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第十三回

 寝室に運び込まれ診察を受ける間もリーデンの意識は戻らない。

 部屋にいるのはリーデンと侍医にルディオス、リドニア、そしてフェオだった。

「父上・・・・・・」

「御義父様・・・・・・」

 報せを聞いて飛んできた二人は心配そうに寝台に寝かされたリーデンを見つめている。

 診察を終えた侍医は立ち上がって振り向くと、「皆様、こちらへ」と一同を別室へ移動させた。

「容態はどうだ」

 ルディオスの問いに侍医は首を横に振った。

「大変申し上げにくいのですが、持ってあと数日かと」

「そんな!」

 声を張り上げたリドニアに対し、ルディオスは「やはりな。思っていたよりも、かなり早かったが・・・・・・」と呟いたのでフェオは思わずそちらを見た。

 リドニアも聞き逃さなかったと見えて「兄上、これはあなたの企てですか」と、床の一点を睨むように視点を据えたままでいるルディオスに詰め寄った。

 ルディオスは悪びれることもなくリドニアを見据えると、「リドニア、お前は気がつかなかったのか」と問い返した。リドニアは返事に窮している。

「お前は、なぜ父上がこの時期に私の縁談を整えたのだと思う」

「それは、我が国の勝利を盤石なものにするためでございましょう」

「本当に、そう思うのか」

 フェオにとっては勿論だが、リドニアにしても予想だにしないことであったらしい。リドニアは目を見開いた。

「・・・・・・どういうことですか」

「元より、戦局はこちらが優勢だ。直に決着がつく見通しだった。仮にこちらの旗色が悪くなることがあったとしても、時機を見て立て直すこともできただろう。なぜ、わざわざ勝利を急ぐ必要があったと思う。父上は、このことを予期しておられたのだ。私も薄々感づいてはいたが、数日前に話して下さった。お前にも近い内に話すつもりではいらしたようだが・・・・・・」

 侍医はリドニアに向かって頭を垂れた。

「申し訳ありません。誰にも知らせてはならぬとの、国王陛下の命でございました」

「そんな・・・・・・父上、いったいなぜ・・・・・・」

 リドニア、そしてフェオは改めてリーデンの顔を見た。血色の変化や苦痛の色は窺えない。穏やかな表情だ。

「父上のことだ、己の弱みはできる限り知られたくなかったのであろう。例えそれが血を分けた息子であってもな」

 リドニアはその場に膝をついた。しばらくそのまま俯いて肩を震わせていたが、つと顔を上げるとフェオの顔を見た。

「義姉上、あなたの力で父上を助けられませぬか」

 フェオは困惑して首を横に振った。実はギューフ家の能力で治癒できるものは外傷に限られており、病はどうすることもできないのだ。それは最初からイス国にも伝わっていたことでもある。ルディオスも「リドニア、病に効力が無いということはお前も知っているだろう」と言い添えた。

「しかし・・・・・・」

 そうこぼしたものの、頭ではわかっていたのだろう。リドニアはそこで言葉を詰まらせた。

 そして「・・・・・・何がギューフ家の力だ」と吐き捨てた。

 ルディオスは声を上げようとしたがその前にフェオが部屋を飛び出していったため、後を追った。

「フェオ!」

 ほどなく追いつくとルディオスは腕を掴んだ。フェオは振り解こうとしたが、腕力で敵うはずもない。そのままへたり込んでしまった。

 ルディオスも片膝をつくと手を離し、「すまない。私の不行き届きだ」と詫びた。フェオは首を横に振った。

「リドニアの言うとおりです。私の治癒力など、無い方がよかったのかもしれません」

 そう言ってフェオが話し始めたのは、フェオがイス国に来ることを決意した前夜の出来事であった。


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