《01-5》
「母さんはレイに完全なる女性になる事を望みます」(きりっ)
††
母さん、病気を治してくれてありがとう。でもね、母さんのことだ、母さんは僕にいつも完全なる女性を望んだよね、男の僕に。何故そこまで望むのか解らないけど、母さんのことだから、まさか、もしかして希望した、なんてことはないでしょうね。もしそうなら、初めて母さんを恨みます。
僕は慌てて胸に手を当て、その感触を確かめた。
「だ、大丈夫だ、膨らんで……ない、いや、あれ、うん、あれ。」
胸が膨らんでない、いや少し膨らんでる?あれれ、よく解らない。少し、
僕太った?
胸だけ?
女の子の胸なんて触ったことないからわかんないや。でも、グラビアとかでみた豊かなおっぱいじゃ無いのは確かだけど。
胸はちょっと分かんない、貧乳、とか言われたらそうかもしれない。でもそうじゃないことを祈ってる。
続いて恐る恐る下半身に手を伸ばす。
頼むよ………
「あった………」
ちゃんと有った。あったよわがチ●コ!ちゃんとしっかり付いてた。玉もちゃんと2個。
よかったぁ……いや良くないかも。
以前も女の子みたいな顔だったのに、細部を手直しされたからかな、眼はぱっちり二重だし、唇ぷっくらしてるし、完全にどっからどう見ても掛け値なしの女の子じゃん。しかもかなり可愛いし。
でもこれじゃ完全に不自然じゃん。昔はまだ多少男の子っぽかったから、可愛い男の子って感じだったのに、いまじゃどっからみても可愛い女の子!
なのに身体は男の子!あ、なんかあったぞなんだっけ、そうだ。
男の娘だぁ!
ああ、ちょっと目眩いしてきた。
いっそぶった切られてた方がぁ……いやいやいやいやぁぁっ
100年ぶりに起きたと思ったら、いきなり顔のつくりをかえられて、美少女っぽく魔改造されてるって、有りなのか?
なんかどっと疲れて来ちゃったよ。
それにこの髪の毛、随分伸びて腰まで来てるし。はぁ~、パーフェクトに女の子じゃん。
「なんなんだよぉぉぉっ!わけわかんないよぉぉぉっ!」
《ご両親、特にマスターのお母上に於かれましては、完全なる美の化身は両性具有にある、と仰ってました。》
「はぁ?」
何いってんの母さん。
《しかしながら22世紀の医療科学においても、男性の機能を持つ方に、女性の卵巣や子宮等の器官を構築する事は、物理的に不可能でした。残念ながら両性具有の施術はされておりません。》
あははぁぁ、良かったぁ……
性転換なんてされてたら、やっぱ傷つくからね、母さん。というか器官を構築とかって、完全なる女性を作ろうとするネクスは最高だよ。お陰で施術はされなかったんだから、とにかくホッとした。
僕がネクスの言葉に戸惑いつつもホッとしている時、背後からそっと近づいてくる何かに、僕は気が付かなかった。
ぴちゃっと水の音がした。気のせいじゃない、ほんとの水の音。小川のせせらぎを破る水の音に、僕はふと振り向いた。
そこに信じられない物がいたんだ。
《警告:危険を感知しました。危険対象が接近しています》
はい? それ、遅くね?
ネクスが危険を知らせてくれている。
こんな森の中だ、当然のように野生動物だって居るだろう。危険を知らせてくれるネクスに感謝しつつ、僕は辺りを覗った。
どんな危険なのか、蛇か猪か、それとも狼とか熊とかは勘弁して欲しい。いや蛇とかだって勘弁して欲しいけど。
小川の方へと視線を向けると、そこに何かいた。
なにこれ?
ちょっと固まった。
なんか赤いのが水の上で揺れている。
見たことは有るんだ。うん、多分実物はなくても、なんかの本かネットで見たこと有るんだ。
でも……これなあに?と自分の目に映るものを、認めたくなかった。
赤い身体。蛇みたいに長いけど、なんか団子が連なってるみたい。それに団子から横に飛び出した細いなんか、あれは節足かな、ワシャワシャ動いてて、頭のほうでは触覚や牙見たいのが有る。
うん、解った。ムカデ、それもとびきり大型のムカデ……
ひぇぇぇぇ!!!
僕はビビった。マジビビった。なんでこんなでかいムカデが居るの。大きさは、水の上に出てるだけで1メートル以上はあるよ。僕の背ぐらいはあるよ、それじゃ全長どの位あるんだよ!
さっきはドロドロの粘液かアメーバーか、いやあれはスライムだ。あんなのが居たり、こんなのが居たり、一帯どうなってんだぁ。
「SYAAAAAAHH!!」
触覚が動き、牙が動き巨大ムカデの身体がうねると、いきなり襲いかかってきた。
「ひぇぇぇぇぇっ!」
バッシャーンッ!!
僕がもといた場所の水が跳ねた。どうやら巨大ムカデが突っ込んだみたいだ。あそこにいたら、多分僕はアイツの牙で噛まれて大怪我してただろうな。
でも何故だろう。僕は無事だよ?
向かってこられた時には、涙目で固まってたと思ったのに、何故か解らないけど、僕はムカデから数メートル距離をおいた地面にふわりと降り立った。
どうやって避けたのかな、僕。
そんなことを考えてたら、ムカデが水面を這って俺に向かってくる。ワシャワシャと無数とも思える節足を動かして、むかってくるよぉ!きも~~~~っ!!!
「ひ、ひぃいいい!」
《警告:マスターの行動不能を確認、オートパイロット開始します。》
え?
ネクスの声になんか首を傾げたくなるけど、そんなときじゃない。一気にムカデが僕との距離を縮めてきた。
††
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