表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

第三話 呪われた魔女

ある晴れた昼下がり。

クーヴァーから王都カレーへと続く道。

ぱかぱかと、二棟のロバが小さな馬車を引いていく。

馬車の御者台では、クラリネ爺さんが手綱をとっている。

そして、馬車の中では、ヴァネッサが瞑想中。

守護霊は、巫女の精神力を消費して具現化する。

精神を鍛える事が具現化時間の延長に繋がるらしい。

「己の心を磨く事が肝心なんじゃ」

「どうせなら、温泉とかで女磨きの方がいいです」

「尻の青い小娘が温泉なんぞ行っても、無い胸がさらに無くなるぞ」

「ぶぅぅ」

世界には、巨人よりももっと強い魔物がごろごろと居るらしい。

呪いの起点に到達するには、それらの強力な魔物との遭遇が避けられない。

そのため、属性のマテリアを集めて、守護霊としての力を強化しなければならない。

……らしいのだが、当の俺には何もすることが無い。

守護霊としては、自然のエネルギーを感じればいいだけだからだ。


俺たちはクーヴァーからさらに南下し、この国の王都、港町カレーを目指している。

予定では、カレーから船に乗って、クラリネ爺さんが水のマテリアを獲得した場所、水の都ヴェニスを目指す。

カレーには温泉が湧きだすので、保養地としての一面もある。もちろん、美味しい食べ物も多く集まる。

ヴァネッサが浮かれている理由は、そういうところにあった。

クラリネ爺さんが用意してくれた馬車には、野宿用のテントやたっぷりの食料、調理道具なども載せている。

最初の数日間の「ガチ野宿」と比べると、まるで極楽のようなキャンプ生活を続けていた。


クーヴァーからカレーまでの中間地点に広がる森に差し掛かった時、地面に大きな木が倒れていた。

クラリネ爺さんが、ロバを操って馬車を止める。

「これは、タクヤにどうにかしてもらうしかないな」

木を一目見て、クラリネ爺さんが俺に声をかけてくる。

幹の太さが一抱えほどはある、一人では動かす事が難しいような大木だ。

「わかった。魔法で何とかしてみるかな~」

頭の中で、魔法のリストを思い浮かべながら、俺が木を調べに行ったとき、森の中から女性の声が聞こえてくる。

「いきなりで悪いんだけど、金目のものは置いてってくれないかなぁ?」

声の主を探すと、森の中から黒い眼帯をつけた女性がでてきた。

年のころは二十前半くらい。こげ茶色の髪を後ろで束ね、手に長い杖を持っている。

「ほう、野盗か。この道で出るとは珍しいな」

「ふふふ、今日開業したばかりなんだ。よろしくね~」

反対側の森から、弓を構えた二人の男が現れる。

「馬車の中に隠れていろ」

クラリネ爺さんが、首を突き出したヴァネッサを馬車に押し込み、愛用の剣を抜き放つ。

男の一人が威嚇のために矢を放つが、クラリネ爺さんが軽々と剣で払いのける。

「相手が悪かったな。クーヴァーの騎士、ドン・クラリネが相手をしてやろう」

「あちゃ~。開店早々大物だね、幸先がいいや」

女盗賊が右目の眼帯を外す。

外した中から現れた彼女の右顔は、どす黒く呪われていた。

右目を中心とした皮膚が黒くただれ、眼窩の中で何かが赤く光っている。

「【火炎(フレイム)】」

彼女が呪文を唱えると、杖の先から火炎放射器のように炎が迸り、馬車の前の地面を焼き焦がす。

暴れるロバを、クラリネ爺さんがなんとかなだめる。

「うちは、アガルタの呪いに打ち勝って、魔法の力を手に入れたのさ」

「魔法か。噂には聞いていたが、魔女を見るのは初めてだのう」

「わたしも、魔法が使えるひとを初めて見ました」

