scene.END『韜晦』『████』『終局』
俺は、人殺しだ。
すっかり平和ボケし、希死念慮が蔓延る現代の日本社会において、俺ほど人を殺した者はいないだろう。
俺は断末魔を聞いたことがない。
対象に触れて、そして「死ね」と頭の中で願うだけでどんな強者も猛者もぷつりと、糸が切れたように事切れる。
嫌だ、死にたくない、と叫ぶその声ですら聞いたことない。
そんなことを宣うより先に俺が殺すからだ。
協力を持ちかけてきたやつを幾度となく殺した。正義感溢れる友人を殺した。背中を預けた級友を殺した。無垢な後輩を殺した。頼ってくれた先輩を殺した。
俺は決して主役なんかじゃない。
ましてや主人公なんかでもない。
俺は、────
俺、は…………────
「ぁ………がっ………」
背中に、強烈な痛みを覚えた。
強烈なんてものではない。
痛すぎて、熱いくらいだ。
「……だ………ぁ………」
振り返る余裕なんてない。
まぁ、振り返る気もなかった。
当然の結果だ、と内心思っていた。
俺はこの世界にとって、悪者でしかなかったんだ。
俺は、悪役だ。
背中を刺されて殺される。
これは悪役には当然の結末だ、と納得さえした。
意識が遠のく。
視界が薄らぐ。
黒に、染まる。
ああ。
俺は、ただ──
彼女に………。
───糸雀に…………。
リアに、もう一度、………もう一度、会いたかっただけなんだ。
それだけだったんだ。
それだけで充分だったんだ。
……ごめん、みんな。
ごめん。
ごめん。
「………ごめ、……んな………」




