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ドレス作りに夢中なので婚約破棄してください!  作者: 和泉


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第21話 ハンカチの男の子(6)

 ……ドレスが……喜ぶ?


「最近は流行りでないとダメだとみんなすぐにドレスを買いなおしてしまう。まぁ、そのおかげで商売は成り立っているのだが。本当はずっと大切に着てほしい。どの作品も思い入れがあるからね」

 でも買ってもらえなければドレスも作れないし、なかなか難しいと先代は笑う。


「ソフィア、ドレスのお手入れの仕方はわかる?」

「い、いえ。ドレスは洗ったことがないです」

 マティの母に聞かれたソフィアは首を横に振った。

 侯爵邸ではドレスはいつの間にか洗ってあり、クローゼットにかかっていたからだ。


「着替えたら持っていらっしゃい。洗ってあげるわ」

「あの、大奥様。洗い方を教えてください」

「水も冷たいし大変よ?」

 そんなの貴族の娘がすることではないわと先代夫人が微笑む。


「覚えたいです。ドレスを作るだけではなくて大切にする方法も学びたいです」

 ソフィアがお願いしますと言うと、先代夫人は嬉しそうに目を細めた。


 布によって洗剤を変えた方がいいこと、色の濃い・薄いで使える洗剤が違うこと、こすってはダメなど基本から丁寧に先代夫人は教えてくれた。

 たくさん胸に詰めたガーゼをどうしたらよいか先代夫人に尋ねたら、そんなに詰めたのねと笑われてしまった。

 ガーゼも洗い、きれいに干す。


「ドレスは日が当たってはダメなの。日陰の風通しの良い所にね」

 形も崩れないように丁寧に干す。水分を含んでかなり重たいので無理をしないようにと注意された。


「私はね、ここのお針子だったの。もうアデラしかいないわね」

 最年長アデラに教えたのは自分だと先代夫人は教えてくれた。

 ソフィアが王妃にいただいたドレスを縫ったのは先代夫人で、レースと背中の身頃を歪まずに合わせるのがとても大変だったと当時を懐かしそうに振り返る。


「デザインは描くだけだから実現不可能でも自由に描けるのよ。でもそれを形にするのは大変」

 先代のデザインは好きだけれど、無理難題が多かったと先代夫人はこんなドレスもあったのよと教えてくれた。


「ソフィアがマティのお嫁さんになってくれたら嬉しいのに」

 ドレスが好きだし、真面目だし、可愛いしと先代夫人がソフィアを揶揄う。

 ソフィアは真っ赤な顔でワタワタと慌てた。


 王妃にいただいたドレスはとても参考になった。

 レースで背中を覆った時のイメージがとても湧いたのだ。

 デザインを形にするのが大変だと先代夫人に教わり、自分が落書き程度に描いたデザインと実物を比べ、全然知識が足りていないことを知った。


 閉店後にお店のドレスを見て絵を描き、布を確認し、お針子のお姉様たちに実現可能か聞き、少しずつドレスのイメージを固めていく。

 お針子の仕事も少しずつ任される部分が多くなり、毎日がとても楽しかった。


 毎週金曜日にルーカスと会うこともソフィアの楽しみのひとつだった。

 一時間の勉強を終えると、三十分程度ルーカスは雑談をして帰って行くようになった。

 些細な話題だが、ドレス店から外にでないソフィアにとって、どの話もとても楽しかった。


「そぉふぃ~あぁ~」

「最近、彼は帰るの遅いねぇ~」

「いちゃいちゃはダメよ~。まだ十六歳なんだからぁ」

 お針子の先輩ベス・キャシー・サリーがソフィアを揶揄う。


「お話しているだけですっ」

 真っ赤な顔で手をブンブン振るソフィアをみんなが笑った。


「最近できたシュークリームのお店がとてもおいしいそうですよ」

 これはさっきルーカスから仕入れたばかりの最新情報だ。


「えっ? どこにできたの?」

「大通りを噴水広場の方に曲がってすぐ左だそうです」

 行ったことがないのでソフィアにはわからないが、ルーカスに言われたまま伝えるとキャシーが以前はパン屋だったところだ! と閃いた。


「パン屋がシュークリーム屋になったのね!」

「買いに行こ! ソフィアの分、買ってきてあげるからね!」

「お願いします!」

 翌日買ってきてもらったシュークリームはとても甘くておいしかった。


 こんな大きなシュークリームを手で持ってかじりつくのは初めてだ。

 いつもは一口サイズの小さなシュークリームをフォークで食べていたから。

 今度ルカ様においしかったと言おう。

 ソフィアはうれしそうにシュークリームにかじりつきながら早く会いたいなと金曜日を待ち望んだ。


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