馬車の中のヴァネッサが驚く。

そういえば、俺はほいほい魔法を使ってたけど、誰かが使うのを見たのはこれが初めてだ。

「ふふふ、そうだろう。魔法だぞ~、怖いだろう。有り金を置いてさっさと帰ったほうがいいよ」

「「だが、断る!」」

クラリネ爺さんとヴァネッサが即答する。

魔女は一瞬あっけにとられたが、気を取り直して杖を掲げて呪文を唱えた。

「後悔するなよ?【凍傷(フロストバイト)】」

「【具現化】」

俺は、魔女と馬車の中間地点で具現化した。

そこは魔法の通過点。とばっちりを受けて、狼の氷漬けが出来あがる。

だが、俺は氷属性の守護霊であるので、氷系の魔法は通用しないらしい。

何のダメージも無く、ぱりぱりと音をたてて、体表から氷が剥がれていった。

(これ、炎系の魔法だったらどうなってたんだろう)と思いながら、魔女のほうに向きなおる。

「ということは、その右目の呪いを浄化しちまえば良いんだな」

具現化さえすれば、俺の声は他者に聞こえる。

「まさか、守護霊?やめろ~」

あわてて逃げようとする魔女を、俺は前足で軽くつんのめさせて転ばせ、前足で軽く押さえつける。

傍目には、虫でじゃれて遊んでいる猫のようだ。

男2人が矢を撃ってくるが、慌てている上に、彼らは弓に慣れていないらしく、ほとんど矢は命中しないし、当たっても俺の毛皮に阻まれる。

しばらくごたごたとしたが、盗賊たちは諦めて降伏してくれた。


「さて、盗賊家業を開店したわけを言ってもらおうか。

初犯のようだし、理由次第では大目に見る。それに、力にもなるぞ」

クラリネ爺さんが腕組みをしながら魔女たちを睨みつける。

そういえば、まだクーヴァー領なので爺さんが司法権を持っているんだった。

近くで見ると、後から出てきた男二人は、魔女よりも若く、片方は少年といっても良い年齢。

爺さんの勢いに負け、彼らはぽつぽつと身の上を話し出した。

「うちら姉弟は、ここから2ヶ月くらい東のほうにある村に住んでいたんだ。

だけど、ある日アガルタがやってきて、呪いが落ちた」

運悪く、落ちた呪いは彼らの住む家を直撃。

彼らの父親は、呪いを全身に浴びて即死。

母親と魔女は呪いの飛沫が体にかかり、昏倒し、半死半生となった。

二人の弟たちが、なんとか母親と魔女を背負って家から逃げ出したものの、村人たちは呪われた彼女たちを村に留めておくことを許さず、一家は村から追放された。

弟たちは、日雇い労働を繰り返し、各地を転々としながら二人の看病を続けた。

そして1か月前、弟たちの必死の看病のかいもあり、姉は意識を取り戻した。

魔女は、その時から、魔法が使えるようになったそうだ。

だが、先に目を覚ました母親は、心が壊れ、わけのわからない事を口走るようになっていた。

「母さんを医者に見せるのにも、金が要る。

だから、うちらは野盗をすることにしたんだ」

「医者に見せても、呪いの症状を治すことはできんだろう。

幸い、駆け出しだがこいつは巫女だ。守護霊の力でなんとかできるかもしれん」

クラリネ爺さんがヴァネッサを顎で指す。

「本当か!?母さんが治せるのか?」

魔女は、必死にクラリネ爺さんにすがりつく。

「あぁ。守護霊の浄化能力は魔物の毒を消せる。そういった症状でも試してみる価値はある」

「うちはクレア、こっちが弟のイッケンとニケンだ。よろしくな。

お袋のところに案内するよ。ニケン、馬車みはっとけ」

「おうよ、姉貴。巫女様、お袋をたのんます」

ニケンがヴァネッサに深々と頭を下げた。


彼らに案内されて、森を抜けて、住処としている洞窟に向かう。

