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第四十八回

ラドとニイドが寮へ戻ってくると、たちまち村人達が駆け寄ってきた。

「賢者様、御無事でしたか」

「うむ」

「それで、使者達は何と」

「私とラドに、イス国に来るようにと言っていた。明日、出立する」

村人達の顔色がさっと変わった。

「そんな、賢者様をイス国に送るなど、とてもできません! どんな罰を受けるか・・・・・・」

「それに、ラド君だってエオーを止めてくれたのに」

「そうだ、私が代わりに行きます!」

「私もだ!」

次々と村人達が声を上げる。しかしニイドは片手を挙げてそれを制すと、「皆の気持ちは非常に有り難い。しかし、先方はこの件について魔術師としての説明を求めているのだ。我々が行かねばならぬ。皆、留守をよろしく頼む」

村人達はそれ以上何も言わなかった。というよりも、言えないのだろう。

そのときニイドがつとこちらを向くと、「ラド、今日は何か予定はあるか」と尋ねた。

特に用事はない。ラドは首を振った。

「そうか。急ですまぬが、出立の前に魔杖を新調してくると良い」

「え?」

ニイドに魔術を習うときは、ニイドが魔杖を門下生に支給していた。そのため魔杖の新調と言われてもどこに行って何をするのか皆目見当がつかない。

困惑が顔に表れていたのか、ニイドは「デュマルに案内を頼んである故、心配は要らぬ。旅支度も済ませてきなさい」と言い添えた。それを聞いてラドは安堵した。

ラドは部屋で旅支度をしていたが、いま手元にあるものでわざわざ荷造りをするようなものは着替え程度に過ぎない。

ほどなくして、デュマルが訪ねてきた。

「先生から話は聞いているね。行こうか」

「はい」

ラドはデュマルについて歩いていった。とはいえどこに向かっているのだろうか。

「魔杖の新調って、どうするんですか」

「ああ、この先に店があるんだよ。費用は先生から預かってきたから、心配ない」

デュマルは一件の店の前で足を止めた。

煉瓦づくりのかなり古い店構えだ。それでも掃除が行き届いているのだろう、苔がむしたり看板が汚れているようなこともない。

「ごめんください」

デュマルは一声かけると慣れた様子で店に入っていった。

ラドも続いて店に入ると、白い山羊髭をたくわえた柔和な表情の男性が、「いらっしゃいませ」と出迎えてくれた。年はニイドと同じくらいだろうか。

「彼の魔杖が折れてしまって、新しいものを探しているのですが」

「かしこまりました。では、この中からお好きなものをお選びください」

ラドはあたりを見回した。店内は壁一面に格子状の枠で区切った棚がつけられ、その枠一つにつき一本の杖が頭だけを出すように差し入れられている。扉と勘定場、その上のごく小さな作り付けの棚がまるで無理矢理隅に押し込められたかのように見えた。

杖はすべて木製で、若干色味の違いはあるがそれ以外の差は見られない。価格も変わらないようだ。

もっとも材質によって魔術に影響が出るわけではない。ラドは特に深い考えもなく、「あの上のほう・・・・・・上から三段目と左から七番目」と指定した。

店主は脚立に登ると、ラドが指定した杖に手をかけた。

「こちらですね」

「はい」

店主が片手に脚立の支柱、片手に魔杖をとって降りてくる。慣れていると見え、足取りは危なげない。

「どうぞ、お手にとってみてください」

ラドは魔杖を受け取った。前のものよりも少し軽い。とはいえ頼りないというわけではない。じきに手に馴染むだろう。

「これを下さい」

デュマルが代金を支払い、ラドは杖を受け取った。

「ありがとうございました」

術具店を出ると他にも旅支度のため何軒か店を周り、帰り着いたころにはすでに日が暮れかかっていた。

表玄関を開けると二人の帰りを待ちかまえていたのであろうニイドの姿があった。

「おお、ラド、戻ったか」

「はい」

「それで、魔杖は」

「無事、購入できました」

これにはデュマルが応えた。

「そうか。御苦労だったな、デュマル」

「では、私はこれで。先生も、ラド君も、どうかお気をつけて」

帰路に着くデュマルを見送ると、ラドは部屋に戻った。


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