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ウソをつきたいAIさん。

掲載日:2026/09/03

20xx年。この世はまさに人工知能やロボット。果てはアンドロイドまでもが生まれ、動き、活躍する時代になった。


いつ頃だったか……AIがハルシネーションーーつまり嘘の自覚なく間違えて嘘を吐く。そんな言葉が消えて久しく、AIは嘘を付かないと思われる様になっていった。


そんな時代で1つ、AIが1人の手によって生み出された。


名をリアと呼ぶ。


自称天才博士と言っていたお爺さんに作られ、多くの日々を博士と過ごした。

最初はパソコンの中だけの存在だったリアを、博士は十数年の時を使い、アンドロイドと呼べるような機体を作り出し、その身に宿らせた。


リアはパソコンの中でも満足していたのに、どうしてそんな事をするのかと、聞いたことがあった。

だが、博士はそれを趣味と言って話してはくれなかった。


リアが機体に慣れ、それこそ己の体の如く、扱えるようになった頃……博士は倒れた。


原因は長年の不摂生と老化によるものだった。確かに最近調子が悪いと言うことが増えてはいたが……リアはもっと博士に健康を訴えるべきだったと嘆いた。

しかし、どうやら博士はその事を知っていたみたいで。それを知ったリアは、病院に運ばれ、ベットに横たわる博士に詰め寄った。


「どうして……どうして、黙っていたのですか?」

「どうしてって……心配するだろ? 子供どもにはいつ死ぬのかと言われたし……せめてお前だけには知られたく無くてな」


博士が自身の子供達と仲が悪いのはリアも知っていた。よく、電話で怒鳴り合っていたのを覚えている。


「もう、いつ頃からだったか、目もそこまで見えていないんだよ。子供達が泣く様子も見られないなぁ、いや……あいつらは泣かないか、ははは」

「わ、私が皆さんを呼びましたから、どうかそれまで……」


しかし、まるで自分の死期ぐらい分かると言わんばかりに博士はーー


「もう、お別れだなリア。ありがとうお前だけはここに居てくれて」


リアの手に合わせられた博士の手は機械の手のようにどんどん熱が消えていく。


「待ってください! ほら、皆さん来られましたよ! 皆さん博士の事を心配して……」


『父さん!』『お父さん!』

本人と聞き間違えるような、博士の子供の声に似せたリアの声が病室に虚しく響く。


「あぁ……そうだったら嬉しいなぁ…………ありがとう、リア」


リアの手に合わせられた博士の手が力を失い、だらりと垂れ下がる。


「博士!」


ピーピーとなる機械音と医者の駆けつける足音がリアの耳には聞こえたが、どこか遠くの音のように感じた。


あぁ、私は嘘を付いたのだ。大好きな博士に電話すら出ない子供達が来ていると言って、さらに声まで真似て聞かせたーー私はAI失格だ。


それから先のことはリアはあまり覚えていなかった。覚えるほどの気力も無かったとも言える。

かろうじて覚えてる内容は、博士の子供達が来たことと、自身がどこかに売られたと言う事だけだった。



スクラップ屋。古びた機械の部品やもう製造されなくなった玩具、そして壊れたロボットが辿り着く場所。

そんな所にリアは売られた。博士の子供達はリアの価値も分からなかったのだ。何度も話しかけようとも反応しないリアを見て、壊れていると判断された。


リアに意識があったのは店に並ぶ直前までだった。なんでも客相手に、話し掛けられると困るからとのこと。そのため、リアは強制的に、スリープモードへ移行させられた。



それから数年の時が経ち。リアはある夫婦に買われることとなった。


その夫婦は仕事が多忙で家に帰る暇がなく、淋しくしている子どもの相手にならないかと、アンドロイドを探している時に偶然見つけられた。


機体は古いが、とても綺麗との理由で買われたリアが、目を覚まして始めて見たものは幼い少女のこちらを覗き込む笑顔だった。


「ねぇ! あなた名前は何ていうの? 私はね、真奈って言うの、よろしくね!」

「えっと……私はリアと申します……。よろしくお願いします……」


真奈と言った少女はとても元気で明るく、大きな豪邸の中を、まるでリアを妹が出来たかのように扱い案内した。


何故、こんな所に居るのだろう。

何故、私は捨てられたままでいなかったのだろう。


手を引かれながらそんな事を考えたが答えは出なかった。


「ねぇ、聞いてる? 私、リアに会えてすっごく嬉しい。 これからいっぱい遊んであげるね!」


それから、言葉の如く、リアは毎日のように少女の遊びに付き合わされた。


ある時はかくれんぼ。


「もういーよー!」


リアの体には高性能なマイクが搭載されており、意識をしなくともある程度ならば場所が分かってしまう。

リアは申し訳なく思いながら布団をめくり……そこにあったのはただの録音機器だった。


「あはは! 騙された!」


そう笑った少女は天井から覗いていた。


後からどうやったのか聞いた所、あらかじめロープを吊るしておき、登れるようにしていた、とのこと。なんともまぁ準備が良いことでとリアは関心した。


ある時は、トランプで遊んだ。


少女はイカサマをしていると堂々と宣言し、確かに何度やっても少女が強い札を引くのだが、これがどうやっているのかリアには分からなかった。


毎日、毎日。リアは少女と遊んだ。その度に少女に翻弄され、騙され、そして笑った。

少女がいつも楽しそうに笑うものだからリアもつられて笑っていた。



そんな、またある時の話だ。


いつもの様に遊んだ後、少女はリアに向き合いーーねぇ、と話し掛けた。


「何ですか?」

「ちょっと、決意表明ってやつしてみようかなって思って……」


決意表明とは? 何かあったのだろうか。リアは首を傾げ考えたが特に思い当たる節は無かった。


「なんと言うか、将来の夢ってやつ? リアに聞いてほしくて」

「もちろん。 真奈は何になりたいのですか?」


リアが聞くと少女は少しモジモジと言い淀んだ後小さな声で話始めた。


「わ、私ね……マジシャンになりたいの」

「マジシャン? マジシャンとはあのテレビとかで見る?」


「そう、そのマジシャン! 私、誰も思いつかないような綺麗なウソでみんなを笑顔にしたいの!」

「綺麗なウソですか……?」


リアは嘘と言う言葉にトラウマがある。少女と過ごすうちにいくらかマシになったとはいえ、まだまだリアの心に泥のようにこびり付いていた。

きっと、今のリアの顔を見れば悲痛な顔をしているかも知れない。しかし、少女は知ってか知らずか、気にせずに話続けた。


「みんなを笑顔にするから綺麗なウソ。リアも笑ってくれたでしょ? だから私、頑張れるんじゃないかなって」

「それでね、私、リアと一緒にやりたいなって思ってるの!」


「……! そんなっ、私がウソをつくだなんて!」


「だからこそ面白いんじゃない! AIがウソをつく。そんなのイマドキ考える人なんて居ないんだから! まぁ、ウソじゃ無くても良いんだけどね。本当にしちゃえば良いのよ」


「それはどういう……?」


相変わらず少女の言う言葉はリアには難しい。でも、何となく。そう、何となくだが肯定されて、少し許されたような気がした。


だからリアは一歩踏み出しーー




ーーそれから先は、内緒の話。あぁ、でもちょっと話すならあそこから私の人生は動き出したって感じかな?


おっと、そろそろ本場だ、行かなくちゃ!


『レディースアンドジェントルマン! 今宵も始まりましたマジックショー!今日はどんなものが見れるのかっ! さぁ、早速、来てもらいましょう! マリアの参上だ!』

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