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第74話 ダーリンなんてきみには似合わない



 ノウトの存在によって渦巻く思念は、なんとかこの場では収まったようだ。そっと肩を撫で下ろすと、魔皇と目が合った。


「ノウト殿、魔皇様の隣に座るといい。僕の横でもいいけどね」スヴェリスはそう言って笑った。彼は本当に見かけによらずに気さくで良い人だ。魔皇も負けてはいないが、こんな王がいたらいいなという理想系でもあるかもしれない。


 それを聞いていた魔皇は控えめに微笑んだ。ノウトは頷いて、魔皇のもとに歩いていった。でもひとつ、ノウトは着席する前に話しておきたい人がいた。


「ノウト、久しぶり」レンが嬉しそうに言った。


「レン」ノウトは彼の名前を口に出した。会っていないのはたった半年程度だったが、それでもノウトには最後に会ってから数年は経ったかのような気もしている。


「また会えてよかった。ほんとに」レンは笑っているが、ほんの少しだけ泣きそうだ。


「それは、俺のセリフだよ。俺こそみんなにまた会えると思ってなかった」


「大変だったんだな」


「それはもう、ほんとに」


「おつかれ、でいいのかな」


 レンが冗談げに言うと、ノウトは小さく笑った。


「そう言葉にしてもらえると結構嬉しいもんだな」ノウトが首を撫でながらそう言った。


「じゃ、あとでゆっくり話そう。今は会議中だし」


「それもそうだな」


 ノウトはそう言って安心したように息をついた。

 こうして話していると、本当にレンにまた会えたという感覚を実感出来る。それと同時に、俺が──ノウトが今生きているという主観もまた改めて得ることが出来た。ノウトは軽く咳払いをして歩み出して、魔皇の隣の席に座った。


「大丈夫か?」


「へ?」


 咄嗟に魔皇が小声で言った言葉はかろうじて聞き取れたけどノウトの方を向いていないし、その言葉があまりにも唐突だったから上手く反応出来なかった。


「その、運ばれてきて、倒れたと聞いたから……その、……な」


 先程までの威勢はどこにいったのやらと言った具合に魔皇は言い淀んでいる。


「大丈夫ですよ、俺は。何ら問題はありませんから」


「そうか、それならいいんだが」


「さっきはもう少しフォロー出来たのではないでしょうか、魔皇様」


 不意に、背後から魔皇軍の筆頭騎士バレフォルクスが語りかけてきた。


「なに、ノウト自身の弁舌に成長を促そうと思ってな」


 魔皇は自信満々にそう言うが、その頬は少しだけ紅潮している。


「言い訳甚だしいですよ魔皇様。内心一番はらはらしていていたクセに」


「う、うるさいわ。黙っていろ」


「はいはい」


 魔皇軍のバレフォルクスは魔皇と幼い頃からの知人なので立場が違っていても距離感が近く、少しだけ口が悪い。それだけ魔皇が誰に対して分け隔てなく相手をするということだ。

 魔皇は誰にタメ口で語りかけられても一切憤ることはないだろう。むしろ喜んで会話するはずだ。


「では──」


 こほん、とスヴェリスがひとつ咳払いをした。


「改めて会議を再開しよう。進行は今回の会議の立役者であるこの私、スヴェリス・ディバルトス=フォン=アルケミニスが進めていきたいと思う。これに対して異議ある者は名乗り出て欲しい」


 場は静まった。誰も意を唱える者はいないようだ。スヴェリスはそれぞれの顔を見渡して、それから口を開いた。


「異論はないみたいだね。さて、今回の会議を開いたのは他でもない。連邦王国の侵攻についてだ」


 固唾を呑んで、ノウトはスヴェリスの言葉に耳を傾けた。


「今のところ大規模な軍を率いた争いはミェルキア指揮下の戦争以降大きく目立ってはいないが、ここ数ヶ月間、ガランティア連邦王国との国境線付近で決して小さくはない乱が起きている」


