表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

1-2 「幼馴染」

「行ってきます」

「おう!今日も元気にかましてらっしゃい!」


父のよくわからない挨拶も、実のところ今日だけは的を射ている。立也は、うん、かまそう、とあまり自分では使ったことのない動詞を心で呟き、家を出た。学校へダイレクトに向かうのではなく、少し寄り道する。


「おっは~よ!」

「わわっ・・・・・・」


背中に一発パンッとやられ、立也はビクッとする。どうしてもいつも以上にびくっとしてしまう。


「もう・・・・・・歩ちゃん、やめてよ。びっくりするよ」

「なに、今日はやたらリアクション大きいね?なにかあるの?」

「いや・・・・・・べ、別に」


背中を張られた反応だけで、自分の胸中を測り取る幼馴染・木森歩の洞察力に一瞬冷や汗をかきながら、立也ははぐらかす。


「ふぅ~~ん、ま、いっけどね。おはよ」

「おはよう」


2人して集合場所へ行くと、もう一人の幼馴染・水瀬零が待っていた。


「おはよう」

「おっは~」

「おはよう」


じゃあ、行こうか、とかいう次の行動を促す言葉などなしに、3人は駅に向かう。


「ねぇ、零君。今日のタツおかしいと思わない?」

「・・・・・・・いや?」

「なぁんか、そわそわしてない?」

「・・・・・・さぁ」


普段は自然体で十分表情が硬い零だったが、今日ばかりは強いて表情を動かないように努力した。


「ふぅん。じゃ、気のせいかな?あ、私定期切れっちゃってたんだ。ごめん切符買う」


歩が券売機の方へ行ったのを見計らって、零は立也ににじり寄る。


「映画、まだ誘ってないのか」

「・・・・・・うん」

「折角集合前に会ったのに?」

「・・・・・・なんか、ちょっとそういう感じじゃなくて」

「そこは立也が自分でそういう感じにしないとダメなんじゃないか」

「・・・・・・う・・・・・・うん・・・・・・そう、だよね」

「ともかく、早く言っておかないと、他に予定入れちゃうだろう?」

「・・・・・・うん、ガンバル」


励ましておいてなんだが、なんて『ガンバル』という動詞の似合わない人なんだろう。とは口に出さないものの、そんな心配が、滅多に動かない表情に出た零に、立也は「ガ、ガンバル・・・・・・・よ・・・」。零の心配は濃くなる。

今日は、幼馴染3人が通う高校の期末試験最終日である。これが終われば、高校生は夏休みまで開店休業みたなものだ。試験の結果と通知表が補習を命じなければ、まる2ヶ月は青春スイッチ全開が許される。

大地立也は、これを機にずっと、それこそ小学生の頃から気になってる女の子、木森歩嬢と一歩進んだお付き合いをと考えた。幼馴染の零に相談し、一念発起して映画のチケットを買ったものの、購入して二週間、とうとう青春スイッチ発動まで残すところ約7時間というところまで来てしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