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第三十回

 議場に戻ってきたルディオスは一つ思い当たったことがあり、家臣にあることを尋ねた。

「民間人の負傷者は出ているか」

「いえ、そのような報告はございません」

「では、避難者の中に怪我をしている者はあるか。今回の件と無関係なものも含めてだ」

「そちらはわかりかねます。ですがかなりの人数になりますので、その中に負傷者がいても不思議はないかと存じますが」

「そうか」

 ルディオスは腕を組んだ。

「ルディオス様、いかがなされましたか」

 家臣の問いかけにルディオスは、「フェオのことだ」と答えた。

「と、おっしゃいますと」

「城に入ってくる者の中に負傷者がいれば、まず間違いなくフェオの治療を要求するだろう。それにはフェオを民衆に近づけることになる」

 一部の者はその意味するところを理解しかねているらしく、困惑した表情を浮かべている。やがてロドナが「恐れながら、特に差し障りがあるようには思えませぬが・・・・・・」と発言した。

「平時ならば構わぬ。しかし今、民衆はサルテオの攻撃から逃れてくるのだぞ。フェオはサルテオの出身だ。負傷者を装ってフェオに危害を加えようとする者がいても不思議ではあるまい」

「しかし、箝口令を敷いております。ただの火災とフェオ様を結びつけて考える者はいますでしょうか」

「だが、偶然で納得させるには時節が悪すぎる。お前達もフェオに密偵の疑いをかけたではないか」

 もはや反駁する者は、一人もいなかった。

「警護に回せる人員はあるか」

「大幅な増員は厳しいかと思われますが、少人数でしたら問題はありません」

「ならば、フェオの部屋の前に一人警護を付けよ。フェオが部屋の外に出ようとしたら、まず私に報せに来るように」

「御意」

 今はまだフェオの立場は異国から迎えた国賓ということになっている。正式に婚儀を挙げた後ならば公務の一環として民衆を見舞う必要もあったかもしれないが、当面はルディオスかリドニアがその役割を務めれば充分だろう。その点からいえば婚儀が延期されていたことは幸いと言えないこともなかった。

 そして夕刻あたりからは続々と避難者が到着し始め、夜更け前には避難勧告を出していた全地域の住民が城に集まった。その中には幾人かの負傷者も含まれていたが、懸念されていたようにフェオによる治療を要求する者はおらず怪我自体も軽傷だったため、侍医による診察で事足りた。

 ルディオスたちは深夜になってもなお対応に追われていた。そんな中、部屋に慌てて飛び込んでくる者がいた。

「ルディオス様、一大事にございます」

 避難民たちの間で何か起きたに違いない。誰もがそう思った。しかし、そこにいたのはリドニアを呼び戻すために遣いにやったと聞いた早馬であった。

「どうした」

「リドニア様が・・・・・・」

 息を整えるためか、それとも単に言い淀んでか、早馬は少々の間を置いた後、「身まかられました」と告げた。


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