第三話 呪われた魔女
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ある晴れた昼下がり。
クーヴァーから王都カレーへと続く道。
ぱかぱかと、二棟のロバが小さな馬車を引いていく。
馬車の御者台では、クラリネ爺さんが手綱をとっている。
そして、馬車の中では、ヴァネッサが瞑想中。
守護霊は、巫女の精神力を消費して具現化する。
精神を鍛える事が具現化時間の延長に繋がるらしい。
「己の心を磨く事が肝心なんじゃ」
「どうせなら、温泉とかで女磨きの方がいいです」
「尻の青い小娘が温泉なんぞ行っても、無い胸がさらに無くなるぞ」
「ぶぅぅ」
世界には、巨人よりももっと強い魔物がごろごろと居るらしい。
呪いの起点に到達するには、それらの強力な魔物との遭遇が避けられない。
そのため、属性のマテリアを集めて、守護霊としての力を強化しなければならない。
……らしいのだが、当の俺には何もすることが無い。
守護霊としては、自然のエネルギーを感じればいいだけだからだ。
俺たちはクーヴァーからさらに南下し、この国の王都、港町カレーを目指している。
予定では、カレーから船に乗って、クラリネ爺さんが水のマテリアを獲得した場所、水の都ヴェニスを目指す。
カレーには温泉が湧きだすので、保養地としての一面もある。もちろん、美味しい食べ物も多く集まる。
ヴァネッサが浮かれている理由は、そういうところにあった。
クラリネ爺さんが用意してくれた馬車には、野宿用のテントやたっぷりの食料、調理道具なども載せている。
最初の数日間の「ガチ野宿」と比べると、まるで極楽のようなキャンプ生活を続けていた。
クーヴァーからカレーまでの中間地点に広がる森に差し掛かった時、地面に大きな木が倒れていた。
クラリネ爺さんが、ロバを操って馬車を止める。
「これは、タクヤにどうにかしてもらうしかないな」
木を一目見て、クラリネ爺さんが俺に声をかけてくる。
幹の太さが一抱えほどはある、一人では動かす事が難しいような大木だ。
「わかった。魔法で何とかしてみるかな~」
頭の中で、魔法のリストを思い浮かべながら、俺が木を調べに行ったとき、森の中から女性の声が聞こえてくる。
「いきなりで悪いんだけど、金目のものは置いてってくれないかなぁ?」
声の主を探すと、森の中から黒い眼帯をつけた女性がでてきた。
年のころは二十前半くらい。こげ茶色の髪を後ろで束ね、手に長い杖を持っている。
「ほう、野盗か。この道で出るとは珍しいな」
「ふふふ、今日開業したばかりなんだ。よろしくね~」
反対側の森から、弓を構えた二人の男が現れる。
「馬車の中に隠れていろ」
クラリネ爺さんが、首を突き出したヴァネッサを馬車に押し込み、愛用の剣を抜き放つ。
男の一人が威嚇のために矢を放つが、クラリネ爺さんが軽々と剣で払いのける。
「相手が悪かったな。クーヴァーの騎士、ドン・クラリネが相手をしてやろう」
「あちゃ~。開店早々大物だね、幸先がいいや」
女盗賊が右目の眼帯を外す。
外した中から現れた彼女の右顔は、どす黒く呪われていた。
右目を中心とした皮膚が黒くただれ、眼窩の中で何かが赤く光っている。
「【火炎】」
彼女が呪文を唱えると、杖の先から火炎放射器のように炎が迸り、馬車の前の地面を焼き焦がす。
暴れるロバを、クラリネ爺さんがなんとかなだめる。
「うちは、アガルタの呪いに打ち勝って、魔法の力を手に入れたのさ」
「魔法か。噂には聞いていたが、魔女を見るのは初めてだのう」
「わたしも、魔法が使えるひとを初めて見ました」
