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《05-1》

5話 僕、街へ行く

††


 アリサが安堵の顔になっている。


 ヴェンテゴを倒せたからだろうか、それとも仲間がまだ生きていたからかな。ヴェンテゴは頭をふっ飛ばしたんだから、アイツが再び起き上がってくるなんてことは、まずありえない。


 ガリオンは失った右脚と、腹に刺さっている背槍を抜いて、止血を施した。回復薬を飲んでいるので、体中の傷はいずれ治るだろうとのこと。


 なかなか便利な物がある。そうまるでゲームの中のポーションみたいに。そうだ、やっぱ此処は異世界に違いない。魔法で身体を強化したり、武器を魔力で強化したり、そのうえ身体を治すポーションまであるんだから、絶対ゲーム、いや異世界だ。


 それはともかく、怪我人の治療と保護が終わった。残りの9人は、残念ながら治療以前の問題なのでどうしようもない。ヴェンテゴの腹を切り裂いても、肉片が出てくるだけだしね。ゲームなら復活の薬とか秘薬が有るんだけど、そこまでは完備されてないみたいだ。


 さて、倒したヴェンテゴの後始末だけど、少なくともこのヴェンテゴは喰いたくないなぁ、彼等に後を任せて、僕はブルホワイト・ベアーのお肉んするかな、などと考えているとアリサが近づいてくる。


「助けてくれてありがとう。」


 こうして近くで見ると、可愛いと云うよりも引き締まった美人ッて感じかな。


「気まぐれ、気にしない。」


 僕は正直に返した。


 もともと助けるきなんて全く無かったしね。弱肉強食の山に、危険を承知でやってきたのだ。全滅したところでそれは自己責任だ。だけど、仲間をかばう姿を見て、仲間が殺されて憤る姿を見て、ちょっと心が動かされた、それだけのことなんだ。と言いたいけど、上手く言えない。


 やっぱどうもまだ言葉を話すのは難しい。単語はわかるし、アリサの言葉も解るんだけど、しゃべり方というか、発音がいまいちうまくいかない。


 ちなみにメトゥ・シとは日本語で話してる。あいつは基本的に言語を介さず、テレパシーみたいな思念で話してくるから、こっちの言語は関係ないみたいだ。


「でも……貴女、何者なの?」


「ん?」


 アリサの質問に僕はちょっと首を傾げた。


 何者と云われても困るからだ。そもそも21世紀の日本に住んでて病気になって冷凍睡眠にはいって、目覚めたら22世紀だった。


 でも多分ここは僕が棲んでいた地球とは違う場所、異世界だ。そのあと精霊族に拾ってもらって、山で暮らしていた。だから僕はキミたちとは違う世界の人間という種族なんだよ。そんなことを言っても何処まで信じることやら。それ以前にそこまで細かく話せない。


 僕はここが異世界だって結論を出してるけど、ネクスは否定する。否定されてもここが地球だって完全に立証できてないし、そもそもなんで倭人やらドワーフやら居るのさ。


 仮に此処が地球で、彼等が宇宙人、なんて事も考えたけど、他の星からやって来る程の科学力があるなら、何でこんなファンタジーみたいなことしてんだ、と突っ込みたくなる。


 そりゃ武器はファンタジーとちょっと違って、なんか科学技術が応用されているようにも見えるけど、宇宙人なら宇宙人らしく、もっと素晴らしい科学技術をだね、と説教したくなる。


 プ●デターだって、地球にはない未知の科学力を使って人間を狩っていたしね。

 

 100歩譲って、彼等だって地球には存在しない魔力を使って、機械と魔力を合わせた特殊な武器を使ってる、と考えるとやっぱ宇宙人なのかなぁ。どっかに宇宙船を隠してるのかな、やっぱ街にあるのかな。


「レイ、この山、棲んでる。」


 とりあえず名前と所在証明、山に棲んでることも名前も自己申告だから証明にはならないけど、とりあえず申告だ。


「レイというのね。でも、この山に棲んでるってほんとなの?」


 アリスの問いに僕はコクリと頷く。


 まあ魔の山とかモンスターの巣なんて呼んでるんだから、ここに棲んでるとか言ったら、普通信じられないよね。でも経緯を語るのはヤだ。




「アリサ、その子は?」


 体力が戻ったのか、頭やら腹やらに包帯を巻いて、両手斧を杖にしたガリオンがやってきた。


 回復薬って凄いな。さっきまで重症だったのに、もう治ったのかな。ゲームでも回復薬さえ飲めば、瀕死の状態が一気に、だもんね。でもガリオンの脚は失われたままだ。やっぱそこまで便利じゃないのか。


「ヴェンテゴを惹きつけてくたの、この子が居なかったら私は喰われてた。彼女は私達の命の恩人よ。」


 アリサが言うと、ガリオンが驚いたような顔をした。


 てか、彼女?


「こんな小さな女の子が……」


 小さい云うな。ちょっとムカつくぞ。


 そりゃね、アリサとも20センチ近く違うし、ガリオンとも40センチは違うからね、あんた達から見れば子供にも見えるだろうさ。


 で、ちょっとまて、今なんつった。女の子?いやいやいやいや、僕は男の子だから、なんなら見せようか?


 まあご立派とは行かないけど、それなりのがついてるからって、アリサの前でやったらセクハラだな。


 確かに可愛らしい顔してるしね、髪の毛も切ってないから長いしね、傍目には女の子でしょうよ。でもね、しっかりついてるから。ほら胸だってぺったんこでしょ。


 といって胸を張ってみるが、なぜかアリサが残念そうな顔をして、どこか哀れみのような視線を感じるのですが、貧乳ちゃうからぁ!


「アリサがいうからには本当のことだろう、レイといったね、ありがとう。感謝するよ。」


「あ、いや。」


 ガリオンも胸をみて、ちょっと苦笑してる。おぃぃ!


「とにかくお礼を云うわ。ありがとう。」


 いえいえ、どう致しまして。


 なんだか男の子だぞと自己主張するのが面倒になってきた。どうせこれでお別れだし。


 さっさと立ち去るか。ヴェンテゴを倒したのは彼等、というかアリサだし、僕はちょっと手伝っただけ、メトゥ・シに見つかる前にさっさと帰ってビャクと夕食にし……

 



 あ、あらららあ。



 ちっとまずいかも~~。


 僕はちょっと顔色を変えて硬直した。


「どうしたの、レイ。」


 アリサが僕が硬直して、汗を滴らせているのを見て、心配そうに覗きこんだ。


「……見つかった。」


 気配が近づいてくるんだ。ちょっとまずいことになるかも。明らかに此処に向かってきてる。

 

「なに、どうしたの?」


 僕の言葉にアリサは不安な顔をする。まだ何か来るのかと、どこか怯えた風でもある。ガリオンはそれと察したのか、両手斧を杖にしているけど、闘気が静かに膨らんでいく。


††

明日は「5話 僕、街へ行く」をラストまで(全7回)お送りします。


遥かな男の娘をお読み頂きありがとうございます。

作者のテンションアップのためにも、どうぞよろしくご声援のほどお願い致します。

m(_ _)m

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