振り返ってアイナを確認しようとして、やめた。今その顔を見たら泣いてしまいそうだ。

 ノウトもずっと前に大切な人を失った。それが誰かは思い出せないけど、失った事実だけは脳内にこびりついて、離れない。

 俺はまだ、楽な方なのかな、なんて一瞬だけ思ってしまって、頭を振った。アイナは目の前でナナセが死んでいく様を見ていた。死の間際も一番近くにいた。辛くないわけがない。

 どうにかして、彼女を救けられないか、それを今はずっと考えている。

 簡単じゃないな、と心の底から思う。


「何が?」


 ふと、リアがノウトの顔を覗いていた。


「───え?」


「何が簡単じゃないの?」


「……声に出てた?」


「うん」


「……ごめん、なんでもないよ」


「またそうやってはぐらかして。思ったことはなんでも言ってよ。どうせ気を使おうとしてるんでしょ? 分かってるんだから」


 リアは指をピンと立てて言ってみせた。


「……やっぱり、リアには適わないな」


 ノウトが小さな声で言うとリアは口元を抑えてひかえめに笑った。そしてノウトの左手を両手で握って、


「わたし、何があってもノウトくんのこと絶対に嫌いにならないから。大丈夫だよ」


 今回ばかりは本当に不意打ちだった。一瞬で荒んだ心が安らぐ気がした。いや、気がした、じゃないか。目頭が熱くなって、ああ、やばい、泣きそう。だけど、それをぐっと堪えて、


「俺も、リアのことずっと好きだよ」


 そう言った。自然と口からその言葉が零れたのだ。そして、言ったあとにどこか違和感を感じた。まるで自分が言ったとは思えないような、そんな感覚。でもそれは明らかに俺の口から発せられた言葉だった。

 あれ、俺、なんて言ったんだっけ、と首を傾げる。目の前でリアが今までに見たことがない顔をしている。目をまん丸にして、口をぽかーんと開けて、頬を紅潮させている。そんな顔を見ていたら、


「ぷっ」


 思わず吹き出してしまった。こんな間抜けなリアの顔、初めて見た。笑ってしまうのは必然だろう。


「あははははははははっ!!」


 ノウトは腹を抱えて笑った。今までこんなに笑ったことがないってくらいだ。リアは未だ放心しているようで「ぽかぽか……」と呟いて何かぼーっとしていた。


「何やら楽しそうっすね」


 スクードが後ろからノウトを追い抜いて前に出た。その顔にはいやらしいにやけ顔がくっついていた。


「いちゃこらしやがってからに……。ぶっちゃけ爆ぜて欲しいんですが」


「こればかりは同意見ね。死ねばいいと思うわ」


 カミルとジルが毒を吐く。というか──


「えっ、……聞いてた?」


 全員がうなずいた。

 う、うわー。恥ずかしすぎる。完全にやらかした。リアと二人ならまだしも他の仲間が今はこんなにもいるんだ。もっと小さな声で言うべきだった。いや、そういうことではないか。

