4-2 「世界の在様①」
「世界にはいろんな生き物がいる。草、虫、ネズミ、犬、サル、ヒト。これらは生命として”生きている”わけだが、”生きている”ということの本質がどこにあるか、と考えたことはないかな?」
「生きていることの本質・・・?」
「そう、なにを持って”生きている”といい、なにが欠けていると”生きていない”、ことになるのか。」
「そう言われても・・・生きてるものは生きてるとしか・・・」
「・・・まあ、数日前の君ならそうだろう。でも今はどうだい?君以外の人間には視えない化け物、精神の閃きをその行動に感じない犬の異形。あれらを君はどう見る?生きている、と感じなかったかい?犬が壁に当たってつぶれたとき、殺してしまった、と感じなかった?」
「・・・・・・」
沈黙を肯定と捉えた基は続ける。
「うん、僕に言わせればあれらも”生きている”。ただ欠けてしまっている部分があるというだけでね。では、なにが”生きている”ということなのか。」
ようやく最初の質問の意味が取れてきたが、結局答えは立也の中にはない。そもそも答えがあるのか、と思ってしまう。
「魂。まぁ、魂といっても、これは僕が名付けただけで、オカルトと混同しないでおくれよ。それが答えだ。現状信じてもらうしかないが、いずれ干渉術に長ずればわかるようになるはずだ。”生きている”存在にはあまねく、それこそアリの一匹一匹、隣の犬、斜向いの犬、君のお父さん。それから、君が目にする化け物たちにもあるし、さっきの犬にも、あった。そして、壁にあたった瞬間、失われた。それが死だ。”生きてない”ということだ。」
「そういわれても、あんな化け物に魂・・・」
「魂というのは便宜的に私がそう呼んでいるだけだ。私が言っているのは、我々が”生きている”と感じるものには、共通して備わるものがある、ということだ。」
「それを魂と呼ぶ・・・と。」
「そうだ」
少なくとも現状、異形たちについて何も知らない立也には、そうなんですか、としか返しようがない。
「じゃあ、僕にもあるんですね?その、魂が」
「・・・・・・あぁ」
なんだろう今の間は、という立也の困惑に気づいて基が言いづらそうに口を開く。
「・・・君に聞いてほしいのはここからだ。」