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第四十三回

 しかし、いくらフェオ自身がかまわないと言ったとはいえ、何か対策を講じておくべきだろう。

 そんな中、「例の、トイオラ村のアラスのことでございますが」と一人の家臣が報告に訪れた。

「何かわかったのか」

「フェオ様の噂を流した張本人が、アラスのようなのです」

「どういうことだ」

 家臣によると、事の次第はこうだ。

 噂の出所を調べるべく聞き込みを続けた結果、アラスが事あるごとにフェオの力は偽物だと呟いているのを複数の避難者が目撃していた。アラス自身が吹聴して回ったのではなく、それを見ていた者たちが誰からともなく話題にし始めたというのが真相らしい。

 幸いにも、噂を信じている民衆はそれほど増えていないという。

「とすれば、フェオの力を欺瞞と見ていたのはそのアラス一人ということか」

「そう思われます」

 それは裏を返せば彼だけがフェオに対して何らかの不満を抱いているということだ。いったい何者なのだろう。

「何か他に不審な動きはあるか」

「いえ、特には見受けられません」

 それならば危害を加える可能性は低いだろう。警戒を怠るわけにはいかないが、ルディオスは少しだけ安堵した。

 それを踏まえた上で、フェオをどのような形で民衆と接触とさせるべきか議事が開かれた。

「やはり、実際にフェオ様に治療を行っていただくのがよろしいのではないでしょうか」

「しかし、素直に信じるとも限らぬだろう」

「左様、そもそも好き好んで傷を負う者がいるとは思えぬ」

 家臣の意見は一向に収集がつきそうにない。

「まずは慰問という形にしてはいかがでしょう。それでしたら、フェオ様の能力についてわざわざ頓着する必要もないでしょうから」

「だが、国賓が直接慰問に訪れるというのも妙な話ではあるまいか」

 どちらの意見にもそれぞれ一定数頷く家臣たちがいたが、「このような折りだ。フェオを通常の国賓としてみる者もいるまい。慰問に回らせるのであれば問題ないだろう」というルディオスの意見で話はまとまった。

 そのことをフェオに伝えると、フェオは笑顔を見せた。これまでずっともどかしさを感じていたのだろう。

 慰問の日取りはその数日後に組み込まれた。避難している国民達にも事前にその旨の通達は行われたが、幸い特に不穏な動きも見られぬまま当日を迎えた。

 ルディオスはフェオの部屋へ迎えに行った。穏やかな日差しは室内にも差し込んでいる。そよ風が僅かに木々の枝を揺らし、鳥のさえずりが耳に心地よい。

 この風景だけを目にすれば、この国が災禍に見舞われているとはとても思えない。

 当のフェオは、先ほどから口を開かないままだ。自分で望んだこととはいえやはり緊張しているのだろう。

「フェオ」

 ルディオスの声に、フェオは振り向いた。

「不安か」

 無理をしてでも気丈に振る舞うのではないか。そんな心配も頭をよぎったが、少し間はあったもののフェオは素直に「はい」と応じた。

「治癒と一緒に励ますのなら、これまでにも何度もしてきました。ですが、こんなことは初めてで・・・・・・」

 怪我であれば、フェオはほぼ確実に治療できる。そのフェオに回復を保証されるのはこの上なく心強い。しかし今回は事情が異なる。

 口では何とでも言えるだろう。だが、その言葉は信を得られるとは限らない。もしアラスの他にもフェオの力を疑う者がいるなら尚更だ。

「私もそうだ」

 フェオは意外そうな表情を浮かべてこちらを見た。ルディオスは窓の外の景色に目をやると、「正解がない分、いつも途方に暮れたものだよ。正直なところ、今でも自分の行いが正しいのか自信が持てないときがある」と続けた。

 ふと視線を感じて振り返ると、フェオが「ルディオス様でもそのようなことがあるのですね」と呟いた。

 ルディオスはふっと微笑んだ。

「私も人の子だ。王家の血が流れているからといって、何かが人より抜きんでているわけでもないよ」

 ルディオスはフェオの手を取った。その見た目は白くて細い何の変哲もない少女の手だ。そしてフェオ自身も、その身に類を見ない治癒力を秘めているとはいえ、一人の少女に過ぎない。

「行こうか」

「はい」


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