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第二十三回

 そもそも魔法というものは魔法陣を描くところから始めなければならないという性質上、即時の対処には向いていない。そのため、実際の戦闘では最前線に騎兵や剣士を置き、魔術師は後方支援に当たるのが一般的である。

 しかし今回ばかりは事情が違う。魔術師同士の対決だ。

「行くぞ!」

 ラドが声を上げたのを皮切りに、双方が魔法陣を描き始めた。勿論、杖を折るなり足を払うなりの力業で相手が魔法陣を描くのを阻むという方法もある。それでも敢えてラドは魔術のみで立ち向かうことを選んだ。そして、それはエオーも同じであるらしい。普段なら力でラドをねじ伏せにかかるエオーも、このときばかりはラドを見ていなかった。

 先に仕掛けたのはラドだった。握り拳大の炎の球が三つ、草の上を這うようにエオー目掛けて飛んでいく。ちょうど狼などの獣が走るほどの早さだ。しかし、エオーは横に飛んでそれをかわした。なびいたローブの端を炎の球がかすめたが、燃え上がらせることはなかった。

 もっとも、予想していたことでもある。これは魔法陣を描き上げるのに時間はかからないが威力もさほど高くない、いわば初歩の技だ。ただ牽制を狙ったに過ぎない。それを知ってか知らずか、エオーはこちらを見てにやりと笑った。

「そんなんじゃ、効かねぇよ」

 とはいえ、当のラドはそんな言葉など気にも留めていなかった。次の一手に集中していたのだ。間を置かず、今度はエオーの足下が霜で覆われた。しかし、これも大した打撃にはなりえない。なぜならごく初歩の技のため射程範囲が極端に狭く、一歩でも相手がその場から動けば逃げられてしまうからだ。現にエオーはほんの僅か横に動いただけで、あっさり霜の外に出てしまった。

 ただ、まったくの徒労に終わったというわけではない。エオーがその場から離れたことで、魔法陣を描く作業を途切れさせることができた。

 だが、エオーもその企みには気づいたようだ。

「さっきからちょこまかちょこまか・・・・・・邪魔なんだよ!」

 怒号を発すると、エオーはそのまま魔法陣を描き続けた。ラドは何度かそれを遮るように威力の低い魔法を繰り出してみたが、エオーが動きを止めることはなかった。といっても、魔法が発動しなかったのではない。エオーが多少の攻撃では動じなくなったのだ。それでもひたすらラドは攻撃を続けた。火炎、雷電、水柱。

 しかしエオーはそれをものともしない。そうこうしている間にエオーの魔法陣が完成した。ただし禁忌の力ではなく通常の火炎系の魔法だった。威力はラドが描いてきたものより少々上だ。

「くらえ!」

 エオーが魔法陣の中心に魔杖を突き立てた。発動する。

 その瞬間、魔法陣周辺の地面が盛り上がったかと思うと、エオーもろとも吹き飛んだ。ラドの魔法だ。対して、エオーの魔法は発動していない。地面自体が変形したことで魔法陣も崩れてしまったのだ。

 地面に叩きつけられたエオーは、「ぐっ・・・・・・」と呻き声を上げ身悶えしている。無理もない。この魔法の威力はこれまでラドが仕掛けていたものとは段違いだ。背丈の倍近い高さから落ちればどこかを痛めても不思議ではない。

「ラド、・・・・・・て・・・・・・めぇ・・・・・・」

 くぐもった声を出しながら、横向きに倒れた体勢のままエオーがこちらを睨みつけている。

「悪く思うな」

 仕方がなかった。状況はどうあれ、共にニイドの元で魔術を学んできた仲間だ。素手での喧嘩ならこれまでも数え切れないほどしてきたが、いくらニイドの許しを得ているとはいえ魔術で同志に痛手を与えることはできる限り避けたかった。牽制程度の魔法で様子を見ていたのも、負わせる怪我を最小限に留めたいと考えてのことだ。

 それでも止めないなら、フェオの身に危険が及ぶというのなら、手加減はできない。

 魔杖を文字通り杖として使いながらエオーが立ち上がり、「・・・・・・許さねぇ!」と叫ぶと、ついさっきまで倒れていたとは思えない勢いで突進してきた。

 そのときラドは既に次の魔法陣を描き始めていたため、エオーの動きに気づくのがほんの僅かに遅れた。それが命取りになった。

 エオーが渾身の力を込めて魔杖を横に振るう。

 同時に、ラドの魔杖は派手な音を立てて真っ二つに折れた。


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