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何を大事にしようかな

 あるところに、三人の兄弟がいました。

 長男は燃えるような赤毛で、次男と三男は栗毛でした。

 長男は、平等を、大事にしていました。

 次男は、自分を、大事にしていました。

 三男は、優しさを、大事にしていました。

 あるとき、兄弟たちのお母さんが、一つのパンを持ち帰ってきました。

 そして、その配分を巡って、兄弟たちは、主張しあいます。

「おれが、一番育ち盛りなのだから、一番たくさん食べるべきだ」と次男が、声高に言います。

「兄さんたちは、体を維持するのに、たくさん食べないといけないからね、その通りだね」と三男。

「駄目だ、兄弟なのだから、平等であるべきだ」と言う長男。

 そして、三男にこう言ってさとします。

「間違いを正してあげるのも優しさだよ」

 結局、パンは半分と三等分になり、それぞれ兄弟にわけられました。

 残りのもう半分は、お母さんが食べました。

 それでもやっぱりお腹がすきます。

 そうして兄弟たちは、決意しました。

「これではだめだ。周りを見ても、お腹をすかせて、争いばかりしている。こんな世界を変えよう」

 次の日の朝、お母さんがみつけた置手紙には、こう書いてありました。

「みんなが、お腹いっぱいに食べられる、幸せな国を作ります」長男より。

「おれが、いつもお腹いっぱいに食べられる国を作ります」次男より。

「ぼくに、国を作ることはできません。だから、魔物を退治して、兄さんたちを助けます」三男より。

 その手紙をのこしてから、何十年も月日がたちました。

 長男は、小さいながらも仲間と手をとって、みんなが、お腹をすかせることのない国を作りました。

 次男は、周りの国をどんどん吸収していき、大きな国と莫大な富を得ました。

 そして、いつもお腹いっぱいでした。

 三男は、ギルドという組織を作って、魔物を効率的に狩るシステムの構築に成功しました。

 次男の国の成長は、留まるところをしりません。

 でも、国はどんどん大きくなりますが、良い思いをするのは、次男とその周りの一部の人間だけでした。

 それを知った長男は、なんとか次男を改心させたいと考えました。

 でも、自分だけではできません。

 そこで、三男に助けを求めることにしました。

 話を聞いた三男は、悩みます。

 間違いを指摘することは、兄さんを傷つけることになってしまわないだろうか。

 長男は言います。

「パンを分けたときに言ったことを、思い出しなさい」

「あっ、そうか。間違いを正してあげることも、優しさの一つなんだね。ぼくも手伝う、手伝わせてくれよ」

「よしわかった。資金と物資、それから武器を援助しよう」

 それから、三男のギルドは急速に成長していき、今やその規模は、中くらいの国よりも大きくなりました。

 でも、ギルドは、今まで中立と宣言していたので、次男は、全く気にしていませんでした。

 その間に、ギルドは、いろんなところに、支部という名の拠点を作っていきます。

 もちろん次男の国にも。

 次男の国は大きいので、特別たくさん支部が作られました。

 それから、次男がいる都にも作られました。

 そして決戦の時、三男のギルドのおかげで、ほとんど戦闘をすることなく、次男は捕まってしまいました。

「おれを捕らえて、どうするつもりだ」

「いい加減にしなさい」

 そう言って次男の頬を叩いたのは、長男でした

「いい加減にしなさい。自分ばかり、良い思いをしては、いけないよ。幸せは、みんなでわけあうものだ」

「でも、おれの国は、自分のために努力したものは、きちんと報われていた。兄貴の国では、頑張っても怠けてもおんなじで、それでは頑張ったものが、かわいそうじゃないか」

 長男と次男が言い争っています。

 そこに、

「いいや、二人とも間違っているよ」と三男が、割って入りました。

「結局、間違いを正すのは力なんだ。力こそが優しささ。それがわからない兄さんたちは、ぼくが力で粛清する(ただす)しかないね」

 そして、世界は核の炎に包まれました。

 でも、兄弟たちのお母さんは、助かりました。

 なぜなら、お母さんは、命を大事にしていたからです。

 何を大事にしようかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] とても面白かったです。自分は何を大切にしてるかな…と考え中です。
[一言] 長男だけ赤毛だったのは共産主義だからでしょうか。 イデオロギーは諸刃の剣なので扱いが難しいですね。 ……などと勝手な解釈をしながら楽しませて貰いました。
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