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第二回

 そして、ついにその日がやってきた。城内はいつにも増して徹底的に磨き上げられ、塵芥の類を取り除くのはもちろんのこと、溶け落ちた砂粒ほどの蝋も逃すまいも逃すまいと吸い取り紙が当てられた。虫眼鏡でも無ければ見つけられないほどの糸屑をたまたま眼の良い宰相が見つけてしまったために掃除番が鞭打ちの刑を受けたほどである。

 リドニアは表立って反論こそしなかったものの、この期に及んでまだ苦々しげな表情を浮かべていた。

 そこへ一人の召使いがやってきて、「お着きでございます」と告げた。

「通せ」

 国王の言葉とともにドアが開かれると、そこには一人の少女が立っていた。

 薄い色の金髪、白い肌、白い服。その中で茜色の瞳が強い印象を放っている。

 少女は前へ進み出てから膝を曲げ軽く頭を垂れると、「サルテオより参りました、フェオ=ギューフと申します」と名乗った。

 国王は軽く頷くと、「長旅御苦労であった。私が国王のリーデンだ。そしてこれがそなたの夫となるルディオス」

 ルディオスは軽く黙礼した。

「これがルディオスの弟、リドニアだ」

 リドニアも本人を前にして、平静を装っているようだ。

「以後お見知り置きのほど、よろしくお願いいたします」

 フェオはそれぞれに向かって再度頭を垂れた。

「うむ」

 リーデンは軽く頷くと、

「そなたも知っていると思うが、我が国は戦時中である。すまぬが婚儀は戦の終了後となる」

 と続けた。

「承知しました」

「なに、あの程度の国などそなたの力を以てすればすぐに音を上げるだろうて」

 リーデンの口元には喜悦と言うより不適な笑みが浮かんでいる。フェオは無言のまま頭を垂れた。

「そなたも疲れているであろう。今日はもう遅い。部屋で休むと良い」

 フェオは「それでは失礼いたします」と言うと、女官長に導かれて広間を後にしていった。

 しばらくの間沈黙が部屋を支配していた。それを破ったのはリドニアの「あれが、そうなのですか」という言葉である。リーデンはドアを見つめたまま険しい顔つきで頷いた。「私には到底信じられません。まさか、あのような娘が・・・・・・」

 口には出さないものの、ルディオスも同感だった。ギューフ家の娘というからには、見てすぐにそれとわかる異質な雰囲気を持っていると思っていたのだ。あれではどこにでもいる普通の娘だ。


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