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《05-2》

「5話 僕、街へ行く」の《05-2》から《05-8》までを順次更新していきます。

††


 母さん、小さいころに僕は母さんによく怒られました。今思うと些細なことかなとは思うのですが、よく母さんの言うことを聞かずに、また逆らって怒られましたね。いま、僕は今、そんな気分です。

 





「アリサ、いつでも攻撃できる用意をしておけ。」


 ガリオンが静かにアリサに指示した。その顔は大汗を掻いて青ざめている。


「え、は、はい。」


 ガリオンと僕の異変にアリサは急いでバッグから予備の機械弩弓を引き出すと、弾丸を装填していく。


 へぇ、もう一つ持ってるんだ。でもさっきのやつと比べると、なんか弱そうに見えるのは気のせいかな。予備用ってところかな。細いし短いし、機械弩弓というより短機関銃ウージーみたいだ。片手で持てるライトな感じ。


「この気配は……なんだ、ヴェンテゴなんてもんじゃないぞ。」


 ガリオンは気づいている。そうなんだ、これから来るのはヴェンテゴより恐ろしい奴なんだ。


 見た目は可愛らしいのに、怒らせたらヴェンテゴだって裸足で逃げ出してく奴なんだ。


「な、なんですか、いったい……」


 アリサは気づかないようだ。気配察知とか魔力感知とか、いろいろな感知能力がガリオンより劣ってるってことかな。うん、脳筋なんだろう。


 戦闘系に全てのスキルを持ってってるってことだろうな。だからあんな強力な武器を使えるってことだろう。あれだけ強烈な爆発を起こす弾丸なんて、普通の奴が連発したら魔力切れになるからね。

 

 それはそれで置いといて、はぁ、気が重い。


 


 僕は嘆息してヴェンテゴの死体が横たわる方へ視線を向けた。そこから漂う気配は魔力でも闘気でもない、"神気"だ。精霊族であるメトゥ・シが発する"神の如き"気配だ。



──でも珍しいな。人前に出る気なのかな


 アリサが釣られるように、ビクッとして僕の視線を追った。ガリオンはもう解ってる。ずっとその方向へと視線を向けて、汗を滴らせていた。


 そこには最初何がいるのかよくわからないが、よくよく目を凝らして見れば白い大きなトラが見えただろう。


 体長にして6メートルはある白トラだ。それがゆっくりと、ノシノシと雪をかき分けながら歩いてくる。


「あ、あれはビャッコ。」


 ん、ビャッコ?ビャクはそういう種類のモンスターなのかな。そういえばビャクのことは解析したことなかったな。


「ひっ。」


 アリサが小さな悲鳴を上げて短機関銃を構えた。多分無駄とは思うけど、攻撃されるともっとおかしな事になりそうだから、僕はわざとアリサとビャクの間へと移動した。


「レイ、どいてっ」


 射線上に僕が立ち、アリサが悲鳴のような声で怒鳴りつけた。でも僕は動かない。


「大丈夫」


 とだけ声を発して、またビャクの方へと顔を向けた。ガリオンはそれを見て不思議そうな顔をしている。


「レイ、危ないから、どいてっ。」


 ビャクから漂う気配、迸る闘気に流石にアリサも気づいたのだろう。顔中に汗を浮かべヒステリックに怒鳴っている。でもね、どうやってもアリサには勝てない相手だから。


「まてアリサ。」


 少しテンパり気味のアリサを、ガリオンが止めてくれた。


「あの白トラ、俺たちが例え傷を負っていなくても勝てる相手じゃない。あれはバケモノだ。恐らくこの山の主だろう。」


 へぇ、ビャクって山の主だったのかな?


「ガリオン、でも、このままじゃ……」


「あのトラは………LV.182だ。」


 ガリオンの言葉にアリサが固まった。


 おおビャク、お前そんなあったのか。凄いなぁ。ほんと山の主だね。


 ヴェンテゴはLV.118だった。アリサとの差は30レベルほどだ。到底勝てる相手ではないが、集団で相手するとなれば、準備を整えてうまく立ち回り、知恵を駆使すれば、まだ勝てる可能性もある相手だ。


 だけどビャクはその上を行く。たとえ相手がレベル100を超えていても、ビャクにとっては物の数じゃない。LV.80や90程度の冒険者が、束に掛かってきたとしても、到底倒せる可能性など見いだせない。ガリオンはそれをよく解っていた。


 今彼が考えている事は、どうすれば逃げられるか、だけだ。もちろんそれだって途轍もなく可能性が低いわけだけどね。


 そんな彼等を置いて僕は前に出て、ビャクに近づいていく。そしてビャクの身体の上で光り輝いている存在を見つめた。


 なるほどその形態なら、人前に晒しても良いのかな。それとも彼等を生かして帰す気は毛頭ないとか?


『やあメトゥ・シ、ちっと騒がせたね。』


 ビャクの上に乗る光り輝く存在に向けて挨拶する。何事も挨拶は大事だからね。

 

「え、何今の言葉、あの子、レイは何を喋ったの。」


 ん、アリサが目を白黒してる。

 

「むぅ、、あれは、、、」


 ガリオンは普通に唸ってる、いや普通っておかしいかな。


「いや、そんなことより、レイは今、メトゥ・シと云わなかったか……」


「メトゥ・シって、うそ……でしょ……あのトラの光が、え、まさかっ」


 あ~いつもの癖で日本語使っちゃたから、二人には意味がわからなかったみたい。でもガリオンとアリサが声を震わせているけど、もしかしてメトゥ・シの事を知ってるのかな?


 メトゥ・シって顔が広いみたいだな


『レイ、何をしておった。』


 光り輝く存在から思念が音のような響きを伴って周囲に広がった。あ、珍しいな。いつもは僕とビャクだけに思念を飛ばすのに、全方位へ思念を向けた。


 これだと僕にだけじゃなくて、ガリオンとアリサにも聞こえてるだろうなぁ。


 周り全てから聞こえるような、頭の中に響くような、なんだかよく解らない波動となって聞こえてくるんだ。あまり好きじゃない。


「ひぃぃっ!」


 アリサはなんか怯えて声を上げて辺りを見ている。


「落ち着けっ」


 そんなアリサにガリオンが怒鳴りつけてる。まあ良いやあっちは任せておこう。


††

遥かな男の娘をお読み頂きありがとうございます。

作者のテンションアップのためにも、どうぞよろしくご声援のほどお願い致します。

m(_ _)m

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