美少年に世話を焼かれてます。
最後まで見ていただけると嬉しいです。
唐突に話が変わります。
よければ感想をくれると嬉しいです。
私、風雅 カエデは少し…うん、ほんの少しだけ人より駄目な面が目立っていた。
朝起きればベッドから落ちるわ、ご飯はボロボロ落とすし、部屋は片付けられないし……。
「人……殺しちゃったや」
人を殺してしまうし。
私は普通よりダメな人間だった。
☆☆
そもそもの事の始まりは父でした。
「…結婚してもいいか?」
父がある日そういってきたのであった。
うちは母が早くに他界してしまい、物心ついたときから男手一つで私を育でてきたのだ。
ただでさえ私は人よりダメなので、父の苦労ははかりしれなかっただろう。
「うん、いいと思うよ」
だから、私は快く頷いたのであった。
そんなこんなの経緯を辿りながら、父の彼女さんとその息子さんに会う約束を取り付けたのだった。
しゃれたレストランに彼女さんと息子さんを呼び、向かい合わせに座る。
「どうも、神空場、紫子です」
ペコリと紫子さんが挨拶した。
品のある、けれどどこか幼いイメージを持たせる女性だった。
その母につられるようにして、隣の息子さんも頭をさげる。
「神空馬…凛、11歳です」
「わ~可愛い」
思わず声に出してしまった。
いや、本当に可愛い。
まつげはクルンと長いし、唇はぷるるん、ほっぺたは桜いろで、目は小鹿みたいで全体的にフワッフワしているお姫様みたいな子だったのだ。
「仲良くしてね」
「僕は仲良くしたくないです」
プイッと凛くんは顔を背けた。
どうやら嫌われてしまったようだ。
「ごめんなさいね~凛くんったら私以外にはこんな感じで~」
と、紫子さんが謝る。
口では謝っているが、どこか嬉しそうというか……アレだ、所謂『ざまぁ』が見え隠れしている。
まぁ、私はどうでもいい。
「じゃあいいや」
私は凛くんから視線をそらし、前菜のサラダを食べ始めた。
すると凛くんは目を見開いて私を見る。
「怒らない…ん…ですか?」
「うん、興味ないもん」
重要なのは自分のことであって、相手の気持は基本どうでもいいと私は思う。
弟になる少年に嫌われようが仲良く出来ないと言われようが、私には関係ないのである。
「貴方…変な人ですね。いじめられませんか?」
「女子に異常に嫌われてる」
学校での女子からの嫌われっぷりは異常な程だ。
そのせいでお昼は男子とだし体育組む相手も男子、休み時間喋るのも男子、帰りみちも男子だ。
教師にだって女性教師には嫌われているし、母にも…。まぁ、それはいいや。
正直むさ苦しい。
「どうせそのヘラヘラした性格で苛立たせてるんですよ。直したらどうですか?」
「やだよ面倒くさい。私、人より劣ってるもん」
それを見て女子は私を嘲笑してるし、男子は嬉しそうに笑っている。
「むぅ…」
「そんなことより、サラダ食べたら?」
凛くんは少し不愉快層ながらも、サラダを食べ始めた。
ちょっとした一悶着はあったものの、親同士の話し合いが進んで一緒に住むこととなった。
しかしながら一緒に住むには私はダメな人間だし、凛くんはあまりにも……しっかりとし過ぎていた。
☆☆例
「ちょっと……何しているんですか?」
ある日の朝、凛くんはゴミを見るような目で私にいった。
私はというと、牛乳をぶちまけたせいで全身がベタベタである。
「牛乳まけちゃって……すぐに拭……ぎゃぁあ!!!」
牛乳のせいで足が滑ってしまってころげ、手に持っていたコップが割れ、そこの上に手を叩きつけてしまった。
「何やってるんですか!?貸しなさい!」
そういって凛くんは救急箱から包帯を取り出して私の手に巻きつけた。
「まったく、割れた硝子に手を出すバカが一体どこにいるんですか…まったく」
「アハハ~ごめんね~」
「本当に危ない人ですね、駄目駄目です」
そういってテキパキと凛くんは動いた。
「わ~凛くんありがと~」
「もうコレっきりですよ!!」
凛くんはプイッと私の顔をそらしてプンスカと怒りながら去っていった。
しかしながら、コレっきり。という訳にはいかなかった。
