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遙かな男の娘 ~目覚めた僕は此処でも男の娘でした~  作者: 無職の狸
第三夜 冒険者と暴虐の破竜ヴェンテゴ
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《03-5》

冒険者達は四苦八苦しながら、わりと余裕こいて厄災の黒蜘蛛を撃破、しかし……


《03-5》

††


 ヤウシケブの胸板にドリル機槍が突き刺さった。回転するドリル機槍が胸板を引き裂きながら埋没していき、蒼い体液を巻き上げていく。

 

「ZYAAAAHHHH!!!」


 あ、痛みで気がついたのかな、ジタバタと暴れてる。起き上がろうと藻掻いてるけど、今度はミルルが躍りかかり、赤く輝く剣が次々に足を斬り飛ばていく。いいコンビネーションだ。


 というかやりたい放題だね。


「ポロありがとよ~、さあ化け蜘蛛、前菜は終わりだぁ!」


 次弾を装填を終了し終えたアリサが機械弩弓マシンボウガンを構えると、今度はアルラムとミルルがちゃんと下がった。


 脚を半分程も飛ばされ、胸や腹から蒼い体液を垂れ流す災厄の黒蜘蛛(ヤウシケブ)は、ノソリと起き上がろうとする。


 あれだけやられてまだ起きるんだから、ほんとこいつしぶとい。だから戦いたく無いし、それにこいつ倒しても食えないしね。僕はゴメンだ。


「メインディッシュは徹甲爆裂弾エクスプロージョンブレッドだよ、あの世に行く味だ、たらふく喰らいやがれぇっ!」


 機械弩弓マシンボウガンが火を噴くと、アリサが半端じゃないキックバックを受けて、積雪を削りながら背後へ下がった。機械弩弓マシンボウガンの先端が跳ね上がり、身体がのけぞり返り、踏ん張る脚がズブズブと雪の中を後ろに戻される。


 凄い反動だな。


 見た目にもやたらと大きな弾丸が腹に突き刺ささり、派手な爆発と共に大量の蒼い体液と内臓をまき散らした。


「すげえ、なんだありゃ!」

 

 爆炎が収まると、ヤウシケブの腹が跡形もなく砕け散っていた。


 僕は思わず声を出してしまい、慌てて口を塞いだ。もっともこの高さでこの喧騒だ、聞こえるはずもないのだが。


「もういっちょぉおお!」


 腹を失っても、それでも尚悶蠢くヤウシケブにむけ、アリサが体勢を立て直し、再びトリガーを絞った。


 機械弩弓マシンボウガンが火を噴き、悶え苦しむヤウシケブの頭に徹甲爆裂弾が直撃した。




 僕の眼下には厄災の黒蜘蛛(ヤウシケブ)が、残骸となってくたばっていた。腹も頭も粉々にされ、太い足だけが奇妙なオブジェとなって残っているのが何とも面白い。


「へぇ~ヤウシケブを倒したか。」


 僕は嘆息とともに、ボソリと呟いた。


 あのヤウシケブは中腹では高レベルなモンスターだ。僕でもあまり積極的は戦いたくないモンスターを、危なげだったけど、割りと余裕をもって倒した感じかな。


 雪の中という悪条件では、よくやったほうだろう。


 でもどうなんだろう。彼等の狙いがヴェンテゴなら、終わった後あの武器は僕のものになる可能性が高いな。


 あの武器には興味がある。


 回転するドリルの様な長槍。赤く輝く刀身を持つ剣。当たった瞬間に火焔を上げて爆発する衝撃破壊棍、そして爆発する弾を射出する、ロケットランチャーを彷彿とさせる弩弓。


 僕はますます彼等の持つ武器に興味を唆られた。特に気になるのが、あの女の人、アリサの持つ武器だ。


 茶色い毛に覆われた耳と尻尾を持つ倭人。まるで獣人としか思えないのに、なんであんな武器を使えるんだろうな。やっぱここって異世界じゃなくて………未来なの?


 メトゥ・シは街には多くのヒト族が住んでいるといってた。もしかしたら、僕がまだ見ぬ未来の文明を、いや魔法も使っているから、魔法と機械の先進文明があるのかな。面白そうだ。


 僕はちょっと街に興味が出てきた。



 ◇ ◇



 観察というのは、最初は面白いのだけどそれはちょっとした目新しさからくるもので、慣れてくると非常に退屈になってくる。

 

 特に戦闘になると、全く詰まらない。あえて言うならば、他人がしているゲームを見ているようなもの。ゲームをしている者が自分よりスキルが高く上手ならば、見るべきものもあるし、いらつきもしない。だがそうでない場合は、自分ならこうする、ああする、なんでこれが出来ないと、イライラが募ってくる。



 眼下で終わったヤウシケブと冒険者の戦いは、それなりに武器の物珍しさも手伝い、楽しめるものがあった。


 しかしどうやら彼等は今の一戦で、かなり消耗しているように見える。各々バッグから携帯食料や水を出し、体力を補給し始めた。


 動物の皮製の水筒にはいった飲料水をがぶ飲みしていた、アルラムというドワーフ族の男が喉の渇きを癒やしたところで、はぁっと大きく溜息をついた。


「そろそろ合流するか?」

「そうね、日も暮れてきたし、一度合流かな。」


 アルラムの意見にアリサが賛成し、ミルルとポロを見ると、彼等も頷いた。成る程、今日は此処で手仕舞いするのかな。


 確かに陽も大分傾き始めている。この後は気温もどんどん下がってくるだろう。此処はモンスターが多すぎる。こんな場所で夜を過ごすなど、自殺行為だしね。

 

 ちょうど彼等が腰を上げた時だ、不意に空に光が灯った。


 なんだあれ?


 空高くの登っていく光の玉。


 それはどこか照明弾を思い起こさせる。


 いったいあれは何なのか、そう思っていると眼下で動きがあった。

「赤の合図だ。でたぞっ!」

「ああ、急いで合流だっ!」


 アリサ達が慌てて走り始めた。


 合流、ということは集まるってことか。でもどうしたのか、彼等の顔には緊張が走っている。何をいったい慌てているのか。


 そして僕は気がついた。アイツの気配に。


 やたらと大きな気配、この辺りでこれだけ大きな気配となれば恐らく暴虐の破龍(ヴェンテゴ)だろう。


 そういえば彼等の目的はあいつの討伐だったな。さっきの光の玉はヴェンテゴが現れたという合図か。


††

少し寝てから回転寿司いったら元気になりました(笑)

銚子丸とかいうところですが、思いの外美味しかった♪


何ヶ月ぶりだろ……

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