「モファナやサリド、そしてカザオルのことですね」ノウトが言うと、スヴェリスが頷いた。


 すると小さな声で「兄様、カザオルの代表者はどうして来ていないのです?」とヨルアがロークラントに聞いた。


「カザオルは魔帝国マギアの百族協定に属していないんだ。狼尾族(ヴォルフ)は民族意識が強いからな」


 ロークラントの言う通り、カザオルはどの視点から見ても中立的な位置を保っており、帝国から距離が離れているという立地的にも連邦王国側からはあまり狙われていない。

 しかし、狙われにくいというだけで被害を(こうむ)っているのは確かだ。それでも尚、カザオルが中立を保っているのは狼尾族(ヴォルフ)の戦闘力が比較的高く、防衛技術も総じて高いという理由があるのだろう。


「カザオルには遣いをやったのだが、まだ戻っていなくてね」スヴェリスは場をなごますように優しい声音で言った。


「そのカザオルもだが、モファナやサリドでは不死王信仰のあるオークやゴブリンたちが国境の近くで略奪と強奪を繰り広げている。死者も少なからず出ているようだ」


「それはここ数百年の悩みの種だな」


 魔皇が腕を組み、眉を曇らせる。


「オークとゴブリンは総じて数が多く、殲滅はほぼ不可能だ。それに不死王に信仰心のない非戦闘的なゴブリンやオークも存在する。これらを解決しようとすればこちらもあちらも多大なる犠牲を払うことになる」


 そこまで言って、魔皇は卓上に両手を乗せて指を絡み合わせた。


「しかし、だからと言って見過ごせなくなってきたの事実だ。このままでは民たちが傷つくばかりだからな」


「あちらは数で押してきますから、こちらは否応なくジリ貧になってしまうのは自明の理です。どこかでこの争いに終止符を打たなくてはなりません」シャルロットがその小さな体躯を微かに動かした。


「……ふぅむ」モファナの国王リンヴールドは自慢の髭を撫でた。「それならばどう手を打つか……、という話だね」


「例えばの話ですが〜」ギベオン王がおもむろに話し始める。「こちらが全力で兵士を集めて、連邦王国に乗り込んだとしても、狭義的な意味での勝ちはありえないでしょうね〜」


「当然、全ての力を用いて攻め込めば最終的には制圧することは出来ると思うが、何より相手の数が多すぎる。莫大な資金と年月がかかるのは必然的だ。下手したら終結まで何百年もかかってしまう」ダンタリオスが唸るように言った。


「理想的なのは不死王と締結して戦争をやめてもらうことなんですけどね〜」ギベオン王が爽やかに言った。


「それが出来たらとうにやっている。それはあまりにも空想論すぎるぞ。ヤツは千年も生き続けこちらを殲滅せんとしているのだぞ」ダンタリオスは吐き捨てるように言った。


「ノウト殿、ラウラ姫、ローレンス王子、ダーシュ殿」


 唐突に自分の名前を呼ばれて、ノウトは息を呑んだ。スヴェリスがノウトたちの顔をそれぞれ見やってゆっくりと口を開く。


「貴殿らはこの中で唯一不死王とあいまみえている。そんな貴殿らの率直な感想が聞きたい。不死王はどんな思想の持ち主だったのだろうか、教えてくれまいか?」


 それを聞いて、最初に口を開いたのはラウラだった。


「あたしが不死王を見たのはほんの一瞬でしたから、彼の思いや思想は分かりませんでしたが」刹那、ラウラが口を結んで、一呼吸するとすぐに口を開いた。「彼はただ強い、それだけ分かりました。あたしが戦っても勝てるかどうか」