何故ならば私は人より駄目な面が目立つ女だし、それを凛くんは無視できないでいた。
以下、凛くんの言語録である。
「なんで猫缶ばっか食べてるんですか!?貴方は仮にも人間でしょうが!」
「どうして髪の毛を拭かないんですか!?僕がふかないといけないじゃないですか!!」
「ほら、口にソースがついていますよ」
「飯ボロボロ落としてばっかり!!もう僕が食べさせます!」
「なんで料理して髪の毛を燃やすんですか!?僕が作るので何もしないでください!!」
「もぉお!!なんでいつも服をグシャグシャにするんですか!?僕がいないとダメなんですから!!」
「ドッグフードなんか食べないでください!!!」
「本当に……ボクがいないとダメなんですから」
こんな感じである。
なんか……なつかれた。いや、よく世話をやかれているというのが正しいだろう。
私が何かをするたびに彼はプンスカと怒りながら私の世話をする日々が7年続いたのであった。
☆☆☆7年後。
よし!一人暮らしをしよう!
「は?独り暮らし?……緩やかな自殺を考えてるんですか?バカですか?」
酷いいいようである。少しはお姉ちゃんを敬って欲しい。
最近、凛くんが私を生きるゴミだと思ってるんじゃないかと悲しいんです。
「いや、私ももう22歳だしね?一人暮らしをする時期だと思うんだよ」
「姉さん、生きることに飽きるのは早いと思いますよ?」
だから何で君は生きたゴミを見る目で私を見るんだよ。私をなんだと思ってるんだよ。
畜生…最近ネット事業を立ち上げて社長になったからって、18歳になって身長もデカくなったからって偉そうにしすぎだぞ。このこの。
「大丈夫!!ちゃんと出来る!!もう決まってるしね、大丈夫大丈夫」
「料理では髪を燃やしてショートカットにし、ご飯を食べる時はボロボロと落とすわ口につける。独り暮らしなんかしたら死にますよ。貴方は何も出来ません」
もうやだ。何この美形悪魔。
「泣いちゃうぞ?流石に泣くぞ?」
なんてちゃかしてみると、彼は読んでいた本をパタンと閉じて私の頬に触れた。
「姉さんを世話できるのは僕だけです。こんな駄目人間、社会に出したら終わりですよ。俺の恥です」
毒舌が心にグサグサくるね。
君のそれが愛情なのか何なのかがサッパリ分からないよお姉さんは。
「……でもさ、ほら紫子さんにも言われちゃったし」
一人暮らしをすすめて来たのは紫子さんである。
『もう22歳だしそろそろ家から出たら?……それに……貴女がいると……ね?もう大人なんだから……察して』
紫子さんは……うん、私のことが…きら……まぁいいや。私も一人暮らしには憧れていたしね。
そう言い続けると、凛くんは諦めたようにため息をついた。
「わかりました。そこまでするなら仕方がありませんね……ただし、ちゃんとチェックさせてもらいます」
「まぁ、別にいいや」
☆☆
とまぁ、なんとかかんとか凛くんから一人暮らしの許可を得て、私は少し古いアパートに住むこととなった。
アパートに移住して三日後に凛くんが膨れっ面をしながら訪れた。
「まったく、姉さんは僕がいないと駄目だということを全然自覚してないんですから……どうせ部屋なんて何も片付けられてないんでしょう?一応掃除はしてあげてもいいですが、毎日出来る訳ではないです。大体、なんで連絡してこな……ブツブツ」
玄関にて、まるで呪詛のように凛くんがブツブツいっている。
イケメンだからまだ許されるが、完璧に妖怪みたいだ。
「まーま、取り合えず上がりなよ」
私が苦笑してそういうと、凛くんは渋々と呪詛を止めてくれた。
「それもそうですね」
靴を脱いで綺麗に並べ、そのまま歩いて部屋へと向かった。
ドアノブをつかみ、私の部屋に入る。
「……アレ?意外と綺麗ですね」
私の部屋が綺麗だったのだ。凛くんはまるで鳩が豆鉄砲喰らったかのように目を見開いていた。
っふっふっふ、どうだ。意外と綺麗なものだろう。
「和くんにやってもらったんだ」
「は!?」
凛くんは瞳孔が開いた目で私をにらみ付けた。
おっと……ちょっと怖いぞ?