ところどころに狭い獣道があり、道を知りつくした人間でないと辿り着けそうにない。

「よくこんな所知っていたな」

「魔法で手を入れて、通れるようにしたのさ」

山裾にうがたれた洞窟は、岸壁をくりぬいていったように見え、多少の不自然さを感じた。

この洞窟そのものも、クレアの魔法で作ったものかもしれない。

洞窟の奥からは酷い異臭が漂ってくる。

「すまないね。どうしても垂れ流しになっちゃって」

クレアが申し訳なさそうに謝る。

「呪いのせいだ、しょうがない」「そうですよ」

クレアとイッケンが洞窟の中に入っていき、彼らの母親を抱き上げて連れてきた。

彼女は、皮膚にハリが無く、ところどころに黒い染みがあり、80か90歳くらいに見える。

クレアの年齢は、どう見ても20代。

連れてこられた老女は、母親というより祖母と言った方がしっくりきて、俺たちは顔を見合わせる。

「あぁ、わかるよ。母さんはまだ40過ぎなんだ。呪いがいろいろともってっちまったのさ」

クレアはゆっくりと母親の頬を撫でる。


「タクヤさんを具現化しますね」

ヴァネッサが一歩前に出て呪文を唱えようとした瞬間。

「うひゃヒャひゃ」

突然、老女が人間とは思えない叫び声を上げ始めた。

ごりごりという不快な音を立てながら、老女の口が大きく開き、そこから黒い蛸のような魔物が這いずり出てくる。

その魔物は、烏賊のような、1mほどの触腕を8本持ち、頭の部分は蛸のように丸い。

蛸の頭のど真ん中に、鶏卵大の黄色く濁った目がひとつついている。

「コノからだ、クサッタ、お前、カラダよこせ」

黒い蛸が体を震わせながら人間の言葉で喋った。

蛸が抜け出た後の老女の肉体は、皮だけと言っていいほどの様相で、力なく地面に横たわっている。

「え!?か、母さん……」

呆然とするクレアを尻目に、蛸の触腕が長くのびてヴァネッサを絡め取る。

「キャァッ」

「フンッ」

気合い一閃、クラリネ爺さんの大剣が、ヴァネッサに絡みつく黒い蛸の腕を切り落とす。

「ギャァッ!」

腕を切り落とされた黒い蛸は、残った腕を素早く動かして、何処かに逃げ去って行った。


「あんなのを放っておくわけにはいかん。追うぞ!」

「でも、クラリネさん、クレアさんがっ」

苦しげにうめき声を上げながら、クレアが右目を押さえて座り込む。

彼女の指の隙間から血がぽたぽたと滴り落ちる。

「呪いが魔物と共鳴して活性化したか」

「は、早く呪いを浄化しないと……」

ヴァネッサが彼女に近寄り、介抱しようとする。

「いらないっ!」

クレアはヴァネッサの手を乱暴に振りほどく。

「うちたちは、母さんの皮をかぶったあの魔物に騙されていたんだ。いままで、ずっと……」

血と涙を流しながら、魔女が語る。

「消さないでくれ。

この呪いを失ったら、うちは、あの魔物を倒せない」

「でも、このままじゃ、目が見えなくなっちゃいますよっ」

「構わない、目ん玉の一つくらい、呪いにくれてやる。

アイツをぶっ殺したい!」

魔女の叫びにこたえるように、彼女の血と涙を注がれた地面が隆起し始め、人間の姿となった。

それは、血の色をした、いびつな人形。

だが、俺には、人形にだぶるように、黒目と黒髪の10歳くらいの少女が見える。

少女を見ていると、懐かしいような、物悲しいような思いがあふれてくる。

俺は、何か大事な事を忘れてしまっている。

「おネエさん、カナしいの?」

少女は、クレアに問いかける。

「悲しい。でも、それ以上に、憎い」

「憎み続けるのはツライよ。それでも、いいの?」

「構わない。うちは、呪いを憎む」

少女は、ゆっくりと手を上に上げる。