 隣を歩くリアの横顔を見る。彼女は未だ頬を赤く染めてぼーっとしながら歩いている。

 ノウトはもう一度みんなの顔を見渡して、


「忘れてくれ」


「むりです」「無理ね」「無理っすね」


 口を揃えて否定された。

 くっそ、なんだこいつら。謎のチームワーク見せつけてきやがって。やばいな、顔が死ぬほど熱い。真っ赤なんじゃねぇかな、顔。


「くっ……」


 と小さい笑い声が聞こえた。誰の声だろうか、と振り返るとダーシュが口元を抑えていた。


「ダーシュが笑ったあぁぁああ!!」カミルが叫んだ。


「黙れ」


 ダーシュが刃を作り出してカミルに投擲した。


「うおおい!?」


 カミルは木の盾を生み出してガードする。


「僕、三人人抱えてるんですけど!? アイナが起きたらどうするんです!?」


「俺はお前を信じてた」


「そんな初めての信頼いらないですから!! もっと大事な場面で使って下さいよ!!」


「バカミル、アイナを起こしたら殺すわ」


「殺人予告!?」


 カミルが嘆く。そんな馬鹿みたいな様子を見ていたら自然と口角が上がってしまう。


「いろいろなことがあったのに、……笑ってもいいんすかね」


 ふと、スクードが苦笑いしながら声を漏らした。


「いろいろあったからこそ、だろ?」


 ノウトはそんな言葉をスクードに返す。


「マシロもカンナもミカエルも。みんな、スクードの笑ってるところが好きだったと思うよ。今もきっと、好きなはず」


 悲しいことがあったからって、笑っちゃいけないなんてことないと思う。

 立ち止まってもいい。振り返ってもいい。でも、戻ってはいけない。───いや、戻ることなんてそもそも出来ない。

 前を向いて、歩き続けないと。そうじゃないと、いつかまた会った時、ナナセやレン達に顔向け出来ない。


「そう、……っすよね」


 スクードは小さく頷いた。そして、


「俺は〈盾〉の勇者なのに、今まで全然……これっぽっちも護れなかった。失ってばっかで。本当に馬鹿だよ、俺。………本当に、悔しくて悔しくて………堪らなくて」


 歯を食いしばって、拳を固めた。


「だから、エヴァは、……エヴァだけは絶対に護る。命を懸けて護るんだ」


 そう言ってから、スクードは皆の顔を見渡した。


「それに、エヴァだけじゃないここにいる全員を護ってみせるよ」


 スクードらしからぬ口調でそう言って笑って見せた。スクードだって大切な人をたくさん失ったはずなのに本当に強いやつだよ、本当に。心の奥底からそう思った。

 そんなスクードにノウトは力強く頷いた。

 ふと、視界の端に光が漏れたような気がした。後ろを振り返ると───


「うおおおお!!」


 スクードが大声を出した。ノウトも同じように「うおお」と感嘆の声を漏らした。日が背後から顔を覗かしていた。日の出を見ると感動するのは人の常なのだろうか。多分、そうなのだろう。

 橙と藍に挟まれて、ノウト達は空を仰いだ。


「綺麗だね」


 リアが後ろを振り返って微笑む。


「ほんと、綺麗だ」ノウトが呟いた。


「いいっすね〜、なんか」


 スクードが少しだけテンション高めに言う。


「絶景ね」ジルが簡潔に感想を呟いた。


「これは、……目に焼き付けたいですね」


 カミルは手庇(てびさし)を作って目を細める。みんな、自然に笑顔になっている。でも、ニコとエヴァ、それにアイナは笑ってないままだ。


「───いつか、みんなで……一緒に笑い合えるようになれるといいよな」


 ノウトが呟くと、我に返ったリアがノウトの方を見て「そうだね」と笑ってみせた。


「お前ら」


 ダーシュの声に振り向かされる。すると、闇と森に紛れて良く見えなかった封魔結界が目の前にそびえ立っていた。


「通るぞ」


 ダーシュはただ淡々と声に出す。


「ダーシュも見てみて下さいよ。日の出ですよ。美しいですよ。ビューティフルですよ」


「黙れ。いいから通るぞ」


「はいはい」カミルは肩をすくめた。


 ダーシュが一番に封魔結界へと足を運び、身体をも突っ込む。初めてなのにかなり度胸あるな、なんて他人事みたいに思ってしまった。見ると、みんな同様に封魔結界へ入っていた。


「ノウトくん、行くよ」


「おう」


 殿(しんがり)をつとめるようにノウトが最後に封魔結界へと入っていく。封魔結界を通ったのもこれで三回目だ。流石に三度目ともなれば慣れるものだが、翼を使わずに通るのは初めてだから、少しだけ新鮮味を感じる。

 黄金の霧の中をただ歩いていく。どれくらい歩いたのか、いつの間にかノウトは通り抜けていた。

 そこにはさっきと変わらぬメンバーが立っていて、ノウトは彼らと目を合わせてからひかえめに微笑む。


 その時だった。

 ヒュウ、と風が草木を(なび)かせた。

 黒い影が空を切る。刹那の攻防だった。黒い影をノウトは《殺陣(シールド)》で受け止める。それは人だ。とんでもない速さの、目にも止まらないような飛び蹴りがノウトの頭を飛ばそうとしたのだ。


「やるね、ノウト」


 ノウトに攻撃した何者かがしゅたっ、と着地した。

 亜麻色の髪の毛は肩まで伸びていて、身長はノウトより10センチ低いくらいだ。頭にはシファナと同じような猫の耳が生えていて、ホットパンツを突き破って尻尾が生えている。鼻がすっと通っていて、非常に整った顔立ちだ。あどけなさの中にどこか風格のあるものを感じる。でも、綺麗と言うよりは可愛い、そんな印象を受けた。