「誰ですかそれ」
何で君……そんなに怖い顔すんの?
「友達……うん、友達」
学校の男友達である。
女子達によって私の机がボロボロになってる時によく助けてくれる子だ。
「ふ、ふ~ん。まぁ?別にどうだっていいんですけどね…」
凛くんはプイッと顔を背けてしまった。
そしてそわそわと辺りを見回す姿はまるで姑のようだ。
「服も……ちゃんと畳んでいるようですね」
「うん、それは秋くんにしてもらった」
「は!?誰ですか!?」
だから怖いってば。
「友達だよ、多分友達」
色々あって女の子達に鋏で服を切り裂かれて困っていたときに助けてくれた人ではある。
「まぁ…別に僕は…別に…別に…」
凛くんはまた顔を背けてしまった。ギリギリと歯軋りをたてていて…姉さんはちょっと怖いです。
「あ、お腹すいたの?」
「死ね」
おっと…ここまでシンプルな毒舌は久しぶりだぞ。
なんて思っていると、彼は私に何かを差し出した。
なんだと思ってみてみると風呂敷につつまれたタッパーらしい。
「ほら、差し入れですよ。ちゃんとご飯を食べてないだろうと思ったんです。どうせ、貴女のことだから缶詰しか食べてないんでしょ……?」
なんてプンスカいいながら私に渡す。
「あー…冷蔵庫の中パンパンだからちょっと入んないかも」
「は!?」
本日3度目の『は!?』だな~。
なんて暢気なことを考えている隙に、凛くんは飛びつくような勢いで冷蔵庫の前にたった。
「つーか!冷蔵庫自体、貴女の所持品じゃないですよね!?何処から盗んできたんですか!?」
「凛くんよ…姉さんをなんだと思ってるのか近々議論しようね…。因みに冷蔵庫は坂乃くんからの贈り物だよ」
体育の時間、女子にハブられて一人ぼっちの私とペアを組んでくれるいい奴。
「冷蔵庫の中…すごいギッシリなんですけど…」
「うん。カレーはヨシくん、魚はタイくん、保存のきく干し物は斎藤くん、そこにあるお弁当は春くん、みんな私の食生活を心配してくれたんだ」
そしてみんなに『独り暮らし?ゆるやかな自殺か?』と言われてしまったのである。
少しは私を信用しろと思う。
「でも、凛くんのを一番に食べるね」
一応は弟で身内だし、それだけで凛くんは無条件で優先順位は上位になる。
しかしながら、凛くんは私の言葉を聴いちゃいない様子だ。
「というか……この家具はどうしたんですか?仕送りでは買えない額ですよね?」
「確かテーブルは花くん、タンスは日吉くん、クローゼットは雪、後は……あー……色々」
途中から一々確認すんのが面倒になったのだ。
朝から大量にピンポンでたたき起こされ、皆からお前はバカかと言われ、みんなから大量に家具を揃えられたのだ。
私の部屋に収まりきる筈もないので、何個かは適当に捨てた。
「みんな優しいんだよね~」
その代わり、女子には徹底的に嫌われるのは何故なんだろうか。何故か産まれてこのかた仲良くなれた試しがない。
なんて呑気な頭で考えていると、凛くんは泣きそうな顔をしていた。
「僕がいなくても…代わりは沢山いるんですね…」
まるで自分の存在意義を壊されたかのような……アイデンティティーを塩酸でドロドロにとかされたかのような…そんな子供みたいだった。
「……」
この場合…なんていおうか
「否定しないんですね」
そうこうしているうちに凛くんは泣きそうな顔をして帰ってしまった。
☆☆
「来たわよ、どんな感じかしら?」