馬車の中のヴァネッサが驚く。
そういえば、俺はほいほい魔法を使ってたけど、誰かが使うのを見たのはこれが初めてだ。
「ふふふ、そうだろう。魔法だぞ~、怖いだろう。有り金を置いてさっさと帰ったほうがいいよ」
「「だが、断る!」」
クラリネ爺さんとヴァネッサが即答する。
魔女は一瞬あっけにとられたが、気を取り直して杖を掲げて呪文を唱えた。
「後悔するなよ?【凍傷】」
「【具現化】」
俺は、魔女と馬車の中間地点で具現化した。
そこは魔法の通過点。とばっちりを受けて、狼の氷漬けが出来あがる。
だが、俺は氷属性の守護霊であるので、氷系の魔法は通用しないらしい。
何のダメージも無く、ぱりぱりと音をたてて、体表から氷が剥がれていった。
(これ、炎系の魔法だったらどうなってたんだろう)と思いながら、魔女のほうに向きなおる。
「ということは、その右目の呪いを浄化しちまえば良いんだな」
具現化さえすれば、俺の声は他者に聞こえる。
「まさか、守護霊?やめろ~」
あわてて逃げようとする魔女を、俺は前足で軽くつんのめさせて転ばせ、前足で軽く押さえつける。
傍目には、虫でじゃれて遊んでいる猫のようだ。
男2人が矢を撃ってくるが、慌てている上に、彼らは弓に慣れていないらしく、ほとんど矢は命中しないし、当たっても俺の毛皮に阻まれる。
しばらくごたごたとしたが、盗賊たちは諦めて降伏してくれた。
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「さて、盗賊家業を開店したわけを言ってもらおうか。
初犯のようだし、理由次第では大目に見る。それに、力にもなるぞ」
クラリネ爺さんが腕組みをしながら魔女たちを睨みつける。
そういえば、まだクーヴァー領なので爺さんが司法権を持っているんだった。
近くで見ると、後から出てきた男二人は、魔女よりも若く、片方は少年といっても良い年齢。
爺さんの勢いに負け、彼らはぽつぽつと身の上を話し出した。
「うちら姉弟は、ここから2ヶ月くらい東のほうにある村に住んでいたんだ。
だけど、ある日アガルタがやってきて、呪いが落ちた」
運悪く、落ちた呪いは彼らの住む家を直撃。
彼らの父親は、呪いを全身に浴びて即死。
母親と魔女は呪いの飛沫が体にかかり、昏倒し、半死半生となった。
二人の弟たちが、なんとか母親と魔女を背負って家から逃げ出したものの、村人たちは呪われた彼女たちを村に留めておくことを許さず、一家は村から追放された。
弟たちは、日雇い労働を繰り返し、各地を転々としながら二人の看病を続けた。
そして1か月前、弟たちの必死の看病のかいもあり、姉は意識を取り戻した。
魔女は、その時から、魔法が使えるようになったそうだ。
だが、先に目を覚ました母親は、心が壊れ、わけのわからない事を口走るようになっていた。
「母さんを医者に見せるのにも、金が要る。
だから、うちらは野盗をすることにしたんだ」
「医者に見せても、呪いの症状を治すことはできんだろう。
幸い、駆け出しだがこいつは巫女だ。守護霊の力でなんとかできるかもしれん」
クラリネ爺さんがヴァネッサを顎で指す。
「本当か!?母さんが治せるのか?」
魔女は、必死にクラリネ爺さんにすがりつく。
「あぁ。守護霊の浄化能力は魔物の毒を消せる。そういった症状でも試してみる価値はある」
「うちはクレア、こっちが弟のイッケンとニケンだ。よろしくな。
お袋のところに案内するよ。ニケン、馬車みはっとけ」
「おうよ、姉貴。巫女様、お袋をたのんます」
ニケンがヴァネッサに深々と頭を下げた。
