5-5 「邂逅」
「おい、起きろ。立也、大地立也」
声が聞こえる。目を覚ますと、そこには立也より2つ3つ年下らしい少年が立っていた。「早く起きろ」というその声は、さっきまで心の奥で聞こえてきた声と思われた。中からでなく外から聞こえる分違和感があった。起き上がって、並ぶと、やはり小さい。自分も中学に入る前はこれくらいの大きさだった気もする。
「は、はじめまして。大地立也です」
「・・・・・・あんたの体には俺の魂が入っている。」
「じゃ、君が『たまのみ』の?」
「まあ・・・・・・おいおい、そんなもの珍しそうにするなよ。今やあんたも『たまかけ』だし、どっかであんたの魂も『たまのみ』なんだからな。」
なんだか随分つっけんどんな子だが、少し理屈っぽい言い方に覚えがある。
「それで、今どういう状況なの?」
「俺の超干渉で化け物をぶっ飛ばした」
「超干渉?」
「・・・・・・あ~・・・干渉術の凄い版だ」
「干渉術」
「・・・・・・あぁ、それと。化け物は撃退したが、あんたがうまく着地しないもんだから、体はぐちゃぐちゃゾンビ状態だぜ?」
「えっ!ちょ!そんな!こ、困るよ!」
映画館には入れまい。
「えっ!こ、困るよ!だって・・・・・あっはは」
「へ・・・?」
「ウソだよ。あんたの着地がまずかったのは確かだけどな。あれくらいの高さなら大丈夫だ」
あの高さから大丈夫って、いよいよ人外みたいだ、となんだか複雑な気分になる。
「まぁ、落ち込んでも仕方ない。次はうまく出来るかもしれないぜ?今回はおかげでこうして話せるわけだしな」
着地がうまく出来なかったことを気にしてると思われ、慰めてくれてるようだ。そのわかりにくさが、なんだか微笑ましい。この、ぶっきらぼうで理屈っぽい感じなのに、どこか微笑ましい雰囲気を知っている気がする。
「マコト・・・・・・くん?」
「うん?ああ・・・・・・あの人が言ってたしな」
「あの人って天津さん?」
「ああ」
「君と天津さんは知り合いなの?」
「・・・・・・父親だよ」
父親。なるほど、天津さんの熱心っぷりは息子が関わっているからなのか。死霊の父親に『たまのみ』の息子。もっといろいろ話が聞きたかったが、それきり黙ってしまったので、会話の取っ掛かりを失った。その内視界がぼやけてきた。
『またな』
やはり、自分の中にいるのは天津真なのだ。視野がぼやけたせいで、むしろそれがはっきりわかったところで視界は完全に真っ白になった。