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遙かな男の娘 ~目覚めた僕は此処でも男の娘でした~  作者: 無職の狸
第三夜 冒険者と暴虐の破竜ヴェンテゴ
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《03-3》

ちょっと厄介なモンスターがアリサ達を襲います。

††


 雪の積もった森が動いた。木々がざわめき積もった雪が雪崩のように落ちてくる。


「出たか!」


 アルラムが叫んだ。


 巨大な何かが動き出し、4人の前にその姿を現した。


「ヴェンテゴかぁ!」


 ポロが武装を構え、その目の前に黒い毛に覆われた巨大な8つの足が現れた。









 ちょっと厄介なモンスター。


《名前: ヤウシケブ 種族: 黒蜘蛛種 Lv.87

 生命力: 15,112 魔力: 1,121》


 厄災の黒蜘蛛(ヤウシケブ)と呼ばれる、巨大蜘蛛だ。麓の方にはこいつの幼生とでもいうのか、小さいのが彷徨いてるけど、こいつは成長しきったやつだ。


 体長は8メートル以上あるし、しぶといし、何より倒しても喰えるところ無いし!


 ほんと厄介だよ。


 眼下で彼等の声が聞こえてくる。


「はっはー、モンスターの巣とはよく言ったな。」


 あいつなんか喜んでる。


 哄笑し怒鳴ったのは背の低い銀色の全身鎧フルプレートアーマーに身を包んだドワーフ、アルラムだ。ヘルムから見える厳つい顔は、鋭い眼光を光らせ、横に広い鷲鼻に、口の周りを黒い髭で包まれていた。


 ドワーフらしく他の者と比較しても、頭一つ以上小さい。たぶん僕と同じくらいの背丈だろう。ん、チビとか言うな。


 しかしチビだけど僕の倍以上の横幅があるから、デブだな。あの背丈と横に幅広く逞しいガタイがドワーフ族の特徴だとか。


《名前: アルラム・レブナント

 種族: ドワーフ 年齢: 81 性別: 男

 職業: 準特級機槍操士 LV.83

 身長: 151センチ 体重: 95キロ

 生命力: 9,322 魔力: 989》

 

 アルラムもそれなリに高レベルだ。


 ドワーフはレベルに対して生命力が高い、それに人間の倍程も生きる長命種だ。


 アルラムは、厄災の黒蜘蛛(ヤウシケブ)を睨みつけてる。彼の体格の比較してバランスが悪くさえ思える大きな盾と、背負っていた三角錐のような短槍を構えている。


「こいつあ、まさに厄災クラスだな。気をつけろよ~。」


 ポロと呼ばれていた倭人の男が、ギラギラと輝く巨大な棘の生えた棍棒みたいなのを構えている。


「一番槍いくぜぇ。ドリル機槍、起動!」


 ほえ、長さ50センチ位の短槍が魔力を帯びたかと思うと、いきなり200センチ位まで一気に伸びた。なんか凄い。しかも横に幾つかの短い刃が飛び出して回転し始めた~。


 何じゃありゃ!まさにドリルだな~。


「SYAAAAAHHHHHH!!!!」


「なんのぉぉぉっ!!」


 厄災の黒蜘蛛(ヤウシケブ)の毛に覆われた太い前足が振り上がり、ドワーフに向かって叩きつけられるが、ドワーフは銀色に光る盾で受け止めた。この盾も魔晶石がついてて、魔力を帯びている。そのせいかヤウシケブの太い足がいとも簡単に弾き飛ばされた。