彼らに案内されて、森を抜けて、住処としている洞窟に向かう。
ところどころに狭い獣道があり、道を知りつくした人間でないと辿り着けそうにない。
「よくこんな所知っていたな」
「魔法で手を入れて、通れるようにしたのさ」
山裾にうがたれた洞窟は、岸壁をくりぬいていったように見え、多少の不自然さを感じた。
この洞窟そのものも、クレアの魔法で作ったものかもしれない。
洞窟の奥からは酷い異臭が漂ってくる。
「すまないね。どうしても垂れ流しになっちゃって」
クレアが申し訳なさそうに謝る。
「呪いのせいだ、しょうがない」「そうですよ」
クレアとイッケンが洞窟の中に入っていき、彼らの母親を抱き上げて連れてきた。
彼女は、皮膚にハリが無く、ところどころに黒い染みがあり、80か90歳くらいに見える。
クレアの年齢は、どう見ても20代。
連れてこられた老女は、母親というより祖母と言った方がしっくりきて、俺たちは顔を見合わせる。
「あぁ、わかるよ。母さんはまだ40過ぎなんだ。呪いがいろいろともってっちまったのさ」
クレアはゆっくりと母親の頬を撫でる。
「タクヤさんを具現化しますね」
ヴァネッサが一歩前に出て呪文を唱えようとした瞬間。
「うひゃヒャひゃ」
突然、老女が人間とは思えない叫び声を上げ始めた。
ごりごりという不快な音を立てながら、老女の口が大きく開き、そこから黒い蛸のような魔物が這いずり出てくる。
その魔物は、烏賊のような、1mほどの触腕を8本持ち、頭の部分は蛸のように丸い。
蛸の頭のど真ん中に、鶏卵大の黄色く濁った目がひとつついている。
「コノからだ、クサッタ、お前、カラダよこせ」
黒い蛸が体を震わせながら人間の言葉で喋った。
蛸が抜け出た後の老女の肉体は、皮だけと言っていいほどの様相で、力なく地面に横たわっている。
「え!?か、母さん……」
呆然とするクレアを尻目に、蛸の触腕が長くのびてヴァネッサを絡め取る。
「キャァッ」
「フンッ」
気合い一閃、クラリネ爺さんの大剣が、ヴァネッサに絡みつく黒い蛸の腕を切り落とす。
「ギャァッ!」
腕を切り落とされた黒い蛸は、残った腕を素早く動かして、何処かに逃げ去って行った。
「あんなのを放っておくわけにはいかん。追うぞ!」
「でも、クラリネさん、クレアさんがっ」
苦しげにうめき声を上げながら、クレアが右目を押さえて座り込む。
彼女の指の隙間から血がぽたぽたと滴り落ちる。
「呪いが魔物と共鳴して活性化したか」
「は、早く呪いを浄化しないと……」
ヴァネッサが彼女に近寄り、介抱しようとする。
「いらないっ!」
クレアはヴァネッサの手を乱暴に振りほどく。
「うちたちは、母さんの皮をかぶったあの魔物に騙されていたんだ。いままで、ずっと……」
血と涙を流しながら、魔女が語る。
「消さないでくれ。
この呪いを失ったら、うちは、あの魔物を倒せない」
「でも、このままじゃ、目が見えなくなっちゃいますよっ」
「構わない、目ん玉の一つくらい、呪いにくれてやる。
アイツをぶっ殺したい!」
魔女の叫びにこたえるように、彼女の血と涙を注がれた地面が隆起し始め、人間の姿となった。
それは、血の色をした、いびつな人形。
だが、俺には、人形にだぶるように、黒目と黒髪の10歳くらいの少女が見える。
少女を見ていると、懐かしいような、物悲しいような思いがあふれてくる。
俺は、何か大事な事を忘れてしまっている。
「おネエさん、カナしいの?」
少女は、クレアに問いかける。
「悲しい。でも、それ以上に、憎い」
「憎み続けるのはツライよ。それでも、いいの?」
「構わない。うちは、呪いを憎む」