凛くんが帰った後、義母の紫子さんが現れた。
品のある優雅な笑みに隠された、嘲笑が見え隠れしている。
「紫子さん、いらっしゃい。あがりなよ」
私は彼女を取り合えず上がらせた。
紅茶でもいれようかと思っていると…。
「いい?周りの男が優しいのはね、貴方が『可愛い』からじゃなくて『可哀想』だからよ?」
部屋に上がって開口一番がコレであった。
いつものことではあるのだが……意味がわからない。
「あの…いきなりなんですか?」
「家具を揃えたり、ご飯を作ってくれたりして……カエデちゃんが勘違いしないか心配なのよ。自分が好かれているなんて勘違いして恥ずかしい思いをして欲しくないの」
「はあ…」
「それにね、ぶりっ子もやめた方がいいわよ?全然可愛くないし…寧ろキモいって思われるわよ?そう思われるのは…流石に可哀想だと思うの」
ぶりっ子なんてしてないし、別に自分が可愛いなんて思ったこともない。
けれど…何故か誰も言葉が通じない。いや、言葉が通じているのに会話が成立しないので言わない。
「あの…やめてください」
「ほら、やっぱり図星なんじゃない」
どういう思考回路をしているのだろうか…まぁいいや、取り合えず果物切っておこう。
私は台所にたち、包丁を取り出してリンゴを切る。
シャリシャリ…
「そうやって逃げるわよね、そういうのもやめた方がいいわよ、ぶりっこに見えるわ」
あ、蝿…。
それにしてもやっぱりストレスは溜まる。この人は毎日私を攻撃するのだ
女子大抵私を攻撃するが…家にまでストレスを持ち込まれたくない。我慢しつづけるのも苦しい。
それよりもリンゴだ。シャリシャリ…あぁ、蝿もうっとうしい。
「ねえ?聞いてる?貴方のためにいってるのよ?貴方は本当はとても気持ち悪…」
「あぁ…
煩い煩い煩い五月蝿い五月蝿い五月蝿いハエ蝿蝿「ちょ…」蝿蠅ハエ煩い煩い煩い五月蝿い五月蝿い五月蝿いハエ蝿蝿蝿蠅ハエ蝿蝿蝿蠅蝿「やめてよ!」蝿蝿ブーンブゥン蠅蝿蝿蝿シャリシャリシャリ蠅蝿蝿蝿蠅キャットフードも蝿蝿蝿蠅蝿蝿ドックフードも食べさ蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿髪を燃やされ蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅「やだ…」蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿シャリシャリシャリ蝿蠅蝿蝿ブーンブゥーン蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿これ以上どうしよ蝿蠅蝿蝿蝿蠅シャリシャリシャリ蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿シャリシャリシャリ蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅「なんなの!?」蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿蠅蝿蝿蝿うわぁぁぁぁあああ蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿蝿
殺そう。」
「へ?」
ッグサァァァアア!!