 この大陸一の剣士と謳われているラウラが言うからこそ、その言葉にはある種の信憑性があった。


「私も姫と全く同じ意見です」ダーシュはラウラの背後に立ったままそれだけを言って、レンを見た。発言を促しているのだろう。


「私もほぼ彼らと同じ見解です。剣を交えましたが、勝てる気はしませんでした。彼は笑いながら、まるで遊ぶかのように私たちと戦っていたように見えました」


「なるほど」スヴェリスは顎を触った。「戦闘力も持ち合わせているとなると厄介だな」


「では、ノウト殿の見解は如何様(いかよう)なんだ?」


 興味深そうにロークラントがノウトを見つめている。

 不死王と話していた内容はここに辿り着く中途でニコやカミルには雑談がてら話していたが、ここにいる人達には誰ひとりとして語っていない。それは当然だ。ノウトは不死王と戦ってすぐに行方不明になったのだから。


「俺は、彼と話して、それから剣を交えました」


「話した、だと?」ダンタリオスが目を丸くした。


「はい。俺は彼と手を取り合いたいと言いましたが、彼はそれを拒みました。俺もまた不死王の提案を断りました。そこから俺と不死王は戦い始めたんです」


「なんと──」今度はスヴェリスが言葉を失っている。


「不死王はなんと言っていたの?」血夜族(ヴァンパイア)の王子ヨルアがノウトを見る。


「彼は──」ノウトは一瞬、言葉を詰まらせた。これは、果たしてここで言っていいのだろうか。言うべきなのだろうか。言って然るべきなのだろうか。分からない。どこか判然としない。しかし、語らないわけにもいかない。ノウトは意を決して言葉を紡ぐ。


「彼は、『楽園』に行くと語っていました。その為に成すべきことを成すと」


「楽園………」シャルロットが言葉を漏らした。


「自殺願望がある、ということか?」


 ロークラントが言う。『楽園』というのはとどのつまり、死後の世界のことだ。額面通り受け取ればそう解釈されるのも当然だろう。


「いえ、彼は本当に『楽園』が存在していると確信していました。『楽園』があると分かっているからこそ不死になったのだと思います」


「馬鹿な」ダンタリオスが呆れるように言った。「そんな妄言の為に我々は今まで何万人と犠牲を払ってきたというのか、馬鹿馬鹿しい」


「妄言、とは言えないかもしれません」


 そう言ったのはノウトではなく、意外にもシャルロットだった。


「どういうことだ、シャルロット王女。あなたは何かを知っているのか?」


「いえ」シャルロットは首を振った。「死後の世界があるかなど、この世に生きている誰にも分かりはしません。しかし、もしも例外があるのだとすれば?」


「例外……?」ラウラがその言葉を嚥下するように繰り返した。


「例えば、彼が何かを知ってしまった、だとか」


「何か……とは、なんだい?」スヴェリスが聞き返した。


「それは分かりかねます。しかし、不死王が何かに躍起になっているのは確かです。それに、妄言であれなんであれ、彼を止めなければならないのが現実です」


「それは、確かにそうだな」ロークラントが言う。「何をするにせよ我々は彼を討つ必要がある」


「では勇者ノウトクン」ギベオン王がノウトと目を合わせた。「アナタは不死王の戦闘面はどう思いましたか〜?」


「俺は、何度も彼を斬り続けましたが、すぐに再生して傷跡ひとつ残せませんでした。麻酔薬も効かなかったので、彼は本当の意味で不死なんだと思います」


「弱点のない極位魔人(ファグス)ということか」背後でバレフォルクスが呟いた。


「戦ってみて、勝てる気はしたかい?」スヴェリスがノウトを見て言った。


神技(スキル)を使っても一体一では難しかったですが、多対一ならあるいは」


「なるほど」スヴェリスはひとつ息をついた。「不死王もまた人の子であるということか。魔皇の火力をもってすれば不死王自体はどうにかなるかもしれないね」


「私個人がかかれば可能性はあるだろう。しかし、不死王自身が私が自陣から離れたと知れたら、今までの傾向からして確実に奴は奇策を打ってくるはずだ」


「それは、否定出来ないね〜」ギベオン王がその延ばした言葉とは裏腹に真面目な顔で言った。


「どちらにせよ近いうち、必ず不死王は軍を率いて侵攻してくる。不死王は勇者が行方不明と未だ思い込んでいるはずだからな」ダンタリオンが言う。


「ぞっとしないな」ロークラントは拳を握るだけで円卓に叩きつけはしなかった。


 それを聞いたスヴェリスが背後にいた一人の騎士に目線で合図を送った。すると、騎士が大きなスクロールを取り出して、それをスヴェリスに受け渡した。

 スクロールを円卓の上に乗せ、それを広げる。



 挿絵(By みてみん)