少女は、ゆっくりと手を上に上げる。
その小さな手には、いつの間にか赤く輝くナイフが握られていた。
「あなたに、呪いを」
少女は、そのナイフをクレアの右目に突き立てた。
ナイフから迸る呪いが、クレアと少女の全身を包む。
それは、人の歪んだ心から産まれた、世界の法則を歪める力。
クレアと少女の全身が、クレアの右目から膨れあがった黒い呪いに包まれていく。
「クレアさんっ!」
「近寄るな、お前まで呪われるぞ」
駆け寄ろうとするヴァネッサをクラリネ爺さんが押しとどめる。
俺は霊体のまま爺さんの体をすり抜け、彼女たちに近寄ってクレアの身体に触れる。
呪いが、俺の身体も包んで行く。
漆黒で覆われた世界の中に、クレアと少女と、俺の3人だけが居る。
呪いが、少女の思いを伝えてくる。
身体を焼かれる痛み、家族を奪われる哀しみ。
かつて、少女は、自分と家族を殺した世界を憎んだ。
その憎しみが呪いとなり、少女自身を今も蝕んでいる。
「クレア、呪いに負けるな!」
俺は呪いの中に手を突っ込んで、手探りでクレアの手を掴む。
そして、もう片方の手で少女の手を握る。
「もう、憎まなくても良いんだ。彼女と俺が引き継ぐから」
彼女たちが俺の手を握り返した瞬間、俺たちを包む呪いは急速にしぼんでいった。
呪いの中からから出たとき、少女の姿は無かった。
「アリガとう」
少女の声だけが残り、そして消えていった。
息を荒げながら立ち上ったクレアの顔には、もう、呪いの黒い爛れは無かった。
だが、呪いの存在を示すように、右の瞳が赤い色をしている。
「はぁはぁ、ありがとよ、あんたのおかげで助かったよ」
クレアが俺の方を見ながら言う。
「姉貴、大丈夫か?」
「イッケン、うちは大丈夫だ」
「良かった、姉貴まで死んじゃったら、俺……」
「アホ抜かせ。
あんたら、迷惑ついでに、あのタコをぶっ倒すのを手伝ってくれないか?」
イッケンの頭をドツいてから、クレアが俺たちに笑いかける。
「でも、眼はもう大丈夫ですか?また、共鳴したら」
ヴァネッサがクレアを心配して問いかける。
「もう大丈夫だ。この呪いは、もううちの一部になったんだよ」
「だな。あの子は、もうどっかに行っちゃったし」
俺も横でうなずく。
「あの子?」
ヴァネッサが首をかしげる。
どうも、あの女の子は俺とクレアにしか見えていなかったようだ。
「ま、何れにせよ、あんな魔物を放置するわけにはいかん。
だが、何処にいったのかわかるのか?」
「この目はいろいろ見えるようになったのさ。あんたの姿もな」
クレアが俺の方を向きながら、右目でヘタなウィンクをして答えた。
クレアの指示に従って、俺たちは魔物の痕跡を追って山の中を進む。
危険があるので、イッケンはニケンのところに説明がてら退避させた。
「おっし、居た。今度は厄介なものに取りついたな」
クレアが指さす先には、2mほどの熊が一頭。
目を赤くギラギラと輝かせながら、鹿を豪快に丸かじりしている。
「さて、行くか」
クラリネ爺さんが、ハイキングに行くような気楽さで立ち上がる。
「小娘、具現化しておけよ。変な呪いがあると困るからな」
そう言い残し、爺さんは大剣を構えながら熊に向かって歩いて行った。
爺さんの接近に気が付いた熊が食事を止めて、立ち上がって戦闘態勢を取る。
体長3mを超え、魔法も使える銀狼の俺から見ても、結構やばそうな動物に見える。
「タクヤ、お前はそこで見てろ。お前が手を出すと、呪いを浄化しちまうだろ?」
具現化し、加勢に行こうと踏み出した時、爺さんに制止された。
その隙をついて、熊の右腕が爺さんに襲いかかる。
