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ドレス作りに夢中なので婚約破棄してください!  作者: 和泉


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第36話 卒業パーティ(2)

 ここは普段来ることができない王宮所有の会場。

 高い天井、豪華なシャンデリア。

 オーケストラの生演奏。

 すべてが煌びやかな空間にオリビアは目を輝かせた。


「すごいね。ここ」

 本当は国で一番のドレス店チャーチル・ジョンソン・オートクチュールのドレスを着て参加したかった。


 あの店のドレスはどれも繊細で素敵だったのに、父にはそんなお金の余裕はないと断られた。

 卒業パーティなのに新しいドレスすら買ってもらえなかったのだ。


 もちろんニコラスの家も婚約者ではないので買ってくれなかった。

 やっぱりニコラスより三男でも王子の側近の方がいいかも。

 公爵家だし、ドレスくらい買ってくれるはずだ。

 今日、王子の側近とダンスを踊って、気分が悪いと介抱してもらって、口づけの一つでもすればその気になるだろうか。


「ニコラス、前の方に行こう!」

 王子は会場の前の方にいるはず。だから側近も前の方だよね!

 オリビアはニコラスに微笑みながら王子の側近ルーカスを探した。



 迎えに来たルーカスのタキシードと、ソフィアのドレス姿を見たレオナルドは驚いた。


「ルーカスは幸せ者だなぁ」

 こじらせ男だったはずなのにとレオナルドが揶揄ってもルーカスは嬉しそうに笑うだけだった。


「あら、ソフィア。素敵ね、そのマーメイド」

 色もいいわと言う王妃にソフィアは淑女の礼をした。


 完璧なお手本のような礼。

 美しい金髪、宝石のような青眼、優しい顔。

 自分で作ったとはいえ、国で一番のドレス店チャーチル・ジョンソン・オートクチュール監修のオリジナルドレス。

 侯爵令嬢というよりはどこかの国の姫だと言ってもいいくらいのソフィアと、彼女を守るかのようなブラックナイトに王妃は微笑んだ。


「お似合いね、貴方たち」

 幸せそうだわと言うと、王妃は侍女に合図した。


 運ばれて来たトレーの上にはラペルピン。

 王妃は手に取るとルーカスのタキシードの襟にラペルピンをつけた。


「卒業おめでとう、ルーカス。レオナルドのことを頼みますよ」

 王家に仕える者の証、王家の紋章がアレンジされたチェーンタイプのラペルピンをつけてもらったルーカスは目を見開いた。


 正式に第二王子レオナルドの側近として認められたのだ。

 三男の自分が選ばれるのはかなり異例のこと。きっと大臣たちの反対も多かっただろう。


「ありがとうございます。生涯お仕え致します」

「重い、重い、ルーカス」

 真面目な顔で礼をするルーカスをレオナルドが笑った。


「ソフィアにはこれを」

「こ、こんなキレイな扇子を?」

 透かし彫りされた繊細な扇子の要の部分にはアレンジされた王家の紋章が入っている。

 王家からの下賜だとわかるように。

 紋章がアレンジされているのは盗品だと思われないためだとルーカスは教えてくれた。


「またドレスを注文する時には必ず来てね。店長だけではイヤよ」

「はい。ありがとうございます」

 レオナルドは卒業証書を受け取ったらすぐに退室するので、あとは二人で楽しめばいいと言ってくれた。


「ルーカス、最後くらい一番を王子に譲ろうと思わないのか?」

「お守りするには殿下より優秀でないとダメでしょう」

 真剣勝負ですと答えるルーカスをソフィアはくすくすと笑った。


「ソフィア嬢は結果を見た? 七番おめでとう」

「私が七番!」

 一番はルーカス、二番はレオナルドだ。


 十番までの生徒は成績優秀者として紹介され、学園長から卒業証書を受け取り、残りの生徒は帰りに名前を言うと自分の卒業証書を渡してくれることになっている。


 卒業パーティには親だけでなく大臣も多く参加するため、学園長から卒業証書をもらうというのは最大のアピールポイント。将来の出世に関わってくるのだ。

 十番までに女性が入ることはかなり珍しいので注目を浴びるだろうとレオナルドは笑った。


「ご両親は嬉しいだろうね」

 行くのをやめようかと怖気付いたソフィアを引き止めるかのような言葉に、王子は心が読めるのかなとソフィアは首を傾げた。



 卒業証書を受け取るため、控室に三人で向かう。


「えっ? 君、ソフィアかい?」

「うわぁ、やっぱり美人じゃないか」

 子供の頃から将来絶対美人になると思ったと成績四番のロッソが言うと、成績三番のショーンも頷いた。


「学園に来ないから心配していたよ」

 五番のエイベルは初等科の時に一緒のクラスになったことがある平民だ。

 エイベルは医者になりたいと言っていたが、卒業後は王立病院で研修医となることが決まったと教えてくれた。


「エイベル、すごいね」

 平民が医者になるのは難しい。

 余程優秀でない限りチャンスは与えられないのだが、優秀なエイベルを応援してくれる貴族が現れ、仕事をせず勉強に打ち込める環境を作ってくれたそうだ。


 成績十番以内の生徒たちはそれぞれ自分の夢のために努力してきた者たち。お互いの成果を喜び合う良い人たちだった。


「ねぇ、どう見てもペアだよね?」

「あれ? でもソフィアってニコラ……いてっ」

 空気を読めとばかりに、ロッソの足をショーンが踏む。

 ソフィアが気まずそうに微笑むとルーカスがソフィアの手を握った。


「入学説明会からずっと片想いで、やっと手に入れたんだ」

 ソフィアの手を持ち上げ、口づけを落とす。


「マジか! おめでとう!」

 片想いが長すぎるだろうと笑う六番のダリウスに、みんなが「確かに!」と笑った。

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