表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翼の主  作者:
初夏
28/36

はじめての、

 その朝、ソフィアはわくわくした気分で目を覚ました。前の晩、なかなか寝付けなかったのに、目が覚めてしまったのはいつもよりも早い。そういえば、入学の時もそうだったかもしれない。

 昨夜の学院内の雰囲気は、いつもとずいぶん様変わりしていた。

 ……というか、ずいぶん人が減っていた。存在感のある人達はおおかた下準備のために王都に行ってしまっていたからだ。とはいえ、普段騒ぐ者を窘めるような人も少なくなっていたので、ざわめきは普段以上だったけれど。


 ベッドの上で伸びをして、顔を洗おうとベッドから飛び下りたソフィアは、勢いが付きすぎたのかよろけてしまった。

「……あれ?」

 一瞬、目の前が暗くなり、頭がふらつく。

「……睡眠不足のせいかな?」

 ゆっくりと頭を上げてそろそろと洗面所に向かう。冷たい水で顔を洗うと、少しすっきりする。

 着替えようとクローゼットに向かい、扉を開けてはたと気付く。

「……何着てこう?」

 クローゼットには、制服のほかはシンプルな普段着しか入っていない。白いブラウスが何枚かと、おとなしい色合いの(素材だけは『高級品』と言われているカルヴェス山羊の毛織の)スカートが三枚ほど。

 破れたり擦り切れたりはしていないが、……少し地味では?

 寮の中ではそれほど浮いてない、と思うけど、王都に行ったらどうだろう?

「……制服じゃ、だめかな? ……そういや、『学院』の制服は少々型が古い(レトロ)って言ってたっけ」

 さんざん考えて、とりあえず普段の休日の服装で食堂に下りることにする。誰か知り合いがいるだろうから、そこで聞いてみればいい。

「ちびちゃん、ハウス」

 足元に纏わりつくリンドブルムを、呪符にしまって寝間着を脱ぐ。ブラウスもスカートも、どれも似たり寄ったりのデザインだが、一応一番新しいものを身に着ける。


 食堂は休日だというのに賑わっていた。……いや、名目上今日は休日ではない。だから寮の食堂は通常どおり開いている。

 朝食をトレイに載せたソフィアが誰か知り合いはいないかと辺りを見回す。……が、あいにく服を見立ててもらえそうな人は見当たらなかった。

 とりあえず空いた席に座り、食事を始める。

そのうちに誰か知り合いがやってくるかもしれない。……できれば今日一緒に行く約束をしているメンバーの誰かがいい。待ち合わせにはまだだいぶ時間があるけれど。

 もそもそとパンを口に運んで、飲み込みにくいのに気付く。


 ……ここのパンって、こんな味だっけ?

 スープもどこか味がぼんやりして……

 ……ぼんやり?


 ソフィアは何かおかしい、と思いながらも食べられない味じゃないからいいか、と、いつもよりも時間をかけて朝食を食べ終えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