終幕 「しまらない少年・大地立也」
「タツ!・・・・はぁ、よかった・・・」
「大丈夫か?」
立也は自分の寝室にいた。守と歩が心配そうに覗き込んでいる。少しはなれたところには基もいた。「大丈夫だよ」と答えると、守は晩飯持ってくる、もうすぐできるから、と部屋を出て行った。えっ、と怯えた表情の立也に歩が「大丈夫、ほとんど私が作ったから」と安心をくれる。
歩と守の合作・肉じゃがはよかった。かなりおいしい。アスパラが入っていたのがよかった。今度からウチの肉じゃがもアスパラ入りにしよう。
食べ終わって歩を送る道すがら、かいつまんで状況を話す。当分の間、立也が自分の体を十分守れて、余計な心配をかけないという自信がもてるまでは、守には何もかも秘密にすることにした。いろいろ教えてくれた人がいて、その人が歩を助けてくれたんだ、と話すと、
「立也がお世話になります!こいつ、ひっこみじあんで優柔不断だけど、あの、いい奴ですから!あの・・・その・・・」
と明後日の方向に100°のお辞儀してしどろもどろ。吹き出して笑ったら、ほっぺたをぐりぐりされた。
しかし、立也にわかっていることなどほとんどない。異形関係のことはあっという間に話し終わって、映画の顛末に話題が移る。歩は「なっさけない奴だな~」と本気であきれるのと、からかうのと、ちょっとうれしいのと、それを照れ隠すのといろいろ忙しそうだった。
「ともかく、はい、これ」
「ん・・・」
チケットを渡すと、「ここまででいいから」と歩は駆けて行ってしまった。「危ないから」も、「あんな目に遭ったことだし」も、全部「タツに言われたくない」で一蹴され、立也はやれやれと踵を返す。実のところ立也にチケットをもらったのが嬉くて、走り出したいくらいウキウキしているのをばれないようにするための強がりだったのだが、実際その真意はあまり伝わっていないので成功している。
「いいのかい?」
「・・・あなたの息子さんに、真君に会いました。」
基が語って、立也が驚く、というばっかりで、その逆はこれが初めてのことだった。少し溜飲が下がる気持ちで、「顔はあんまり似てないですね」とからかう。苦笑する基に立也は問う。
「これから、どうするんですか」
「まず干渉術の基本を学んでもらう。あの家には私が結界をかけているから、しばらくは安全だ。」
「干渉術ってなんなんですか」
「それは」と言いかけた基を遮って歩の声が響く。
「タ~~~~ツ~~~~~!!!!はぁはぁ・・・・」
「ど、どしたの・・・・?」
「切れてる。」
「えっ?」
「チケット!期限切れてる!!」
「えっ」と自分のチケットを確かめてみると、確かに。期限は1週間前に切れている。ってことはあの日渡しても・・・
呆気にとられた立也と、非難顔の歩の目が合う。
数秒。
夕方と同じようにどちらとなく吹出す。
互いに穏やかに笑いあう。
2人のいつも通りの笑顔はひとしきり続いた。
なんだかずっとほったらかしで・・・・・・
実は最後までプロットは作ったのですが、それを字に起すうちにいろいろ忙しくなり・・・・・・掲載した内容を第一巻として、第三巻までは書いたのところ、全七巻位の予定だったのですが、興味が離れました。だめですね。根気なくて。
とりあえずいつまで未完だと鬱陶しいのでキリのいい所までアップしました。