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ドレス作りに夢中なので婚約破棄してください!  作者: 和泉


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第37話 卒業パーティ(3)

「それでは成績優秀者に卒業証書の授与を行います」

 扉が開き、司会者の声が聞こえてくる。

 一番のルーカスから名前を呼ばれ、もらってくるねとルーカスはソフィアの手をゆっくりと離した。


 黒いタキシードが良く似合い、背も高くイケメン。そして成績優秀。

 ルーカスの左胸に光り輝くラペルピンは王子の側近から正式に王子補佐になった証だ。

 三男でなかったら申し分ない男性なのにと、女生徒たちはルーカスを見つめた。


「また一番だって」

 オリビアはニコラスの腕に捕まりながら、ルーカスをうっとりと目で追い続けた。


 レオナルドはさすが王子だという気品。ルーカスとは対照的な白の正装がよく似合っている。大臣たちは成長したレオナルドを暖かい目で見守った。


 公爵子息が二名、そして平民ながら成績優秀になった者、侯爵子息ながら六番になった彼。

 今年は家柄以上に努力をした者が多い。


「七番。ソフィア・ブライト」

「はい」

 ソフィアの名前が呼ばれると、会場は一気にざわついた。


「女の子か」

 何年かぶりの成績優秀な女性に大臣も驚く。しかも見目麗しく、所作も美しい女性。

 保護者たちも同級生たちもソフィアの登場に驚き、よそ見していた人たちも舞台に注目した。


「よくがんばりましたね」

「ありがとうございます、学園長先生。大変お世話になりました」

 本当に感謝していますとソフィアが伝えると、学園長は微笑んでくれた。


「ソフィアよ! ソフィアが来たわ!」

 エイミーのうれしそうな声にソフィアが気づく。ソフィアは指定された場所に立つと、エイミーとアリーナに微笑んだ。

 その天使のような微笑みに悩殺される男子たち。


「……ソフィア……?」

 地味でも眼鏡でもない美しすぎるソフィアの姿にニコラスは目を見開いた。


 子供の頃のソフィアだ。

 可愛くて、ふわっと笑うところは変わっていない。

 いつからソフィアと会話していなかっただろうか。


 最後にソフィアの顔をしっかり見たのはいつだっただろうか。

 初等科一年? 十年前? ソフィアと話さなくなった理由は?


「ニコラス?」

 ソフィアを見つめたまま動かないニコラスの腕をオリビアが引っ張る。


「ずっと学園に来なかったくせに着飾ってパーティだけ来るなんて」

 大きな胸をグイグイ押し付けながらオリビアがニコラスに小声で話すと、トゲのある言い方にニコラスは違和感を覚えた。


 卒業パーティは親に感謝するために出席するイベント。

 パーティだけ来るなんて……?

 その言い方では、何で来ているの? という意味に聞こえてしまった。


 十人が卒業証書を受け取り、礼をすると会場は大きな拍手に包まれる。

 ソフィアの完璧な淑女の礼に、保護者たちから感嘆の声が漏れた。


「みんな楽しんできて」

 警備の都合上、フロアへは降りられないレオナルドは手をひらひらと振り控室へ向かっていく。

 階段の下で待っている両親に卒業証書を手渡し、感謝を述べるまでが成績優秀者の務め。

 ルーカスは当然のようにソフィアに手を差し伸べた。


 美男美女、共に美しい所作の二人。

 タキシードとドレスはペアっぽく見える。

 そして二人の両親も一緒に待っており、まるで婚約者かのような振る舞い。


 同級生たちは驚いた。

 自分たちが知っているのは『ニコラスとソフィアは婚約を破棄した』だ。

 傷物令嬢になったソフィアは学園に来られなくなった。

 親戚の領地でひっそりと暮らしている。

 そうウワサで聞いていたのに。


「無事に卒業することができました。ありがとうございます」

 ソフィアが父ブライト侯爵に卒業証書を手渡すと、涙をこらえながら父は受け取ってくれた。

 母もハンカチで涙を押さえる。


「レオナルド様の補佐になることが決まりました」

 ルーカスが父ウィスロー公爵に卒業証書を手渡すと、ルーカスの母は胸元のラペルピンを嬉しそうに見つめた。


 三男だから補佐にはなれない。

 そう言われ続けてきたルーカスが補佐の座をつかみ取った。

 三男だから結婚はできない。

 そう思っていたのに、こんなに可愛い婚約者まで。


「がんばったわね、ルーカス。おめでとう」

「ありがとうございます」

 滅多に褒めない母に褒められたルーカスは嬉しそうに微笑んだ。

 卒業パーティはこのままダンス、食事、歓談と自由に過ごす時間となる。


「一曲踊っていただけますか?」

「はい、ルカ様。喜んで」

 二人はお互いの両親に礼をすると仲良くダンスフロアへと向かった。 


 見つめ合いながら踊る姿にオリビアの奥歯がギリッと鳴る。

 ニコラスは美しくなったソフィアを複雑そうな顔で見つめた。


「ニコラス! 私達も踊ろう!」

「えっ?」

 グイグイ引っ張るオリビアにニコラスは驚いた。


 ダンスの曲の途中から入るなどあり得ない。次の曲まで待つのが常識なのに。

 早く! 早く! と引っ張られダンスフロアへ。

 踊りながら明らかにルーカスとソフィアの方へ近づいていくオリビアにニコラスは戸惑った。


「おい、オリビア。なんでそっちに」

「ダンスが終わった瞬間にルーカス様が私に気づくように。ニコラスもソフィアと踊りたいでしょ?」

 どうして?

 驚いたニコラスの足が思わず止まる。オリビアの言っていることの意味が分からない。

 オリビアは立ち止まったニコラスの顔を見ることなく、ルーカスを目で追い続けた。


「あ! 曲が終わった!」

 急がなきゃとオリビアはニコラスをその場に置き去りにし、一人でルーカスとソフィアの元へ走る。


「ルーカス様! 次は私と!」

 ソフィアをエスコートしていない方の腕に抱きつくと、オリビアは大きな胸をぐいぐいルーカスに押し付けた。

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