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ドレス作りに夢中なので婚約破棄してください!  作者: 和泉


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第29話 わからない気持ち(6)

「ここは測らないの?」

 ルーカスがクスクス笑いながら首周りをアピールすると、ソフィアは忘れていた! と慌てて測る。

 上着を羽織り、ルーカスは母の横へ。マティの横に採寸した紙を置き、ソフィアも座った。


「ご子息はまだ背が高くなると思いますので、少し大きめで作成します」

「そうね。上の息子は二人とも百八十センチあるの。この子もまだ伸びているし」

 マティはソフィアが採寸した紙に百八十センチとメモ書きする。


「お好きな色はございますか?」

「青が好きですが、あいにく似合わないのでお任せします」

 青はソフィアの目の色だ。だが、黒髪茶眼のルーカスには似合わない。


「……王子殿下は白の正装で参加されますか?」

「おそらくそうだと思います」

 第二王子の服……? 側近だから王子と被らないように?


「また仮縫いが終わったころにもう一度サイズの調整をさせてください」

 マティは一通り確認すると、ウィスロー公爵夫人にお辞儀をした。


「店長、この場をお借りして息子からご相談したいことがありますの。よろしいかしら?」

 ウィスロー公爵夫人に微笑まれたマティはどうぞと答えた。


 ルーカスはゆっくり息を吐くと、マティを見つめた。


「ご相談したいのはソフィアさんのことです」

「……彼女が何か?」

 嫌な予感がしつつも、マティは大人の対応をする。


「先日、彼女に婚約を申し込みました」

 マティは一瞬目を伏せたが、すぐにそれで? と顔を上げた。


「彼女は結婚してもこちらのお店で働きたいと、ドレスクチュリエールになりたいと言っています」

 マティが隣に座るソフィアを確認すると、ソフィアは不安そうな顔でマティを見ていた。


 この表情は何だ? 求婚されたのに他の男と婚約しようとしているから?

 マティはソフィアの気持ちが読めずに眉間にシワを寄せた。

 その表情にソフィアが目を伏せる。


「結婚後も働く許可をいただけないでしょうか?」

「マティさん、私、このお店でドレスクチュリエールになりたいです。だから、働かせてください。お願いします」

 ルーカスとソフィアは二人でマティに頭を下げた。


 一体どういうことだ?

 婚約を申し込んだことと、結婚しても働くことがうまく結びつかない。

 困惑したマティはもう少し情報を引き出そうと、意地悪な質問をすることにした。


「……働けないと言ったら?」

 働かせてくださいと頼むということは、「働けない」が前提なのだろう。

 この質問でなぜそう思ったか引き出せるだろうか?

 ソフィアの身体がビクッと揺れ、ルーカスの茶色の眼も泳ぎ沈黙する部屋。


 全然わからない。

 マティは溜息をついた。


 マティは隣に座るソフィアの方を見たが、俯いたソフィアとは目が合わない。

 ルーカスを見ると思い詰めたように目を伏せている。

 困ったマティはウィスロー公爵夫人を見たが、ウィスロー公爵夫人は息子を助ける気はなさそうだ。優しい笑顔で微笑んでいる。


 これは一体どういうことだ?

 俺は何を試されているのだろう?


 マティは溜息をつくと、横で俯くソフィアのアゴを持ち上げ、強制的に上を向かせた。


「どういうことかちゃんと説明してくれないか? 話が全くわからない」

 眉間にシワを寄せるマティに、ソフィアは「えっ?」と驚いた顔をした。


「順番に聞こう。まず、求婚された」

 ソフィアが小さく頷くとマティの手ごと、ソフィアの顔が上下に揺れた。


「公爵家からの求婚は侯爵家では断ることができない」

 マティの質問にソフィアはハテナが浮かぶ。肯定も否定もしないソフィア。


「違うのか、えーっと、じゃあ、婚約を受けたい」

 ソフィアは小さく頷き、マティに申し訳なさそうな顔をした。

 この表情は俺にも求婚されたのに他の男と婚約したいことが申し訳ないという顔だろう。


「仕事を辞めろと彼に言われている」

 ソフィアは首を横に振る。


「領地へ行くから通えない」

「辞めなくてはならない事情がある」

 ソフィアは首を横に振る。


 ドレスクチュリエールになりたいとさっきソフィアは言っていた。

 婚約を受けたい。仕事を続けたい。彼は反対していない。


 なぜ俺の許可?

 ダメだ、全然わからないとマティはソフィアのアゴを解放し、額を押さえた。


「……ルーカス、何か誤解があるのではなくて?」

 見かねたウィスロー公爵夫人がしっかりしなさいとルーカスを見る。


「誤解……ですか?」

 ルーカスは先ほどのマティの質問を思い出し、必死で考えた。


「私が求婚したとき、彼女はお針子の先輩が結婚して仕事を辞めるので、自分も辞めなくてはいけないのではないかと言いました。あと……店長も彼女に求婚されたと聞きました。他の男と結婚するのにそのまま働かせてくれるか不安だと」

 ルーカスの説明でようやくマティは話がつながった。


 俺が他の男と結婚したソフィアと会うのが嫌だから「仕事を辞めろ」と言うと思ったのだ。マティは溜息をつくと不安そうにマティを見るソフィアの両頬を引っ張った。


「俺はそんなに心の狭い男か。ドレスクチュリエールとして育てると言っただろう」

 おでこをコツンと当て、まるで小さい子に言い聞かせるようにマティは言う。


「キャシーはシュークリーム屋を手伝いたいから辞めるんだ。辞めさせたわけじゃない」

 引っ張っていた頬を離すと、今度は両手でソフィアの頬を包み込んだ。


「ドレスクチュリエールになるのだろう? 結婚するくらいであきらめるな」

 二十歳の年齢差。本音を言えば嫁にしたいが、もともとダメ元だ。

 ずっと店にいてくれるのならそれでもいい。


「……いていいんですか? お店に」

「当たり前だろう」

 青い眼が潤み、涙が溢れるソフィアをマティは切なそうな顔で見つめた。

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