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遙かな男の娘 ~目覚めた僕は此処でも男の娘でした~  作者: 無職の狸
第一夜 起きたら不思議な世界だった
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《01-6》

巨大ムカデに僕はどうやって……オートパイロットですか、ありがとうございます。

††


 母さん、僕は初めて知りました。人間ってほんとに驚くと声がでないし、ほんとに恐怖すると、身体が動かないんですね。意気地なしとか言われても構いません。でも僕は動けなかったんです。腰を抜かしておしっこを漏らさないだけでも、褒めて下さい。




 逃げないと!


 真っ先にそう思ったけど身体が動かない。てか寧ろ向かっているよっ!ぎゃぁぁぁぁ!!

 

 そこからは不思議な体験だった。僕は見ているだけなのに、身体が勝手に動いていた。


 まるで誰かが僕を操っているようだ。多分ソレはネクスの仕業なんだろう。


 向かってくるムカデに向けて走ると、ぶつかる直前に地面に落ちてた拳大の石を拾い上げ、ふわりと飛び上がると、思い切り投げつける。


 石は一直線に飛んで、ムカデの頭に直撃した。凄いコントロールだ。僕なんて喧嘩もしたこと無いのに、なんでこんなことができるのか不思議だった。


《対象のダメージを確認》


 答えはネクスが僕の身体を操ってる、からだ。

 

 『オートパイロット』


 車で言えば自動運転だ。うん、僕はネクスに運転されている、まてぇ!


 勝手に動かされてるんじゃなくて、どうやってかは知らないけど、ネクスは僕を守っているんだ。有り得ない存在を目の前にして、ビビって逃げる事もできなくなった僕を守ってくれている。


 こんなバケモノに襲われたら、僕は死んでしまう。巨大ムカデに喰われて死んでしまう。そんな危機を回避するために、最適な判断をしてるんだ。


 なんか凄いぞネクス。


 巨大ムカデが頭を割られ、体液を出し、一度後退した。そのまま逃げてくれれば良いのだけど、こいつには恐怖心がないのか、鎌首を擡げ再び僕に怪しげに光る赤い目を向けた。


「JYAAAHHH!」


 高周波のような高い声が迸り、牙が横に開いた。僕の身体が勝手に反応し、地を蹴って跳び上がった。


 巨大ムカデの口腔から紫色の液体が迸り、僕が立っていた地面に当たり飛び散った。其処にあった石や砂利が液体を浴びた途端に形状を崩し、どろりと溶けていく。


 うわっ、なにあれ、毒液?石が溶けてるじゃんっ。


《強酸の体液と推測します》


 ネクスが答えてくれる。てかなにそれ、強酸を吐くの?確か噛まれると毒があるとか聞いたことあるけど、いやいや、相手は巨大ムカデだ。普通じゃないんだ。


 というか何なの、こんな巨大ムカデがいるとか、ここって日本じゃないの?ナノマシンを体内に挿れるのが普通な、未来の世界じゃないの?


 そんなことを考えてる間にも、次々に強酸液が吐き出され、僕は強酸液を避けていく。あ~なんか便利だ。


 そして


《Photon blade activation》


 そんな音声が聞こえたかと思うと、僕の右前腕が割れた。えええええっ!


「なにこれなにこれなにこれっ」


 手首から肘までがバキバキと割れていく、実際には音は立てていないけど、そんなイメージで腕が割れると、中から長さ30センチ程の刃が手首を軸にして飛び出した。


「うわぁぁ、なんだこれっ!」


 刀のような白銀の刃が横に飛び出した。腕と水平に飛び出し、ゆっくりと手首を支点に少し角度を取っていく。そのうえなんか刃の周囲がキラキラと輝きながら微かに振動していた。


 身体に刃物を仕込んでいるとか、100年後ってこれが普通なの?


《攻撃に移ります》


 いつも沈着冷静、ネクスの声が聞こえた。


 そこから先はあっという間だった。僕の身体が宙を舞い、襲い来る強酸液を躱して腕が振られた。腕の刃が一閃すると、仁王立ちとなっているムカデを、あっさりと細かく断ち切ってしまった。


《対象生命活動低下確認、危険回避を確認しました。武装解除します。オートパイロットを解除します。》


 なんか続けざまに頭に響いたかと思うと、身体が自由に動く様になった。身体を支える力が抜けて、僕はぺたんとへたり込んでしまった。


 僕の目の前には切り刻まれてなお、まだピクピクと生命の残滓を蠢めかせている物体が転がっている。


「ネクス、今の一体、なんなの?」


《緊急事態につき、オートパイロットを起動しました。》


「ああ、そんなこと言ってたね。それって僕を操れるってこと?」


《否定、オートパイロットはマスターの自由意志で解除可能です。マスターが心神喪失など、自己の意思によって危険回避行動をとれない場合に、オートパイロットが起動され最適な行動をとります。》


 そ、そなのね。じゃあ寝てる時とかでも安心かな。


《YES》


 いやそんな元気よく云わなくても


「それでちょっと聞きたいんだけど、僕の腕からなんか刃物が飛び出したような気がするんだけど。」


《フォトンブレードです。刃に光子振動波を纏わせた、近接戦闘用装備です》


 えーと……きんせつせんとう…装備?


 僕はそんなもん持ってなかったと思ったんだけどぉ、これも魔改造されたのかなぁ?


《YES、マスターには軍事用アプリ及び武器パーツが組み込まれています。》


 こらまてぇぇぇぇぇぇっ!


 ちょ、なにそれ、人の身体勝手に作り変えて、しかもよりによって軍事用って、どういうことよ!!僕は軍事サイボーグかっていうのぉ!


《ご両親よりの遺言です。一人でも生きて行けるように、と。》


 いやいやいやいや、普通に要らないから。何処の世界で生きろってのよ。


 まあなんか役には立ったけど……でもさ軍事とか僕どうなってんのさ!なんか洒落になってないんだけど。


《警告、大型個体接近中》


「うおぃ、誤魔化すなぁぁぁぁ!」


 僕はどなりつけた、でもそれって、いやその方向には、またなんかが居たんだ。


 さっきのムカデじゃない。


 白い大きな顔があった。


††

まだ更新します、残り2つ

懲りない作者のモチベーションを上げるためにも、応援してやって下さい。

m(_ _)m

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