「きみは───」


「うっわ、本当に記憶なくなってるんだ」


 その子は口元に手を当ててオーバーにリアクションしてみせる。


「もしかして、ラウラか……?」


「えっ!? どっち!? 記憶無くなってんじゃないの!?」


「いや、ごめん。記憶はないんだけど、ヴェロア───魔皇様が君のことを言ってたからさ」


「ふーん、なるほどねー」


 そして、ノウトの頭に手を伸ばしてぽんぽんと叩き始める。


「なんか意地汚い部分がなくてピュアっピュアじゃん、かわいいなこのノウト」


「は、はぁ」


 ノウトからしてみたらラウラとの記憶が全くないので、初対面と言っても差し支えないレベルだ。記憶喪失は面倒だと改めて思う。


「なんすかこのめっちゃキュートなお方は……」


「きゅーとなんて嬉しいこと言ってくれるじゃーん」


 そう言ってラウラは片手を頬に当てて、もう片方の手でスクードの腹を小突いてみせる。


「うおおっッ!?」


 そう、確かに小突いたはずなんだけど、スクードは2メートルくらい後ろに吹き飛んだ。


「だ、大丈夫か!?」


「あっ、ゴメン。ちょっと加減がね」


「俺じゃなかったら骨折れてるレベルなんすけど!?」スクードが叫ぶ。無事そうなのを確認してからノウトはラウラに向き直った。


「というかなんでラウラがここに?」


「あーそれね」


 ラウラはんっんー、とわざとらしく咳払いしてから、


「あらためまして、あたしはラウラ。魔帝国マギアの………まぁ、魔皇様の家来? みたいな」


 ラウラは適当に自己紹介を済ました。


「それで、あたしがここに来たのは伝えたいことがあってなんだけど」


「伝えたいこと?」


「うん。じゃあいい知らせと悪い知らせがあるんだけど、どっちから聞きたい?」


「えっと、じゃあ、いい知らせから」


「うん。まずひとつ、ここの近くにある転移魔法陣がね、壊れちゃったの」


「壊れたぁ!? どこがいい知らせなんだよ!」


 ノウトはノウトらしからぬ素っ頓狂な口調で声を上げた。


「話は最後まで聞きなさいよ。子供っぽいのは変わってないんだからもー」


 ラウラはノウトを小馬鹿にするように口元に手をやった。なんだかそれがかなりムカッときた。ただ今は情報が最優先だ。ノウトは黙ってそれをスルーした。


「転移魔法陣が……えっと、おーばーひーと? で壊れちゃって、それで陸路でこうしてきゅーとなあたしが迎えに来たの。まーもともとカザオルに遠征に出てて哨戒中だったからたまたまみたいな感じなんだけど」


 ラウラはそう言ってから「わざわざ来てやったんだから感謝してよねー」と要らない言葉を付け足した。ラウラが来たこと自体をいい知らせと言ったのか。本当にどこがいい知らせなんだよ、とツッコミを入れるのは無粋だと思って言わなかった。


「なるほど。それで、シャルロットとかフョードルとか、転移魔法陣のある砦に勇者いただろ? あいつらはどうしたんだ?」


「それがもう一つ」


 冷や汗が背中を伝った。嫌な予感がする。これ以上聞きたくないような。聞いたらいけないような。


「そいつら、行方不明になっちゃって今捜索中なんだよね」


「行方不明……?」


「うん。あたしが三時間前に砦に向かったらがらんどうで誰もいなくってさ。それで封魔結界付近の森の中とかくまなく探したけど見つかんなくって」


「勝手にどっか行ったとかですかね……」


 カミルが腕を組みながら口を開く。


「フョードルくんならやりかねないけど、あの場には他にもみんないたしね」


 リアが思考するように顎に手で触れた。


「だけど約一日置き去りにしちゃった訳だからな。どこかに行ったってのはあるかもしれない」


 ノウトが頷いた。


「うーん、でも勝手に何処かに行っちゃうほど抜けてるとは思わないんすけど」


 スクードがラウラに小突かれた腹をさすりながら言った。その様子を見ていたラウラがつま先立ちになって背を伸ばし、勇者それぞれの面々を見渡す。


「いやぁ、それにしても勇者いっぱいいるねー。圧巻だねぇ」


 状況が状況なのに、その声音には至って焦燥みたいなものは感じられなかった。昼時のブレイクタイムみたいな口調だ。


「──……って………えっ…………」


 だが、ある人物のところで目線が止まり、ラウラは息を呑んだ。銀目の猫のように碧い目を(みは)りその人物の目の前に立つ。まるで理不尽な騙し討ちにあったような顔をして、小さな声で、


「………ダー……シュ……?」


 そう呟いた。

 やっぱり、この世界はそう簡単にはいかないようだ。











 第二章 蹉跌の涙と君の体温(完)








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