その小さな手には、いつの間にか赤く輝くナイフが握られていた。

「あなたに、呪いを」

少女は、そのナイフをクレアの右目に突き立てた。

ナイフから迸る呪いが、クレアと少女の全身を包む。

それは、人の歪んだ心から産まれた、世界の法則を歪める力。

クレアと少女の全身が、クレアの右目から膨れあがった黒い呪いに包まれていく。

「クレアさんっ!」

「近寄るな、お前まで呪われるぞ」

駆け寄ろうとするヴァネッサをクラリネ爺さんが押しとどめる。

俺は霊体のまま爺さんの体をすり抜け、彼女たちに近寄ってクレアの身体に触れる。

呪いが、俺の身体も包んで行く。

漆黒で覆われた世界の中に、クレアと少女と、俺の3人だけが居る。

呪いが、少女の思いを伝えてくる。

身体を焼かれる痛み、家族を奪われる哀しみ。

かつて、少女は、自分と家族を殺した世界を憎んだ。

その憎しみが呪いとなり、少女自身を今も蝕んでいる。

「クレア、呪いに負けるな!」

俺は呪いの中に手を突っ込んで、手探りでクレアの手を掴む。

そして、もう片方の手で少女の手を握る。

「もう、憎まなくても良いんだ。彼女と俺が引き継ぐから」

彼女たちが俺の手を握り返した瞬間、俺たちを包む呪いは急速にしぼんでいった。

呪いの中からから出たとき、少女の姿は無かった。

「アリガとう」

少女の声だけが残り、そして消えていった。


息を荒げながら立ち上ったクレアの顔には、もう、呪いの黒い爛れは無かった。

だが、呪いの存在を示すように、右の瞳が赤い色をしている。

「はぁはぁ、ありがとよ、あんたのおかげで助かったよ」

クレアが俺の方を見ながら言う。

「姉貴、大丈夫か?」

「イッケン、うちは大丈夫だ」

「良かった、姉貴まで死んじゃったら、俺……」

「アホ抜かせ。

あんたら、迷惑ついでに、あのタコをぶっ倒すのを手伝ってくれないか?」

イッケンの頭をドツいてから、クレアが俺たちに笑いかける。

「でも、眼はもう大丈夫ですか?また、共鳴したら」

ヴァネッサがクレアを心配して問いかける。

「もう大丈夫だ。この呪いは、もううちの一部になったんだよ」

「だな。あの子は、もうどっかに行っちゃったし」

俺も横でうなずく。

「あの子?」

ヴァネッサが首をかしげる。

どうも、あの女の子は俺とクレアにしか見えていなかったようだ。

「ま、何れにせよ、あんな魔物を放置するわけにはいかん。

だが、何処にいったのかわかるのか?」

「この目はいろいろ見えるようになったのさ。あんたの姿もな」

クレアが俺の方を向きながら、右目でヘタなウィンクをして答えた。


クレアの指示に従って、俺たちは魔物の痕跡を追って山の中を進む。

危険があるので、イッケンはニケンのところに説明がてら退避させた。

「おっし、居た。今度は厄介なものに取りついたな」

クレアが指さす先には、2mほどの熊が一頭。

目を赤くギラギラと輝かせながら、鹿を豪快に丸かじりしている。

「さて、行くか」

クラリネ爺さんが、ハイキングに行くような気楽さで立ち上がる。

「小娘、具現化しておけよ。変な呪いがあると困るからな」

そう言い残し、爺さんは大剣を構えながら熊に向かって歩いて行った。

爺さんの接近に気が付いた熊が食事を止めて、立ち上がって戦闘態勢を取る。

体長3mを超え、魔法も使える銀狼の俺から見ても、結構やばそうな動物に見える。

「タクヤ、お前はそこで見てろ。お前が手を出すと、呪いを浄化しちまうだろ?」

具現化し、加勢に行こうと踏み出した時、爺さんに制止された。

その隙をついて、熊の右腕が爺さんに襲いかかる。

爺さんは大剣を斜めにかざし、熊の攻撃の勢いを剣の刃で受け流す。

