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ドレス作りに夢中なので婚約破棄してください!  作者: 和泉


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第32話 仕返し(3)

 だが翌週も、翌々週もルーカスは来なかった。

 キャシーからもらう手紙とお店の新作のエクレアを見たソフィアは目を伏せた。


「……ソフィア、手紙には何て?」

「……今週も行けなくてすみません……って」

 ルーカスもニコラスのように急に態度が変わってしまった。


 もう会いに来ないかもしれない。

 ソフィアの視界が涙でぼやける。

 慌てて隣のユーリが肩を抱くと、ソフィアは声を我慢しながらユーリにしがみついた。


「キャシー、何か知らない? 来られない理由。何か言っていなかった?」

 ソフィアの背中をさすりながらユーリが尋ねる。


「……言わないでって書かれていたけど……彼、金髪の女の子に追いかけられているのよ。だからここに来られないって」

 キャシーが目を伏せながら答えると、ソフィアの肩がビクッと揺れた。


 金髪の女の子はきっとオリビア。

 今度はルーカスを取るの?

 ルーカスもオリビアがいいの?

 どうして会いに来てくれないの?

 どうして手紙に理由を書いてくれないの?

 ユーリはソフィアをギュッと抱きしめた。


 二月に婚約したばかり。

 三月は嬉しそうに二人でデザインを相談していた。

 それなのに四月に一度も来ないなんて。


「ソフィアはいるか?」

 ダイニングキッチンへやってきたマティは泣いているソフィアを見て切なそうな顔をした。

 理由を聞くこともなくソフィアを連れて本館へ。


「……店長はワケを知っているってこと?」

「あっ! こんな時間! またね」

 キャシーは急いでシュークリーム屋に帰って行く。

 お針子たちは夕飯を食べたばかりなのに新作のエクレアを頬張った。


「この新作美味しい」

「ホント、来週も食べたい」

 来週もキャシーが来ると言うことはルーカスがここに来ないということ。


「こら!」

 ユーリは溜息をつきながら本館への通路を見つめた。


   ◇


 会いたい。

 もう三週間も会っていない。

 ソフィー、会いたいです。


 公爵邸のリビングで、ルーカスは窓際に立ちながら溜息をついた。

 オリビアに付き纏われ、迷惑だとオリビアの父ホートン伯爵へ訴えたが「娘は自由に過ごさせたい」と言われ取り合ってもらえなかった。


 公爵家から正式な苦情を父に出してもらったが、「うちの娘が後をつけているという証拠がない」と退けられた。

 ルーカスはオリビアの父ホートン伯爵が領地へ帰らざるを得ない状況に陥らせる計画を両親と兄達の協力の元で遂行中だった。


「王妃様のお茶会の効果が出始めたみたいね」

「ありがとうございます、母上」

 いろいろなお茶会でブレンドン産のワインを飲んだと声をかけられるようになったと母はルーカスに報告した。


 ブレンドン領の名産品はワイン。オリビアの父ホートン伯爵の領地の名産品と同じだ。

 ブレンドン侯爵は父の学園時代の友人で、ブレンドン領は一昨年、洪水の被害により財政難だと以前父から聞いたことがあった。

 ルーカスは父に頼みブレンドン侯爵へ顔繋ぎをしてもらい、ブレンドン産のワインを一本母に贈りたいとお願いして最高級品を一本譲ってもらった。


『先日頂いたブレンドン産のワイン、芳醇でとても美味しかったですわ』

 王妃主催のお茶会で母はブレンドン侯爵夫人にお礼を言った。実際にとても美味しいワインだったそうだ。


「計画通り、売れ行きは好調」

「ありがとうございますランス兄様」

 ルーカスは未成年で酒屋に出入りができないため、次男の兄ランスが王都の全ての酒屋を回った。

 ブレンドン産ワインだけ棚に在庫を置かず二、三本だけにする。そうやって品切れしそうに見せかけた。実際には在庫があるので売れたら棚にすぐ数本置くのだが。


 たくさん並んでいるホートン産ワインと、その隣の売り切れそうなブレンドン産ワイン。

 消費者の心理としては売れている方が美味しいのではないかと思い、ついブレンドン産ワインを手に取る。


「量り売りも順調だ」

「ありがとうございますローレンス兄様」

 ワインの量り売りの特許申請してくれたのは長男の兄ローレンス。


 平民はボトルでワインを買うほど生活に余裕がない。

 でも少しでいいので特別な日にワインが飲めたら嬉しい。

 ルーカスはブレンドン侯爵にワインの量り売りを提案した。


 王都の数店舗だけだが、ブレンドン産ワインの量り売りを始めた。

 平民は自分の家から入れ物を持ってくれば、ワインだけ百ミリリットル単位で購入できる。

 入れ物を購入する事も可能だ。

 少しおしゃれな入れ物を特別な日の記念に購入する。

 平民の間で流行し始めているちょっとした贅沢だ。


 これが話題となり、ブレンドン産ワインは平民にも大人気となった。

 そして売れなくなったホートン産ワイン。

 酒屋はホートン産ワインを仕入れなくなった。


「周辺国への出荷も止まった」

「ありがとうございます、父上」

『最近飲んだブレンドン産ワインが美味しかった』

 父は二週間前、外交中に世間話でそう言った。


 国内で売れないホートン産ワイン。

 国外からも注文停止となったホートン産ワイン。


 ここまで来るのに三週間かかってしまったとルーカスは溜息をついた。


 ソフィー、会いたいです。

 ルーカスは窓から暗い庭の景色を見ながら切なそうな表情を浮かべた。

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