表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界レストランガイド  作者: 巫 夏希
リージア王国編
17/23

閑話 魔力回復用携帯食料

 魔力回復用携帯食料。

 通称、マジカルキューブ。

 魔力がその中に含まれているパワーアイテムのことを言う。しかしながらこれはなかなかにお高いものでそう簡単に常備していない。


「これは簡単に魔力が回復出来るんだけど……ただし問題があってね」


 ハルが持っているのは小さなキューブだった。その色は緑色で、どちらかといえば美味しそうには見えない。


「魔力のない君が食べても何の意味がないから正直なところあげたくないんだけど……この味を共感してもらいたいし、ひとかけらだけあげよう」


 そう言って、かけらを差し出してきた。緑色のパウダー。

 いやいや、美味しそうに見えないものを俺が食べるなんて……。

 とか思っていたらハルが俺の口にパウダーを押し込んできた……だと……!


「この味を共感して欲しいんだよ。わかるかい? 味を気にしないで効能だけを気にしている、これがマジカルキューブだよ。決して怪しくはない」


 そう言って。

 俺は気づけばそれを舐めていた。




 …………………………。

 なんというか……。

 美味しいとも言えないしまずいとも言えない。強いて言うなら、苔を食べているような感じ。味がしないわけではないんだが、かといって美味しいエキスが入っているわけでもない。

 ぶっちゃけ食べるのが苦痛に感じるレベルだ。今ハルが持っているあのキューブを食べるとどれほどの嫌悪感を抱くことになるのだろうか。


「な、解ったろ?」


 俺はそれに頷く。きっと表情は優れないのだろう。すぐにハルが俺に牛乳を差し出してきた。

 それを一杯。ああ、美味い。やっぱり牛乳って最高だよね。

 ……とそこでふと思った。


「なあ、そういえばそのマジカルキューブとやらって牛乳とか、そういうので味を和らがせることってできないのか?」

「出来たら苦労しないよ。なにせこれを開発した魔法研究所が『なにも一緒に食べないでこのキューブを噛み潰して食べること』って言うんだ。まったく、テストをしたのかどうかも解らないぞ」


 ハルの目がどんどんつり上がっていく。よっぽどこのマジカルキューブに対しての不満が大きいらしい。


「魔力の回復なんてじっくり食事を取って休憩を長く取ればいいんだが、そんな待っていることもできない場面だってあるわけだ。そういうわけで開発されたそれだが……まるで軍事用。味なんて気にしないスタイルだ。せめて味覚のスペシャリストみたいな何かがその研究所にでもいれば話は別だったんだろうが……そうもいかなかったんだろうな」

「ふうん……」


 なんだか世知辛い事情があるんだな、と俺は思った。

 さて。

 出発の時は、近づいている。

 俺は、ほんとうに頑張れるのだろうか。役に立つことは出来るのだろうか。

 そう思いながら、ただそのときを待っていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