熊の腕が浅く切り裂かれ、鮮血が振り撒かれていく。

熊の脇腹に爺さんの蹴りが入り、双方の距離が離れる。

「クレア!魔法」

「【氷の(アイス・アロー)】」

魔法で作られた氷の矢が熊の胸板に突き刺さり、衝撃で熊がバランスを崩す。

そこへ、爺さんの追撃が決まる。大剣が熊の毛皮を切り裂き、鮮血があふれ出す。

熊は攻撃をすると大剣で受け流され、攻撃をすればするほど傷が酷くなっていく。

「魔物に憑かれるとは、運が無かったな」

爺さんの地面すれすれの一撃が熊の脚を半分ほど切り裂き、バランスを崩した熊が倒れ込んだ。

そして、起き上がろうともがく熊の頸動脈を一閃で断ち切る。

「【凍傷(フロストバイト)】」

クレアの魔法により、熊の全身が凍結していく。

動きを封じられた熊の口の中から、黒い蛸があわてたように這いずりだしてくる。

完全に蛸が姿を現したところで、爺さんが蛸を地面に串刺しにした。

「ぐぎゅ、ググゥ」

地面にへばりついた蛸は、残された腕を使って剣を引き抜こうともがく。

「あとは好きにしろ」

爺さんは魔物を串刺しにした剣を残したまま、数歩後ろに下がる。

「ありがと、騎士様」

クレアは、爺さんに下手なウィンクをすると、呪文を唱え始める。

「【業火(ヘルファイア)】」

呪文で産み出された灼熱の炎が、黒い蛸を燃やしていく。

魔法の炎に包まれ、蛸は消し炭となって、燃え尽きた。

「母さん、仇は取ったよ……」

地面に崩れ落ち、泣き始めたクレアにヴァネッサが近寄って背中をさする。

「あれ……ワシの剣は?」

出番の無かった俺は、手持無沙汰だったので、剣ごと燃やされて呆然としている爺さんを、肉球で慰めた。


「では、改めて呪いを浄化します」

落ち着いたクレアを前に、ヴァネッサが宣言する。

「う~ん、それはちょっと待って欲しいな。あんたらにまだ借りを返して無いだろ?」

「借りなんて思わなくても良いですよ。これが仕事みたいなものですし」

天使の微笑みでヴァネッサが答える。

「それに……」

「それに?」

「どうやって浄化するの?」

後ずさりしながら、クレアが恐る恐る尋ねる。

「それは、タクヤさんに狼になってもらって、クレアさんの目玉に触れるんですよ」

「嫌だ!」

ヴァネッサは、クレアの弟のイッケンとニケンにも手伝って貰って、逃げるクレアを捕獲。

彼女をはがいじめにして、眼を強引に見開かせる。

クラリネ爺さんは、自分は騎士だから女性に手は出せん と変な言い訳で作業からは逃げていた。

楽しそうに、彼らの作業を腕組みをしながら見つめる。

肉球の部分で良いんじゃないか?と爺さんが言うまで、みんなで爪を目玉にぶち込もうとしていた。

なんとか、俺の肉球が目玉に触れた。

まるで、拷問のような光景。だが、呪いは浄化出来ず。

「たぶん、この子はもう、うちと同化してるんだと思う。

だから暴走はしないけど、浄化も出来ないんだろうな」

眼を真っ赤に充血させながらクレアが語る。

クレアにぶんなぐられたイッケンとニケンが地面に転がる。


「はふぅ。打つ手なしですか」

「まぁ、そんなところだと思っていたがな。

魔女ではないが、同じような事例でダメだったし」

「解ってたなら、先に言ってよぉ」

クレアが爺さんをうらみがましく見つめる。

「ま、この子にも手伝って貰ったからね。借りはかえしておかないとさ」

ずっと泣いていたクレアが、初めて明るく笑った。

こうして、魔女クレアが旅の仲間に加わる事になった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