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異世界レストランガイド  作者: 巫 夏希
リージア王国編
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閑話 モーニング

 冒険者の朝は早い。先ずは朝飯前ということでモンスターを数匹狩る。そしてそれから得られたアイテムを換金する。


「今回はこんなもんか……まあ、普通かな」


 そう呟きながら早朝のグラン大通りを歩いていた。俺の住むアパートはグラン大通りに面している。けっこう便利だ。

 グラン大通りのアパート、その一室にある郵便受けから封筒を取り出す。宛先はもちろん俺。送った人間は……まあ、いつものあいつだ。情報屋、とでも言えばいいか。

 アパートの部屋に入り一息。

 ベッドに腰掛けて天井を見上げたところで、俺の腹の虫がぐうと鳴った。

 封筒の中身を見る前に、腹ごしらえと行こうか。


「……何かあったかなあ」


 倉庫代わりに使っている部屋を見る。なぜ倉庫代わりかというと、この部屋が一番涼しいからだ。野菜なんか、二日は持つ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。問題はこの状況だ。


「思ったよりこいつは厄介だぞ」


 そう。

 思ったより具材が少なすぎるのだ。これで何をつくれ、と。

 残っているのはウインナー数本と卵、あと食パンが二枚だ。

 野菜が無いのは致し方ない……。今日の帰りにでもどこかで買えれば問題ないのだが。

 仕方ない。ここはあるもので料理をするしか無さそうだ。

 そう考えると、俺は残った具材を持ち調理場へと向かった。




 フライパンに油を引いて、半分に切ったウインナーを焼いていく。直ぐにウインナーの油分が溶けていい香りが部屋に充満する。

 焦げ目がついたあたりでそれに卵を入れる。無論、かき混ぜるのではなく目玉焼きにする。これはあとでやることがあるからな。

 目玉焼きに、適度に塩と胡椒をくわえて、少し焼いていくだけでウインナーエッグの完成だ。ううん、我ながらうまく焼けた。

 それを皿に置いたあとに、パンを半分に切ってそれをそのままフライパンに投入する。香ばしい香りが広がるとともに、ウインナーの油がパンに染み込んでいくのが解る。

 ああ、早く食べたい。早くこれを口にしたいと思うがその気持ちをすんでのところで抑え込み、パンを焼いていく。

 いい感じの焦げ目がついたところで、火を止める。その流れでフライパンを皿の上に設置し、傾ける。そうすると油が塗られたフライパンを滑り落ちるようにパンが皿に落ちていく、という算段。

 焼けたばかりの熱々のパン……はっきり言ってこれだけでもうまそうだが、さらに一工夫。

 パンの上に半分に切っておいたウインナーエッグを入れて、さらにその上に挟む形にしてパンを置いた。完璧だ。

 テーブルにウインナーエッグサンドを入れた皿を置き、一息つく。コップにオレンジジュースを注いで、朝食の完成だ。味付けは塩胡椒だけ。シンプルに仕上げている。朝だからな。あんまりガッツリしたものを食べると胃がもたれる。

 パンを手で掴むと、それを口に放りこんだ。流石に一口では食べられないので適当なところで噛みちぎる。直ぐに口の中にウインナーの肉汁と塩胡椒の味が広がった。ちょっと胡椒を入れすぎたかもしれないが、それは卵の黄身で若干和らいだということにしておこう。

 しかしまあ、自分で作ったものをこう評価していくのはなんだかこそばゆいものがあるが、それでも美味しく出来たものは美味しいのだ。余計なツッコミなどいらない。

 四口ほどでぺろりと平らげ、それをオレンジジュースで胃袋に流し込み、朝食を終える。皿とコップ、それにフライパンなど調理で使った器材を洗って水を切ったあと仕舞う。

 これで今日の朝食は終わり。まあ、こんなもので充分だろう。

 しかしまあ、作るのは時間がかかるのに食べるのはあっという間だ。このラグ、何とかしてもらえないだろうか?

 と、そんなことを考えていた俺は、ふとテーブルに置き忘れていた手紙のことを思い出す。

 そういえばあいつ……どうして手紙なんか寄越したんだ? まあ、ろくな内容じゃないことはなんとなく頷けるが……。

 そして俺は手紙を読み始める。

 読み進めていくうちに――その手紙が特に意味など無いことを理解した。


「クラウドカフェで待っている、ねえ……」


 呟いて、俺は手紙を再びテーブルに置くと一眠りするために、ベッドへと向かった。

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