「不死王が率いる連邦軍の基本的な侵攻ルートだが」スヴェリスは立ち上がり、地図を指差した。「彼らはアーデバリにある軍務拠点から進軍するのがほとんどだ。しかし、そこからモファナに進軍するのは決して正攻法ではない」


「例えモファナを落としたとして、他国にモファナは他国に囲まれているからね」リンヴールドが告げる。「完全な大陸の統一を求めて国を落とすならば、例えば時計回りのようにカザオルからシュンタイ──といった具合だろう」


「防備を固めて、状況を見つつ進軍するということか」魔皇が相槌を打つ。


「しかしそれですと、かなり時間がかかるのではないでしょうか」


 レンの言っていることは間違っていない。


「そうだな。年単位か、場合によれば何十年もかかってしまうだろう」


「まぁ、それが正攻法だね」


 スヴェリスが首肯する。


「国盗りというのは、そもそもが大事業だ。連邦王国にしても、この大陸でこれほどまでに大きくなるのに二、三百年ほどかかっているからね」


「彼の目的はノウト殿曰く、『楽園』を目指すことだが、それは大陸の統一のその先にあるはずだ。ガランティア連邦王国をここまで大きくしたのもそれなりに理由があるはずだからな」ロークラントが地図を見つめながら説いた。


「ならば、今誰の手にもないカザオルが狙われるのが確実と言ったところだろうか」


「なににせよ、カザオルの国王と通ずる必要がありますね」敬語が相変わらず不慣れそうなラウラが言った。


「そうだな」魔皇が頷く。「戦は総じて、攻め入る側よりも守りきる側の方が有利だ。防衛戦は負ける気はしないさ。ノウトはどう思う?」


 魔皇がノウトを見つめてきた。ノウトはさきほどから考えを巡らせてきた。

 何か、何かが引っかかる。頭のどこかに違和感がこびりついている。

 ヤツは──不死王は今まで何度となくノウトの予想を裏切ってきた。

 ミェルキアをノウトの手でわざと討たせてエヴァを遣わしてフィーユたちを殺し、大地掌握匣(グランアルカ)を奪い、そしてノウトたちが大地掌握匣(グランアルカ)を取り返しにいく。

 ここまでは全て不死王の思い通りだった。

 手のひらの上だった。

 それならば、今のこの状況を、不死王はどう見るのだろうか。

 この場が生まれているのも手のひらの上でないと誰が言えようか。


「俺が不死王だったら──」


 ノウトはゆっくりと立ち上がって、地図を見下ろす。

 そして、サリドのこの地ヘリオルを指さした。



「……今、この場を襲うと思います」



「なんだと──?」


「……彼は、何から何までもを計算づくでやりきってきました。彼は夢想家であると共に理想主義者です。自らが考えたことは何でもすると思います」


「そ、それはいくらなんでも買いかぶりすぎでは?」今までずっと黙っていたレンの兄であるロギ・ヴァン=ユウグルアが言った。


「そうだ」リンヴールドが言う。「そんな考えうる最悪のシナリオ、あっていいはずが……」


「──だが」


 魔皇は俯き気味に話す。


「……奴ならやりかねない」


 数秒の沈黙がその場を支配した。確かな緊張感が、張りつめた空気とともに舞い散っている。

 ふと、ラウラが立ち上がった。

 彼女のその瞳は壁をただ真っ直ぐに見つめて、耳をぴんと立てている。


「……ラウラ?」ノウトが小声で名前を呼んだ。


「……何か」ラウラは目を細めている。「何か、地響きが──」


 ラウラが言い切るよりも先にダーシュがラウラに覆いかぶさった。


「──伏せて下さいッッ!!!」


 ダーシュが叫ぶと同時だった。




 ドゴォォオオオオオオオオオンッッッ───!!!




