片道書簡(1)
『前略。無事入学手続きが終わり、寮に案内されました。四階の一番奥の部屋です。先程寮長さんが来て、新入生歓迎会の案内状を置いて行きました。何て言うか、ちょっと変わった人です。副寮長さん達が大変そうでした。
ところで、歓迎会って、まるまる半日あるんだけど、ずっと居なくちゃいけないものなんでしょうか?
その間ちびちゃんはどうすればいいんでしょうか?』
『前略。歓迎会の間の休憩時間にこれを書いています。
自己紹介でちびちゃんのことについて語りすぎてしまったせいか、会場が引いてしまい、いたたまれません。残りの時間をどう過ごしたらいいのでしょうか? まだ三時間もあるのに。
もうずっと部屋に籠っていたいです。
前半の間構ってやれなかったちびちゃんがまとわりついてくるので、このへんにします。』
『前略。お元気ですか? わたしは元気です。
入学して半月が過ぎましたが、はっきり言ってまだまだ慣れたとは言えません。学園内の施設もまだ覚えきれていないし。
そうそう、伝え忘れていましたが、リンデル先生、という若い女の先生が専任としてついてくださって、色々と教えてくださいますが、戸惑う事もいっぱいあります。
例えば、朝わざわざ寮までお迎えに来てくださるとか、教室の移動時にわざわざ遠回りするとか。今日なんか、渡り廊下の途中で足を止めて、来た道を引き返すんですよ。どうしたんですかってきいたら、忘れ物って答えたのに、忘れ物を取りに戻った様子もないし。何だったんだろう? お母さんは理由解りますか?
あ、それから、ちびちゃんのエサのことですが、解決しました。
倉庫と厨房のネズミ取りと、『庭園』での狩りを許可されました。あと、消滅しない程度なら、学生が契約している幻獣から力を貰うのはアリだ、って。ただしその場合、ちびちゃんが逆に力を持ってかれることもある、と覚悟しておいた方がいい、とも言われました。
でも、それって、『殺し合い』の練習ってことだよね?
なんか、やだなあ。
でも、ちびちゃんのためには応じたほうがいいのかなあ。
捕食生物、だもんね。
こちらの方はそんな具合です。
落ち着いたらまた連絡します。』