 すごいな。あのヤウシケブはこのエリアではなかなか手強い奴なんだけどね。


 基本的に僕は蜘蛛とは戦わない。だって美味しくないから。第一気味が悪いっしょ。いくらサバイバルでも、蜘蛛なんて気色悪くて食べたくないよっ。


 ドワーフは、前足を弾き飛ばされてバランスを崩した《ヤウシケブ》に向かって、身長に見合わぬ長さの三角錐の回転する長槍を突き付け雪原を突進した。


「JYAAA!」


 ヤウシケブが体勢を持ち直して構えを取るには、ドワーフとの距離は近すぎた。ヤウシケブに構える間を与えず、ドワーフが突っ込んだ。


「はっはー、自慢のドリル機槍だ、悲鳴が上がるほどいい味してるだろう!」


 ヤウシケブの胴体に長槍をつきたてると、蒼い体液を飛び散らせながら、ズブズブと腹を突き進んでいく。


「SHAAAAHHHH!!」


 ヤウシケブが大口を開け、牙を剥き出して威嚇し、黒い脚が蠢いた。


 ドワーフはヤウシケブのリアクションに、髭面の口を開き大声で笑っている。もしかしてこのオッサンはサディストか?あんまり大口開けてっと体液が入るぞ。


 しかしあの武器も面白い。ドリル機槍とか言ってたな。槍が回転するとか、どんな仕掛けなんだ?魔力を動力にしてるのは想像つくけど、あんな変形するとか、機械でも仕掛けてあるのかな、なんか面白い~。


《解析しますか?》


「いや今はいい。」


 ネクスが聞いてくるのをあっさり却下した。どうせ小難しいことを延々と説明するんだから、今は聞きたくない。あとで暇な時にでも教えてくれ。


 そんな説明よりも初めてみる武器とその動きに、僕は彼等の闘いに夢中になっていたんだから。


 ドリルの槍で腹に風穴を開けられてるけど、だけどヤウシケブもただ黙ってるわけじゃない。僕が見入っていると、ヤウシケブの太い後足が振り上がり、ドワーフに向かって振り下ろされた。


「むうっ!」


 ドワーフが反応し盾で防ぐのかと思ったら、いつの間にか傍に控えていた、長剣を構えた女剣士が素早く入り込み、下から剣を振り上げた。


 刀身が赤く光り輝く長剣、振り下ろされた大木ほどもある黒い脚が、一刀の元に叩き切られた。


《名前: ミルル・ロズウェル

 種族: 倭人 年齢: 19 性別: 女

 職業: 一級魔刀剣操士 LV.81

 身長: 161センチ 体重: 55キロ

 生命力: 8,256 魔力: 2,112》


 魔刀剣操士ね、この職業って割りと多い感じ。でも一級は初めて見たかも。普通は三級とか四級だからねぇ。


 でもさ、この刀身が赤く輝いてるなんて、まるでどっかの宇宙活劇のレーザーサーベルって感じなんだよな。


 フォースよっ!なんちって。


「SHAGYAAAAHHHHHH!!」


 厄災の黒蜘蛛(ヤウシケブ)の前足が吹っ飛び、大量の蒼い体液がばらまかれてる。斬られた足が雪の上に転がり、また蒼く染めていった。


 僕は堪らずゾクゾクとした。こいつら強いっ!


 あの蒼い体液をみれば、あのヤウシケブが並じゃないのは、一目瞭然だ。腹に穴を開けたり、前足を叩き切ったりと、わりと気軽にやっているけど、あれは彼等が実力者だから出来ること。普通の冒険者にはまず無理だ。


 高レベルのモンスター種は蒼い血を流す。何故蒼なのかは知らない。でもメトゥ・シに云わせると、蒼い血のモンスターには、注意が必要らしい。このまま終わるのかな。


「ふん。」


 長剣の女──ミルルが鼻から荒い息を吐き出し、剣を振って血を払うと、ドワーフに顔を向けてニヤニヤと笑っている。まくれ上がったマントの下から、猫のような黒くしなやかな尻尾が飛び出て、得意げに揺れている。

 

 その妙な動きはちょっと唆られるな。握ってみたくなるぞ。

 

「お、おう、ミルル、助かったぜ。」


「へっへ~、貸し1つだよ、アルラム。」


 ミルルの尻尾がますます揺らめいた。


「テメエらどいてろぉ、いくぞぉぉっ!」


 少し離れた場所から女の声が響いた。


††

あと1話、更新予定です。


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