 そう、耳をつんざくような凄まじい轟音を立てながら壁が、粉々に破壊された。

 何かが壁の向こうから凄まじい勢いで飛び込んできた。何が。何が起こった。突然のことにノウトは反応出来なかった。土埃が辺りに舞う。


「なぁっ……!?」


 誰かが言葉を張り上げる。誰の声だかはハッキリとしなかった。


「何事だ!?」


 机の上に、誰かが仰向けで倒れている。血まみれだ。さっきまで卓上に広げられていたスクロール地図はビリビリに破けて原型がなくなっていた。


「……み、な………様…………」


 そこにいたのは群青連隊(ブラオ・メーア)隊長のシメオンだった。見るも無惨なほどにぼろぼろで、片手がちぎれかけている。


「逃げ、てくださ───」


 そこまで言ったところで、こと切れた。彼の胸に何かが突き刺さった。

 棒状のそれは、おそらく槍だろう。目がかすれて、よく見えなかった。


「だはははははははは!!」


 笑い声が、土埃の向こうから忽然と聞こえた。


「揃いも揃ってなんっつー間抜け面だよ」


 壊れた壁のその先から現れたのは、一人の男だった。

 彼は、翼が生えていた。

 一瞬、血夜族(ヴァンパイア)かと疑ったが、そうではない。彼の腕や頬など局所的な皮膚にはそれはまるで蜥人族(サラマン)のような鱗があった。

 翼もよく見れば血夜族(ヴァンパイア)のものではない。

 燃えるように赤く、骨が浮き出るようにごつごつとしている。


「…………竜人族(ドラゴニュート)……?」


 ノウトはそう呟いた。竜人族(ドラゴニュート)を見るのは初めてだったが、直感で分かった。こいつは、目の前の男は竜人族(ドラゴニュート)に間違いない。


「へェ〜。()()()の提案は間違ってなかったってことか」


 竜人族(ドラゴニュート)の男は卓上からこちらを見下ろしている。

 シメオンが、こいつに殺されたのだ。

 あんなにも強く優しかったシメオンが、こいつに。


「貴様、口を閉じろ」


 そう言ったのはサリド国王スヴェリスだった。彼はまるで獣のような形相で男を睨んでいる。


「あ?」男は円卓の上に立って、スヴェリスを見下ろす。


「何者かは問わん。時間の無駄だからな。貴様の目的はなんだ? 不死王の手先とでも言うのか?」


「ふしおー? 誰だそりゃ」


 男は首を大袈裟に傾げて、シメオンの亡骸に突き刺さった槍を引き抜いて、肩をそびやかした。


「おれぁ、竜連国(ドラゴレギオン)赭爪隊筆頭のダレン────」


 男は、それを言い切る前に姿を消した。

 いや、違う。消えたのではない。

 ──潰されたのだ。ぺしゃんこになって。

 見れば、魔皇が片手だけを前に出して、かつて生きていた男の遺骸に手のひらを向けていた。生前の跡形もなくなるほどに卓上に押し付けられて圧縮され、もはやもとが人であったことすら分からない。魔皇がシメオンを殺した男を魔法によって瞬時に命を奪ったのだ。

 魔皇の目はぎらぎらとした殺意に揺らいでいた。


「今、こやつ竜連国(ドラゴレギオン)と───」


 我に返った魔皇が呟くと、数多の叫び声が外から聞こえた。敵は、魔皇が殺したこいつだけじゃない。もっと、数え切れないほどにいる。


「なんだ、これは……! 何が起きているんだ……!?」「お、王よ、指揮を!」「なんなんだやつらは!?」「剣を取れ! 止まるな! 動け、動け!」


 混乱を起こす兵士や民衆の声が辺りに響き渡る。血と殺意の香りが周囲に満たされる。


「敵は、不死王だけではなかったということか……!」


 魔皇は怒りに声を震わせながら、なんとか言葉を紡いだ。





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