《02-4》
やっと自宅です(笑)
2話、本日の4回目の更新です。
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僕が暮らし始めたこの山、"アルス山脈"の東には町がある。歩いて5日程のところで、町には"ヒト族"という種族が住んでいる。
《東北東方向 直線126キロメートルに街と思われる、人の集落を発見、人口総数10万人前後》
10万人!なにそれ街っていうより都会じゃないの?
それに126キロって遠いようで近くない?自動車とかなら直ぐの距離っぽいんだけど。
《人間、または車両が通行可能な箇所を辿った場合、凡そ229キロメートルです。》
そですか。先にそれを言って欲しいなぁ。うん、自動車で4-5時間、東京から名古屋ぐらいかな。ちょっと遠いです。でもネクスなんで解るの。
《衛星に搭載された超高感度監視システムより周辺を観察、経路を検索しました。》
ああ、そうだったネクスの本体は宇宙空間の衛星に積まれてるんだっけ。なんか結構大きいとか発熱が凄いとかで、衛星軌道はちょうどよく冷えて最高の環境らしい……ほんとかよ?
超高効率太陽熱発電装置と太陽エネルギーにより恒久的に稼働するプラズマジャット自動姿勢制御エンジンを搭載し、太陽が無くなるまでエネルギーは供給可能だし、姿勢制御も可能。
メンテナンスについても、老朽やデブリにより壊れた箇所は、自立思考型マイクロマシンによる自動修復によって復元される。そのマイクロマシン自体も自己複製タイプで壊れても平気だし、至れり尽くせりの機能を持った、完全メンテナンスフリーの恒久的稼働可能な衛星なんだとか。
はいはい、そりゃ凄いね~~、というしかない。半分以上耳に入ってないし理解できません。22世紀の科学の粋を集めた高性能衛星ってことだね。
いくら説明されたって、普通の中学生の凡才脳みそに意味なんてわからないし、そもそも100年後の先端技術なんて理解不可能だよ。とにかくネクスがずっと動くってことだけ理解した。
《.....YES》
母さん、なんかネクス不服そうなんだけど、僕悪いことしたかな。
それでとメトゥ・シ、話は戻るんだけど
「ヒト族の冒険者って人間のことだよね?」
正確には僕は体内に大量のナノマシンと量子電脳のマンマシンインターフェースを積んでて、軍事用ユニットまで搭載されているから、どっちかというと人間というより軍事用サイボーグみたいなものだから、姿形はともかく、ちょっと人間っていう自信がない。
でもいわゆる普通の人間がいるなら、僕としてはちょっと会ってみたいし、街にも行ってみたいかな。100年後の人間の暮らしを見てみたい。きっと素晴らしい未来都市が有るんじゃないかな。
でも僕の問い掛けにメトゥ・シは首を振った。
「そうだな、レイの云う"人間"というものが、仮にレイと同じ姿を指すならば、我は"否"と言っておこう。」
あら、否定されてしまった。
僕は人間のカテゴリになるのかわからないけど、容姿は人間だと思うよ。だけどヒト族って僕とは違うの?それって人間じゃないってことかな?
「ヒト族とは"倭人族"、"ドワーフ族"、"エルフ族"、少数だが"天空の翼人"の事を呼ぶ。」
ドワーフやエルフって、確かファンタジーな物語に出てくる種族じゃない。それに翼人って、空飛ぶ人のこと?
なんか此処ってますます異世界っぽいなぁ。ほんとに地球なの?
《天体の位置情報から地球の確率は99.99%です!》
いやそう強く言わなくても、疑ってるわけじゃないし、じゃあ、ここは地球のどこなのよ。
《……解析中》
おぃぃぃぃっ
ネクスも地球だと断定してるけど、地形が違うとか地磁気がおかしいとか言って、大分戸惑ってるみたいだ。数億倍の処理能力持ってるくせに、以外につかえねぇ~。
《.......》
あ、落ち込んでる。ていうかネクスも残念コンピュータだよなぁ。僕が睡眠治療用ポッドに入った時点で、活動を止めてスリープ状態に入ったとか言ってて、僕が睡眠治療にはいった2137年以降のデータが無いんだと。
なんで地球とデータ通信してなかったのさ、と抗議したいところだ。通信してれば2137年以降に何が起きたのか解ったのに。
《.......(;_;)》
な、なんだそれ!!うぉぃ、なに量子電脳が顔文字使ってるんだよっ!
ま、まぁ、そのうち解るでしょ。僕にとっては少なくとも100年以上後の世界なんだし、知り合いが居るわけでも無いしね。とりあえず生きるために、ここでの生活を色々勉強しておかないとね。
そのうち慣れてきたら街に行きたいな。
メトゥ・シはこの山に住む精霊族なので、街には出たことはないと言ってた。けどヒト族はよくこの山にやってくるようだ。
「此処にいればいずれ見かけることもあるが、用心して掛かりなさい。」
ん、なんか気になる言い回し。
「危険なの?」
「時と場合によるな。」
なるほどね。
彼等の目的は狩猟。大型の動物も狩るけど、主な対象はモンスター種なのだそうだ。山に来てモンスターを狩り、モンスターの肉や皮、牙や爪などを持ち帰り生活の糧としているらしい。
なるほどね。なんかその辺りは、以前読んでた漫画やら小説なんかに有ったな。
ここでふと疑問。
精霊って山の守り神みたいなものじゃないのだろうか。山の生き物が殺されても平気なのかな。神罰とか落さないの?
「狩人にしても冒険者にしても、彼等は己の生活の糧とするため、己や家族の生命を維持するために、山の生き物を狩っている。彼等が強者であれば、弱者を喰らい己の生命にする。それはこの世界の摂理にほかならない。」
あそですか。つまり弱肉強食ですね。
自分が食べたり、肉や皮を売って生活の糧にするために狩るのはいいのか。
「それに彼等も対価を支払っているからな。」
そういうメトゥ・シの言葉通り、彼等は時にはモンスターに反撃されて、喰われてしまうことも多々有る。なるほどここで生きる事は、自然とのガチな戦いなんだ。
弱き者は死に、強きものだけが生き残る。此処が何処だか解らないけど、少なくとも此処はそういう世界なんだろう。生き残れば勝ち、そこには正義も悪も卑怯もないってことか。
そんなこんなで、僕のサバイバル生活が過ぎていき、僕にとって三度目の雪の季節、冬がきた。
僕はある冒険者達と出会うことになる。
††
2話の残り4回は、週末に更新させていただきます。
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m(_ _)m