表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/21

5-3 「告白」

「天津さん!」

「無事だよ。間に合ってよかった。」


歩を降ろしながら、基は敵を観察する。上空で蝙蝠人間が手をたたいている。


「わかったろう。いくら君の身体能力が向上していても、こいつらとやり合うには干渉術が不可欠だ。・・・・・・うん?」


返事がなくて、振り返ると、立也は歩に取りすがって泣いている。その姿に基はいつかの自分を見る。


「タツ、もう大丈夫だから、ね?もう泣かないで?ねっ?私も泣けてきちゃうから、ね?」

「・・・・・・うん・・・・・・うん」


セリフと全然ちがう。2人とも既に駄々泣きだ。基は、思い起こしたかつての自分達との違いに苦いものと温かいものが同時に浮かんで


「よかったな・・・・・・」


なんて吐いてしまう。なんて、なんてセリフが自分から出てきたものだろう。君は、こんな私を見て、なんと言うだろうか。きっと、目をきらきらさせて、「素敵だわ」と言うんだろうな。


「立也君、今は戦闘中だ。立て。」

「・・・・・・天津さん、少し時間を・・・・・・稼いでくれませんか。」

「なにを言っている。私の能力は直接戦闘向きでは・・・・・・」

「お願いします。後で話すべきなのはわかります。でも歩には、先に自分の口で言いたいんです」


「・・・・・・わかった、急いでくれたまえ」と言って基は空へ舞う。それに短く会釈をして立也は、歩の顔をじっと見る。


「歩・・・・・・僕、人間じゃなくなっちゃったみたいなんだ」


歩はじっと聞いている。「その、僕にもよくわからないんだけど・・・・・・」とまごつく姿に微笑も茶化しもいれず、じっと立也の顔を見ている。


「僕は、魂・・・・・・っていうか、あのそのなんか・・・・・・僕の大事なものを取り戻さないといけないんだ。そうでないと、ずっと酷い目にさらされることになる。周りの人も一緒に・・・」


歩は頷く。これには自然と実感がこもる。


「だから・・・・・・あの、できるだけ早く解決して、きっと、絶対戻るから。だから心配しないで待っててほしい。大丈夫僕って結構強いんだって。天津さんにちゃんと教われば、よほどのことがない限り大丈夫だって。だから、どうか歩は安全な場所で待」


パンッ


「待っててね」と決めようと思ったところ、横っ面を思いっきりひっぱたかれた。


「バッカじゃないの?なにカッコつけてんの?全然カッコよくないから!」


歩が本気で怒っているときの目だった。


「私がいっつも先行って、タツが待ってって付いてきて・・・・・・・そういうとき、いっつも私待ってたよね?追いつくまで待って、一緒に行ったよね?それが、なに?ちょっと自分が先行ったからって、わ、を・・・・う」


歩は言葉に詰まって、立也に抱きつく。立也は昔よく逆のことがあったかもって思いながら、歩の背中をぽんぽんっとやる。


「置いてかないで・・・・・・待ってよ・・・・・・私も一緒に、行くよ・・・・・・」


意外な反応かと思ったけれど、こうしてみるとこれこそ歩らしいなって思った。


「ごめん。あの・・・・・・でも・・・・・・危ないことになると・・・・・・」

「うるさいっ!強いんでしょ!守んなさい!」


目を合わせて数秒無言。


立也が「ふふっ」って噴出したのを境に、零の音痴をはやすみたいに、守の料理の出来に辟易するときみたいに、いつもみたいに、2人は笑いあった。


「『守んなさい!』って・・・・・・」

「あはは、私も言ってから、ないわーって思った」


ひとしきり笑って、改めて視線を合わせる。


「守る」


意を決して立也は言う。危険なのは事実だ。さっきも失いかけた。でもそれでもやっぱり、むしろだからこそ、自分の側にいてほしい。僕はこの人が好きだ。


「・・・よろしい!」


少し怖いけど、でもこれ以上タツに遠くへ言ってほしくない。変わっていくなら構わない。でもそれは自分の目の届くところで起こってほしい。私はタツが好きだ。


ようやく立ち上がって、立也は決意を固める。上空では基がひどい目にあっている。早く行かないと。


「行ってくる」

「・・・随分、なんか男らしくなっちゃって・・・私のことも呼び捨てだし」

「えっ!あっ!いや、そのあのあれは勢いって言うか、そのごめ」

「別にいいよ!高校生にもなって”ちゃん”付けってどうだろなーって思ってたし」


照れ隠しだとバレなかっただろうか。ちらっと覗き見ると、私の幼馴染は板につき始めた強い視線を私に送る。


「歩、今度、僕と映画に行かない?」

「映画?」

「うん。こないだ見たやつなんだけど」

「うん・・・・いいよ。そんなに気に入ったの?」


立也は「う~ん、まぁそんな感じ」とか言いながら頭をかく。


「帰ったら話すよ。行ってきます」


「いってらっしゃい」も聞かず、立也は駆け出した。でも大丈夫、聞きたければいつでも聞けるんだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