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ドレス作りに夢中なので婚約破棄してください!  作者: 和泉


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第18話 ハンカチの男の子(3)

 頑張らせすぎた。

 もっとセーブしなくてはいけなかった。

 真面目なソフィアが夢中で描くのはわかっていたのに。


「本館へ連れて行く」

 マティは熱でうなされているソフィアを毛布で包み、抱き上げた。


「……ごめ……んなさい」

「早く治せ」

 軽すぎるソフィアを抱き、建物を移動する。

 マティは自分の寝室のベッドにソフィアを寝かせると部屋を暖めた。


 ソフィアの部屋には暖房器具が最低限しかない。

 建物の構造的にもこちらの部屋の方が暖かいはずだ。

 部屋に連れ込んだ言い訳を自分に言いながら母を呼び、看病を頼むとマティは仕事へ戻った。


「ソフィアは大丈夫?」

「先代夫婦に看てもらっているが、まだ熱が下がらない」

 ソフィアを心配したユーリにマティは困った顔で答えた。

 夜中はマティが看病した。

 濡らしたタオルを取り替え、首の汗を拭く。

 つらそうなソフィアを見ながら「早くよくなれ」とマティは呟いた。



 翌朝、知らない部屋のベッドの上で目が覚めたソフィアは驚いた。

 添い寝とまでは言わないが、寝ているマティの顔が近い。

 もしかしてずっと看病してくれたの?


「あぁ、おはようソフィア」

「お、お、おは……よう、ございま……す?」

 マティはソフィアのおでこに手を置き、熱を確認する。


「熱は下がったようだが、今日はここでゆっくり休め」

「あの、ここって……」

「俺の部屋だ」

 男性の部屋に入り、しかもベッドまで占領!


「わ、私、自分の部屋へ戻ります」

「こら、おとなしくしろ」

 周りをよく見ずに慌てて動いたソフィアは、マティの胸におでこをぶつける。


「ふあっ?」

 ひっくり返ったソフィアと、あわてて手をついたマティは、まるでマティがソフィアを押し倒したかのような体勢になり、お互いに慌てた。


「わ、悪い」

「い、いえ」

 マティは飛び跳ねるように急いでソフィアから離れる。


「じゃ、ゆっくり休めよ」

 耳まで真っ赤になったマティが部屋から退室していく姿を眺めた後、ソフィアはドキドキする心臓を押さえながら布団で顔を隠した。


 その日、ゆっくり眠らせてもらったソフィアは夕方にはすっかり体調がよくなり、自分の部屋へと戻った。

 翌日からは店に復活。

 お針子のお姉様たちにも「無理しちゃダメ」と怒られてしまった。


「こら、ソフィア。頑張りすぎだ!」

「そ、そんなこと」

「早く寝ろ」

 熱を出して以降、夜遅くまで勉強しているとマティがやってくるようになった。


 心配かけてしまって申し訳ない気持ちと、見守られているようでホッとしてしまう気持ちが混ざって不思議な感じがする。


「明日は王宮だぞ」

「はぁい。おやすみなさい、マティさん」

 解けない問題を考えているとつい時間を忘れて考え込んでしまう。

 よくない癖だなと肩をすくめながら、ソフィアは明かりを消し、ベッドに入った。



 翌日、納品したドレスを身に着けた王妃様はとても美しかった。

 ウエストはぴったり。袖は少し長めでネックレスをつけてもバランスが良く、色もよくお似合いだ。


「軽くてとてもいいわ。公務ってずっと立っていて肩が凝るの」

 やっぱりチャーチル・ジョンソン・オートクチュールに頼んでよかったと王妃は微笑んだ。


「これ、今日受け取っていいかしら」

「はい。直しは必要ないので、大丈夫です」

 マティが裁縫道具をしまいながら答えると、王妃は侍女に合図を送る。


「着替えてくるわ。ソフィア、あなたもいらっしゃい」

「私も……ですか?」

 首を傾げながら立ち上がり王妃についていったソフィアは、目の前に出された綺麗な薄い黄色のドレスを前に固まった。


「お、お、お、王妃様っ! こんな豪華なドレスはいただけません」

「これね、もう着られないのよ。デザインが若いでしょう? うちは息子しかいないから」

「で、でも」

「あなたに着てほしいのよ」

 侍女に囲まれ、あっという間にドレスに着替えさせられる。


「長さは良さそうね」

「……胸が足りません」

 隙間が空いてしまった胸が悲しい。


「足りないのは詰めればいいのよ」

 優秀な侍女によりガーゼが詰められ、美しい胸に。


「いいじゃない。今日はそれを着て帰ってね」

 テキパキと動く侍女に着てきた服は畳まれ、袋に入れられてしまった。


「あ、あの、本当にいただいて良いのですか?」

 薄い黄色は派手過ぎず、地味すぎず。

 綺麗なレースが背中から腕にかけてついている。

 スカートはダンスが踊りやすいようにだろうか?

 広がりすぎず、でも細くなりすぎない絶妙な膨らみ。

 生地はサラサラで着心地がよく、縫い目も綺麗。


「それ、ジョンソンの先代のドレスよ。着ないともったいないでしょう?」

 チャーチル・ジョンソン・オートクチュールの先代!

 マティのお父さんの作品!

 こんなすごいドレスをいただいていいの? 本当に?


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