1-3 「受身」
そしてそれは、いまやあと3時間。お昼休憩が終わって、残るライティングの試験が終われば、もはや青春は走り出す。さすがに零がコテ入れし、屋上での幼馴染3人のランチをセッティングするに至った。
「零君、遅いねぇ」
「う・・・・・・うん・・・」
「もう時間ないし、食べちゃお。私最後に単語確認したいし」
「う・・・・・・うん・・・」
パンを買いに行ったまま帰ってこない零に痺れをきらし、歩は自前のサンドイッチを食べ始める。
「食べないの?しょうがないよ、零君遅すぎ」
「あ・・・・・・あの!」
かますんだ、かます、かます、かます、かますぞ。ところでかますってどんな言葉?と全然関係ないことが頭に反芻しながらも、立也は踏み出した。
「ど、どしたの?」
「あの・・・・・・えっと!きょ、今日テストの後、なん、で、す、が」
ひょっとして初めて見るかもしれない、意気込んだ立也に歩はたじろぎ、じっと立也を見ているしか出来ない。
「え、あ・・・その、僕と、あの、その、え、えええ、えい」
「も、もちろん!あったり前じゃん」
「・・・・・・えっ?」
まだ何も言っても、かましてもいない気がするのだけど、と困惑する立也に歩は続ける。
「だから、テスト終わったら遊ぼって話、高校初めてのフリーダムですよぉ!幼馴染3人で盛り上がるなんて、当たり前でしょ、っていうコト・・・・でしょ?」
「・・・え、ああ・・・・・・いや、あの」
「茜ちゃんたちのお誘いを蹴ってまでなんだから、ありがたく思うこと!以上」
「・・・・・・う・・・・・・あ・・・・・・」
一緒に過ごせるならまだましかも、誘ってそれならやっぱり佐藤さん達と遊ぶってなったら嫌だし・・・・・・
「そ、それで結局言い出せず?」
「・・・・・・は、はい・・・・・・」
本当に珍しいことにうなだれてしまった零にひたすら言い訳をする立也。
「あ、あの、でも、その、今回は行動したことに、あの、チケットを買った、ってところに意義があったってことで、その、売り場の人に話しかけられたってことが既に僕からすれば大進歩だし」
「・・・・・・立也。本当にそれでいいのか?」
「・・・・・・しかたないよ・・・そういう性格だし・・・頑張ったよ・・・」
性格のことなど、「どうせ」風のことを言い出した立也の意固地さを知っている零にはもうどうにもできなかった。大地立也の冒険は終わった。