私は持っていた包丁で紫子さんの腹部に思いっきり立てた。
「…っう…な…なんで…」
紫子さんの声がした、まだ死んでいないみたいだ。仕方がないので包丁を回転させて抉る。
グリュリ……肉が抉れ、内臓を引っかく感覚が手からした。
「ッグ……ゴボ…」
ドサッと…紫子さんは倒れてしまったのであた。
紫子さんの体からドクドクと血が流れだし、壊れたゼンマイ仕掛けの人形のようにピクピクと少し動いた後…完全に停止した。
人は案外簡単に死ぬし…
人はあっけなく人を殺せる。
「あ、どうしよ…」
完全に死んでしまった…のか?よく分からない。2回目ではあるが、やはりよく分からない。
さて、どうしようか……取り合えず、スマホを開いて通話ボタンを押した。
プルル……ガチャ
「凛くん?どうしよ…」
血がベットリ手でスマホを持ちながらいう。
「人を殺しちゃった…どうしよ」
☆☆
ものの5分も立たない間に凛くんは来た。
「きましたよ!!」
凛くんは同然のことながら焦っているようである。
私は先程剥いていたリンゴをシャリシャリと食べながら、血まみれの紫子さんを指差す。
「ごめん、殺した」
「あぁ……ぁあ!!」
凛くんは膝から崩れ落ち、母の首にてをやり死亡したことを確認した。
確認したあと、スマホを取り出して何処かへと通話する。
すると5秒もしらない間に変な人達が来た。
「え、この人達だれ?」
まるで蜂の巣を退治するような白い防衛服に、酸素マスクを被っている人達だ。
「処分する専門の業者ですよ。会社を立ち上げる時にもしもと思って…ツテを作っておいたんです」
お姉ちゃん、貴方が心配です。
……ってアレ?なんでこの子…冷静なの?
首をかしげながらリンゴをモグモグ食べる。
「取り合えず、外に出ましょう。ここは空気が最悪です」
「え…あ…えと」
私は状況に頭がついていかないまま、凛くんに腕をつかまれて外に連れ出された。
マンションの階段を下りて、夜空の下を歩く。
すると凛くんは心底嬉しそうな笑顔をかみ殺しながら喋った。
「それにしてもやっぱり……僕を頼ってきましたね。まぁ、僕くらいしかこんなの対処出来るとは思いませんし」
いや、私もまさか対処するとは思ってなかった。
頼ってきたというより…私的には報告したっていうほうが正しい。
紫子さん殺したのはアウトだから、もしよかったら殺されてやってもいいと思って報告しただけだ。
仮に対処したいなら別の子を呼んでいる。
「ねえ?これで自分が駄目な人間で僕がいないと駄目だって分かりましたよね?それが分かっただけでもお利口さんです」
凛くんはニッコリと、バカな犬がお手を覚えた飼い主のような笑顔で私の頭を撫でた。
「えっと…あの…」
ショリモグとリンゴを食べながら私は少し困る。
なんか…凛くん…ヤバくない?
「さあ、家に戻りましょう?あぁ、あんな所ではないですよ?ちゃんとした僕の家です」
そう嬉々として喋る凛くんは怖い程に晴やかだ。
コイツ怖い。
「姉さんは僕がいないと生きていけないんですから。バカな姉さんは今までそれが分からなかったみたいですけど…これからは一緒に生きて、ゆっくり学んでいきましょう!」
「あ…はい」
「良くできました!」
ニッコリと可愛らしく笑う彼は本当に可愛らしい。
バカな犬が一つ学んで嬉しいみたいな笑顔だ。うん、怖いこいつ。
「さあ、家に帰りましょうか」
そういって、彼は私の手を引いて歩き始めようとする。
多分、このまま手を引かれて歩けばきっと…後戻りできないのだろうが…。
「…うん」
私には立ち止まるという選択肢がなかった。
何故ならば私は人よりも駄目だから。依存するしか生きていけないから。
私、風雅 カエデは少し…うん、ほんの少しだけ人より駄目な面が目立っていた。
朝起きればベッドから落ちるわ、ご飯はボロボロ落とすし、部屋は片付けられないし……。
だから今日も弟に世話をされる。
楓
ダメ女のクズ女。若干サイコパス。
何を言われても基本的に怒らないしムカつかないが、瞬間的に殺意が沸く人。何回か人を殺している。美人じゃないが、目に惹く。
凛くん
しっかものの美少年。
楓は自分がいなければダメだと思っており、楓を頭の悪すぎる犬か子供だと思ってる。