爺さんは大剣を斜めにかざし、熊の攻撃の勢いを剣の刃で受け流す。
熊の腕が浅く切り裂かれ、鮮血が振り撒かれていく。
熊の脇腹に爺さんの蹴りが入り、双方の距離が離れる。
「クレア!魔法」
「【氷の矢】」
魔法で作られた氷の矢が熊の胸板に突き刺さり、衝撃で熊がバランスを崩す。
そこへ、爺さんの追撃が決まる。大剣が熊の毛皮を切り裂き、鮮血があふれ出す。
熊は攻撃をすると大剣で受け流され、攻撃をすればするほど傷が酷くなっていく。
「魔物に憑かれるとは、運が無かったな」
爺さんの地面すれすれの一撃が熊の脚を半分ほど切り裂き、バランスを崩した熊が倒れ込んだ。
そして、起き上がろうともがく熊の頸動脈を一閃で断ち切る。
「【凍傷】」
クレアの魔法により、熊の全身が凍結していく。
動きを封じられた熊の口の中から、黒い蛸があわてたように這いずりだしてくる。
完全に蛸が姿を現したところで、爺さんが蛸を地面に串刺しにした。
「ぐぎゅ、ググゥ」
地面にへばりついた蛸は、残された腕を使って剣を引き抜こうともがく。
「あとは好きにしろ」
爺さんは魔物を串刺しにした剣を残したまま、数歩後ろに下がる。
「ありがと、騎士様」
クレアは、爺さんに下手なウィンクをすると、呪文を唱え始める。
「【業火】」
呪文で産み出された灼熱の炎が、黒い蛸を燃やしていく。
魔法の炎に包まれ、蛸は消し炭となって、燃え尽きた。
「母さん、仇は取ったよ……」
地面に崩れ落ち、泣き始めたクレアにヴァネッサが近寄って背中をさする。
「あれ……ワシの剣は?」
出番の無かった俺は、手持無沙汰だったので、剣ごと燃やされて呆然としている爺さんを、肉球で慰めた。
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「では、改めて呪いを浄化します」
落ち着いたクレアを前に、ヴァネッサが宣言する。
「う~ん、それはちょっと待って欲しいな。あんたらにまだ借りを返して無いだろ?」
「借りなんて思わなくても良いですよ。これが仕事みたいなものですし」
天使の微笑みでヴァネッサが答える。
「それに……」
「それに?」
「どうやって浄化するの?」
後ずさりしながら、クレアが恐る恐る尋ねる。
「それは、タクヤさんに狼になってもらって、クレアさんの目玉に触れるんですよ」
「嫌だ!」
ヴァネッサは、クレアの弟のイッケンとニケンにも手伝って貰って、逃げるクレアを捕獲。
彼女をはがいじめにして、眼を強引に見開かせる。
クラリネ爺さんは、自分は騎士だから女性に手は出せん と変な言い訳で作業からは逃げていた。
楽しそうに、彼らの作業を腕組みをしながら見つめる。
肉球の部分で良いんじゃないか?と爺さんが言うまで、みんなで爪を目玉にぶち込もうとしていた。
なんとか、俺の肉球が目玉に触れた。
まるで、拷問のような光景。だが、呪いは浄化出来ず。
「たぶん、この子はもう、うちと同化してるんだと思う。
だから暴走はしないけど、浄化も出来ないんだろうな」
眼を真っ赤に充血させながらクレアが語る。
クレアにぶんなぐられたイッケンとニケンが地面に転がる。
「はふぅ。打つ手なしですか」
「まぁ、そんなところだと思っていたがな。
魔女ではないが、同じような事例でダメだったし」
「解ってたなら、先に言ってよぉ」
クレアが爺さんをうらみがましく見つめる。
「ま、この子にも手伝って貰ったからね。借りはかえしておかないとさ」
ずっと泣いていたクレアが、初めて明るく笑った。
こうして、魔女クレアが旅の仲間に加わる事になった。